2000.8.21
またまた上舎さんから、情報をいただきました。
講談社版の「両棲人間第一号」1957年1月発行(少年少女世界科学冒険全集17)
を入手したのだそうですが、その目次は青い鳥版「イルカに乗った少年」と1ヶ所しか違わないのだそうです。
違いは「被告席にすわった博士」が、講談社版では「天才的なきちがい」となっていることのみ。きちがいが、差別用語だからですかね?
ラストも同じで「アーンドレー! アーンドレー!」だそうです。
2004.5
一時期値下がりしていた、両棲人間の古本相場。出回るのはあかね版か、青い鳥文庫版で、前者が1000~2000円、状態がよければ高値で4000円ぐらいいくか? 500円以上の値がついている青い鳥文庫版はさっぱりはけない、という状態が続いていたのに、なんか最近唐突に値が跳ね上がってしまって、確かに状態のいい初版箱入りあかね書房版だけど、それで20000円はないでしょー! しかもそれ先日イージーシークで500円定価とけっこうお安く売ってて、あっちも毎日チェックしてるんだけど、そのチェックとチェックの間に出品されて売り切れてたあれじゃないの? 箱入り初版。箱はもってないので欲しかったけど、そんなに安いなら欲しかったけど、売れちゃったのはしかたないけど、転売するためだけに買ったわけ? で儲けやがってこのうらやましい。いや、同一人物とは限らないんだし、とオークションを眺めながらのたうちまわり、でもって、あ! ずーっとネット棚に残っていた青い鳥文庫版も突然全部はけちゃってるじゃない! なんで? もしかして両棲人間をばんばん宣伝し、その値上がりの一翼を担ってしまったのって私か? いや映画DVDとかも発売されたんだし、私だけのせいじゃ……。自分で自分の首しめてる?
とかいってたら、はい、講談社版がオークションにお目見えしまして、もちろん一番古いだけあって、私はこの表紙を見るのも初めてです。
で、買っちゃいました。
最初1800円で、競争相手がなく、こりゃこのままいけるかなー? と甘い夢を見ていたのですが、やっぱり終了まぎわになって競争相手が現れて、ちょっと目を離した間に、いきなり十倍に値上がりしました。
競争相手は一人だけだったのですが、欲しい人が二人いれば値上がるのがオークション、一人なら安値のまま。で、相手はちょっとづつ入札を繰り返して18000まで持って、たぶんそれが最初の限界だったのでしょう、一旦止まりまして。
けど困ったことに、私が入れておいたお金も18000円。で、相手が18000入れて、現在価格が18000で止まったということは、相手に私がそれだけしか入れてない、ということがバレた、ということでもあるわけです。
相手の評価をざっと見ると、どうやら古いマンガや本が好きな人。たぶん挿絵の小松崎茂が目当ではないか? という感じ。
小松崎茂も、濃いファンのいる絵師で、警戒していた競争相手です。
警戒してたらどうなるってわけでもないけどさ。安値で落とすというのが甘いってぐらいには、警戒。
講談社は、なんで小松崎茂というすごい人に表紙と口絵を描いてもらっていたのに(挿絵は別の人)、青い鳥版では別の人にしちゃったんでしょう。偕成社版どころじゃなしに、海のトリトンにしか見えないからでしょうか? けど「イルカに乗った少年」なんてタイトル、むしろよけいに海のトリトンじゃありませんか。
それはおいといて。
そして敵は最初18000までは出そうと入札をはじめて、そして目の前で、18000に1円でも、いやこの価格になっていると1円だけ高い入札はできないので、とにかく1単位高く入札すれば、競り勝てる! という状況が転がったわけですね。
……やっぱ再入札してきました。
その間に、しばらく悩んだ様子が、見て取れます。
さて、ちょっとさかのぼってこっちの状況ですが、私にすれば中身は青い鳥文庫版と同じということで、あとは絵と物自体に金を払うという状況で、欲しいは欲しいけど、でもどうしようと悩みつつ、これさえあれば日本で出された両棲人間は手元に揃うわけだし、別に初版が欲しいわけじゃないけれど、初版だろうがどうだろうが、講談社版なんて出回ってるの見るだけでも、いや表紙を見るのもはじめてなわけで、今回を逃したら、次にいつお目にかかれるやら。
相場? こんなに出回らない品の相場なんぞ……。いやもちろんあかねに20000がついた直後ではあるけれど、あかねのシリーズ全体の人気というものがあるわけで、実際偕成社版だって、ほとんど出回らないけれど、それでも同じ程度の古本としてはむしろ安いぐらいで手に入るわけで。
うーん、どうしようどうしよう。
……手に入れそこねたら、ものすごく後悔するだろうなぁ。
5年前のお金がなかったころなら、そもそもこんな金額になる前に、ギブアップするだろうなあ。
それにこの入札相手、たぶんもう1回しか入札してこないだろうなあ。
でも、別の競争相手が参入してきたら?
一応ダンナに相談はしてあります。
「30万出すというならやめろというが、キミの唯一の趣味みたいなもんなんだから、突っ込めばいいんやないの? それに、それ高値で買ったら児童書もう買わんやろ」
いや30万は出せ(さ)ないけどさ。
そう、ここのところ小学校の学級文庫とか図書室の本の惨状に、児童書を買ってっては寄贈するというわけのわからぬマイブーム、寄贈前にリストを作ったり分類したり、家においとくのを選別したりするために、私の足元にはすでにダンボール三箱分の児童書が、積み上げられていたのです。
というわけで、競争相手が再入札したときには、こっちも再入札してました。思ったとおり、第二の限界を入札してきました。
そして完全に終了するまで、こちら以上に頭の留め金をぶち切らせた相手が第三の限界を出してくるか、はたまた第三の入札者が現れるかしませんようにと祈りつつ、終了を迎えて競り落としたというわけです。
やっぱり第二の敵は、限界の限界が限界だったようです。
敵の第二の限界は、2万円だったようです。こちらはそれ以上入れていましたので、2万5百円円が、終値でした。
最近の、誰も彼もが終了まぎわに入札するっていうの、そのためのソフトもあるらしいけど、神経疲れます。
なんで青い鳥文庫版と同じ中身の本に、これだけのお金を使い、神経すり減らさなければならないのだと、ずーっと自問自答を繰り返します。
ちなみに、私が早めに入札したのは、以前オークションで、欲しい本の終了日が先なんでノンビリしてたら、早期終了されたことがあるもんで、欲しい本にはツバつけることにしています。
で、オークションで競り買ったとしても、本が手元に届くまでは不安でいっぱいです。
時はちょうどGW。
郵便局も、宅配便との競争に勝つためか、休みの日でも配達はするようになりましたが、窓口が閉まっているのはしかたありません。
で、結局GWあけ、町角で息子を乗せた幼稚園バスが来るのを、他のお母さんがたと一緒に待っていたときです。
なぜかバスならぬ真っ赤な郵便局の小型トラックが止まり、私を呼びとめ、小包があるというではありませんか。いくら我が家への書籍小包が多いからって、こんなことは初めてです。他人への書籍小包を、ついいつものつもりで我が家に持ってきちゃったってことはありましたけど。
はい。両棲人間でした!
嬉しさのあまり、おもわずその場で袋をやぶり、つい「これ二万円もしちゃったんですよ!」と口にして、…………引かれたかなこりゃ。
家に帰ってから、ぱらぱらとチェック。
話しに聞いていた通り、青い鳥文庫版と同じようです。
絵は、いいですねえ。
海外版なんか挿絵無しが普通ですから、絵を楽しむには日本版でないと。
小松崎茂のイフチアンドル。やっぱトリトンだ。
いや逆だけど。
オークションで表紙画像を見たときから思ってたけど、海のトリトンは両棲人間の影響を受けたのではないか? というのに、また一つ補強資料が?
それはおいといて。
とりあえず、それよりも問題は、この本古さのわりには状態がいいのだけれど、けれど経年の痛みだけでもかなりなんとも、一言で今は形を保っているけど、唐突にバラけそう。
紙そのものが、ぼそぼそしてきてるよーな。
怖くてじっくり読めません。
読み用と保存用2冊あればいいんだけど、こんなのの二冊目なんてそう出回りもしないだろうし、出回っても、もうお金が出せそうにありません。
でも、あれ? なんか変だぞ? 持った感じ、青い鳥文庫より量が多いような?
目次とか、文章とか、確かに青い鳥文庫と同じだよなあ。
そしていくつか怪しいところをチェック。
これほぼ完訳じゃないか!(違いました)
つまり青い鳥文庫版は、講談社版の、ダイジェストだったのだ!
いや、ダイジェストというか、へつり版なわけです。
……なんで絵を差し替えて、ダイジェストにする必要があったのか?講談社は完訳しか出さないはずじゃなかったのか? 分厚くなりすぎるからだろうけど、青い鳥文庫にはもっと分厚いのもあるのに。
もう少しチェックをすすめていくと、完全に完訳ではないことも、わかりました。ところどころ、僅かにぬけているところがあります。
まだ完全にチェックしたわけじゃありませんし、だいたい私オリジナルを全部訳してませんが、かなり、いやものすごく、これは日本で発行された両棲人間の中で、もっとも完訳に近いんじゃなかろうか?
これだったら、高いお金払った価値があるじゃん!
もちろん、安く手に入ったらもっと嬉しかっただろうけど。
よく読んだら、完訳じゃなかった…………。
いやたしかに、他の版では訳されてないところが、訳されていたりして、そこを見てそう思ったのですが。
まず、青い鳥文庫版と比較すると、訳が異なる部分はなさそうです。
青い鳥文庫版は、このハードカバー版から、ストーリー進行にあまり影響を与えない部分が、がっさり削除されたもののようです。
けれど、ダイジェストとしてリライトしたものではありません。
2004.8
オリジナルを翻訳してたり、仕事が入ってたりしてたので、ずいぶん間があいてしまいました。
まず小松崎茂が、表紙とカラー口絵を描いています。
本文の挿絵は平野光一。
本文に、偕成社オンリーの部分を臭わせるようなものは、ありません。
この当時のSFは、少年少女への科学の啓蒙なんていうことが建前としてありますから、科学的見地から見た海洋資源に関する解説もついています。
細かいことは、データ検証頁とかで。
青天の霹靂とは、まさにこのこと
ふろく