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アレクサンドル・ベリャーエフ 作
「両棲人間」

Александр Беляев
Человек-Амфибия

発掘禄1 記憶の底の両棲人間

 この本については、完全に記憶だけで書いている。
 これこそが、私が足つき人魚に惚れ込むきっかけであった。
 両棲人間は、ドウエル教授の首で有名なベリャーエフの作。
 物語の時代は確か、母をたずねて三千里のころであったはず。
 主人公は、イフチアンドルまたはイフチアンドレという少年。
 イフチ=魚、アンドル=人、ということらしい。
 そのイフチアンドルは、ある博士の研究所のそばの、海の中で暮らしている。 研究所には、奇妙な動物が多数いて、少年はその一匹というわけだ。
 その研究所の動物達のことは秘密にされていたが、その秘密がもれてしまう。
 悪人は、その少年を真珠取りに利用するため、我が物にしようと画策する。
 でまあ、いろいろあった後、少年は自由を取り戻し姿を消す。
 このいろいろのあたりが、物語というわけだ。

 この本は、図書館にあった。
 小学生だった私は、気に入って何度も借りて読んだ。
 そしてある日、そのシリーズの本がすべて新品に入れ代わった。
 たしかに古い本で、シリーズのどれもこれも、ボロボロになっていたのだ。
 私は奇麗になったと喜んで手にし、いつものように読んで、驚いた。
 内容までもが、微妙に変わっていたからである。
 少年の名が、アンドレ、あるいはアンドル(もしかするとアンドリュー)というのは、その新旧で変更されているからである。
 それだけでなく、全てにおいて微妙に違っていた。
 それはまあ、訳者の違い程度である。

 問題は、ラストシーンだ。
 どこまで正確に覚えているかには不安があるが、バラす。
 もしこの本を持っているという方がいたら、どういうラストだったのか、何社発行の何年の何版で、訳者は誰なのか、メールで教えていただけないだろうか?(みなさまのご厚意により、解決いたしました。ありがとうございます。)
 旧版は、ハッピーエンドだった。
 姿を消した少年は、南国の海で、幸せに暮らしている。
 新版は、微妙にアンハッピーエンドだった。
 少年は、姿を消す。
 そして嵐の港を、実は本当の父親だった悪人が、少年の名を叫びながら、さまようシーンで、終わる。
 これは、まるっきり私の夢のようなものだったのだろうか?
 ……たしかにそのころ、こうした改変ものを、よく見掛けたような記憶がある。
 アンハッピーエンドを、強引にハッピーエンドにしたものが多かったような気がするが、それも私の思い込みかもしれない。
 今でも手に入るなら、新版でも旧版でも、読み返したい。
 そして記憶を、確かめたい。
 ともかく私が惚れこんだ、一冊である。

その後

 このページを読んでくださった、充実した人魚ページ「Garden in Blue」の乾杏子さんによると、ハードカバーで出たのが抄訳で、その後で出た新書版が完訳。前者は「アンドレ」、後者は現地ふうに「イフチアンドル」なのだそうです。情報、ありがとうございました。

次頁予告

 上舎さんの情報によると、ハードカバー版で「各巻箱入りのカバー無し」と「 箱無しのカバー有り」の2種類が存在し、1971年12月25日付けであかね書房から発行された、少年少女世界SF文学全集「カバーあり」のものが、ラストで「おれの息子、イフチアンドル」と叫ぶバージョンだそうです。
 で、この裏表紙には作者と原作名がロシア語で記述されているそうです。

 上舎さんから、両棲人間が売りに出されている古本屋サイトを教えてもらい、さっそくアクセスしたのですが、残念ながら売れてしまったようでした。
 この少年少女世界SF文学全集はすべからくこんな情況で、だいたい一冊3000円前後らしいです。

 で、その後私はくやしまぎれに検索しまくった結果、思いもしなかったことを知りました。それは…………

 講談社の青い鳥文庫からも発行されている! しかも最近。
 ですが、さまざまな方から頂いた情報の中には、これについて触れられているものはありません。(それでいえば、ハッピーエンド版を持っているという人もいないのですが。求む情報)(みなさまのご厚意により、解決いたしました。ありがとうございます。)
 それもそのはず、タイトルが 「イルカに乗った少年」!

なんじゃそりゃー!!

 しかし、こっちの出物は古本サイトにあったので、さっそく注文しました。絶版してないとは思うけど(2001.5 追記 絶版してました。)、見つけたので。ちなみに送料込みで810円。
 果たしてこれは、いかなるものなのか?

◆青い鳥文庫版のこと