半魚人のうわさが、港町を賑わせていていた。
真珠取りの元締めズリタは、そんなうわさを信じていなかった。
で、ズリタは船に惚れたグチエーレを父親バルタザールともども連れ込んでいたが、グチエーレはズリタになびかない。しかしバルタザールはズリタに借金があり、また金持ちのズリタに嫁がせることが、グチエーレの幸せにつながると考えていた。
グチエーレは、半魚人(イフチアンドルのイタズラ)を恐れて海から上がってきた真珠取りを、海にどぶしこむズリタを好きになれない。で、言い寄られて船から海に飛び込む(見事な飛び込み!)が、そこをサメに襲われる。
しかし真珠取りたちは、サメよりまだそのへんにいるはずの半魚人が怖くて助けにいかない。父親バルタザールも、おろおろするばかり。ズリタは動かない手下たちに見切りをつけて、単身小船を出してグチエーレ救出に向かう。
一方海中のイフチアンドルは、サメを撃退し、意識を失って沈んできたグチエーレを助け、ズリタの小船に押し上げる。
半魚人の実在を目の当たりにしたズリタは、グチエーレを助けたのは半魚人であることを語らず、手柄を独り占めし、同時に半魚人で金儲けすることを考える。
バルタザールは、ズリタの勇敢な行動に大感激。ズリタとバルタザールは、グチエーレとズリタの婚約を決めてしまう。
ところかわって、サリバトール博士の研究室に、新聞記者のオルセンがたずねてきた。
用件は、巷を賑わす半魚人について博士のコメントを取ること。そして新聞社への援助の申し込み。
博士は、当たり障りのないコメントをし、オルセン個人になら援助するといい、オルセンはそれを断る。博士は、いかなる政治活動にも参加しないが、誰もが豊かな海の中の国について語り、オルセンをイフチアンドルに引き合わせる。博士は、肺病の息子を生き延びさせるために、サメのエラを移植したのだ。
一方、ズリタはバルタザールをさそって、半魚人を捕まえようと行動をはじめていた。が、サリバトール博士の研究室の近くの海中で、鉄の柵に阻まれてしまう。が、あきらめはしなかった。
イフチアンドルは、助けた娘が忘れられず、サリバトール博士の言いつけを破って、町へ行く。が、どこを探せばいいのかもわからないまま、不慣れな町で非常識な行動を繰り返す。
やっとのことで見つけたグチエレと、ちょうどオルセンが会っていた。オルセンは、グチエレの昔からの知り合いで、博士にイフチアンドルを探すよう頼まれて、グチエレに車を借りるために来たところだったらしい。が、車はすでに売り払われてない。ついでにグチエレは、真珠の首飾りを売ってオルセンの新聞社に援助しようと言う。それを物陰から見守るイフチアンドル。
オルセンと分かれたグチエーレの家ではズリタが待ち構え、男と会うなと文句を言う。そこにイフチアンドルがやってきて、グチエーレもいきなり愛を語りだすイフチアンドルに最初は引いたものの、好感を抱くが、すぐさまズリタの横槍で追い出され、警官に追われ、逃げ出すはめになる。
サリバトール博士はイフチアンドルを止めようとするが、もう止まらない。
グチエーレが、オルセンに、真珠の首飾りを渡す場所に現れて、グチエーレが絶壁の下に落としてしまった首飾りを拾ってきていいところを見せる。そこにオルセンがやってくるが、イフチアンドルは会うことを拒む。彼もまた、グチエーレに惚れているからと。
イフチアンドルは、グチエーレと二人だけで会う約束をする。そして、真珠を集めてグチエーレにプレゼントするが、拒まれ真珠を捨ててしまう。
そんな彼に、自分はもう結婚が決まっていたから受け取れなかったが、今はあなたがいるからもう結婚しない、という。がそのとき、そこにそこにズリタが警官を連れてやってきて、イフチアンドルに手錠をかける。が、手錠のままイフチアンドルは振り切って海に逃れる。しかし、浮かび上がってこないイフチアンドルを見て、彼が死んだと思うグチエーレ。そしてズリタと結婚する。
しかし、新婦の父であるのに新居を訪ねることをズリタに拒まれたバルタザールは、自分の間違いに気づき、新居に乗り込んで投げ出される。
が、そのころグチエーレも、新居の一室に閉じこもってズリタを近づけさせなかった。
一方、結婚を知ったイフチアンドルは、グチエレをたずねていく。
それに気づいたズリタは、二人の会話からイフチアンドルが半魚人だと知り、捕獲し、さっそく真珠取りをさせる。
そこにオルセンとサリバトール博士がやってきて、はったりと、船室に閉じ込められていたグチエーレの助けで、イフチアンドルを取り返す。イフチアンドルは、グチエーレもつれていこうとするが、彼女は正式にズリタの妻なので、手が出ない。
研究所に戻って、そこを引き払おうとしていると、ズリタの方が手が早く警官が踏み込んでくる。一瞬早くイフチアンドルを海に逃し、オルセンをわざとイフチアンドルと間違えさせることには成功したが、海にも潜水服を着た者たちが待ち構えていて、イフチアンドルは捕まってしまう。
牢獄のサリバトールに、ズリタは、半魚人をいっぱいつくってくれれば、訴えを取り下げるというが、サリバトールは受け入れない。
しかし、昔サリバトールに息子の命を助けられた看守が、サリバトールに助けを申し出て、オルセンや、バルタザールの協力も得て、イフチアンドル脱走計画が立てられる。
グチエーレも誘ってオーストラリアに高飛びする予定だったが、その知らせを娘のところに持っていったバルタザールはズリタに見つかり計画がバレ、バルタザールはズリタを殺し自首する。それを伏せたままバルタザールはグチエーレを、イフチアンドルの元に逃す。
が、牢の中で樽に閉じ込められていたイフチアンドルの肺は、だめになっていた。
オルセンとグチエーレは、監獄からイフチアンドルを連れ出すことに成功したものの、追っ手を撒いて海にたどり着いたときには、もはや意識不明の状態。水につけられて意識を取り戻したものの、イフチアンドルはもう陸では生きられないとグチエーレに別れを告げる。
オルセンは別れる二人を見守り、そして博士を自由の身にしてみせると約束する。
そしてイフチアンドルは、博士とグチエーレをオルセンに託し、夜の海へと姿を消したのであった。