細江ひろみ
【はじめに】
このシナリオは、ダーティ・ヒーローを楽しむことを目的としています。活動的な戦闘ができるヒーローに向いていますが、味方NPCに高いスキルを持ったスペシャルハッカーが登場するため、ハッカー向きではありません。
●1.PCの状況
法治国家エデンは、約100年前に建国され、複数の恒星系に広がり、人々の暮らしも豊かに安定し、銀河連合でも発言力を持った平和な国です。
政府発表によると、犯罪も少なく、住民は生活に満足し、政府の支持率は非常に高いということになっています。
実際、この国の人々は親と教師、そして上司と政治家に従っていれば、不安も不自由さも悩みもありません。
しかし、ちょっとした冒険……実力よりワンランク上の学校の受験、パックを利用しない旅行、大出世やスターになること……を実行しようとすると、数々の有形無形の障害が立ち塞がります。
そして、反社会的な変人という烙印が押されるのです。
エデンの人々は、それが普通だと思わされています。
宇宙船乗りや、大科学者になるのは、幼い子供だけが許される夢であり、そんな夢をいつまでも追いつづけている者は、社会に適合できない精神異常者であり、犯罪予備軍なのです。
あなたは、そんなエデンの、ほどほどの家庭に生まれました。何にもさからわなければ、ほどほどの会社に入り、ほどほどの相手と結婚し、ほどほどの学校に子供を入れ、ほどほどの地位につき、ほどほどの退職金をもらい、ほどほどの老後を過ごし、ほどほどの一生を終えるでしょう。
たしかに、現在の大部分よりは、ずっと安定して平和な生活を保証されています。それが、あなたの人生です。
……僕はみんなを助ける英雄になるんだ!
幼いクラスメイトは、あなたの夢を幼いと笑いました。
……新聞に書いてあることは、本当なのかな?
新聞が嘘を書くわけないだろう? 根拠もなく疑うなんて、君はどうかしているよ。
……本当に、みんな幸せなんだろうか。
なにが不満なんだ? 子供っぽい夢ばかり追いかけていないで、現実に目をむけろよ。ノイローゼじゃないのか?
なんの予告もありませんでした。
ある日あなたの前に、船腹に真っ白なドクロのマークが描かれた漆黒の宇宙船が現われたのです。誰にはばかることもなく、その船は堂々と白昼の中を降下してきたのです。
その間、信じられぬものを目の前にして、誰ひとりとして身動きできませんでした。
船腹のハッチが開き、まばゆいばかりの光りが中からあふれ出しました。
光の中に、手を差し出している人影があります。
そして、声が聞こえたのです。
「君が気にいったなら、この船に乗れ」
あなたは、声に向かって踏みだしました。
その瞬間に、《あなた》はエデンでの安楽な生活を捨てて、《ヒーロー》となり冒険の中で生きることを選んだのです。
●2.マスター用情報
2-① エデンと、悪役たち
エデンは、行きすぎた法治国家です。国家設立の黎明期には、流入する無法者を押えつけるために、厳しい法が必要でした。
しかしエデンが充分安定した後でも、法は少しづつそれを決める者に有利に改正され、杓子定規に施行されました。
国家設立から100年が過ぎようとしている今では、法は民衆をエリートに従わせるために存在しています。
それでもエリートは、この法が民衆の自由を守る正義だと信じきっています。
このシナリオの悪役は、このエリートです。彼らは欲に走った悪人ではありません。法を愛し、法を守っています。
ただ、人間が作った法が人間をふみにじるようになっても、なお法が正しいと信じつづけた人たちなのです。
彼らは法にそって、法を自分たちに都合がいいように改正していますが、それがなぜ悪いのか理解できません。
彼らは愚かしいことに本気で、選ばれた自分たちがそうすることによって、エデンの人々を正しく導いているのだと、信じているのです。
常に彼らは法にしたがって行動しますので、PCがそれを利用してものごとを有利に運ぶことができるでしょう。しかし、しばらくすると彼らに都合の悪い法は、改正されてしまいます。
エデンの中で、その法の隙間に落ちこんだ人を助けられるのは、法に沿わないダーティ・ヒーローたちだけなのです。
2-② キャプテン
このシナリオ中では、これをすべてプレイヤーに明らかにする必要はありません。キャンペーンへとつなげたいマスターのための情報です。
最初は、できるかぎり謎の人物にしておいたほうが、面白くなります。
キャプテンは100年前の、国家設立者のひとりでした。
当時エデン国内の、異星文明の遺跡に意識をとらわれ、亡くなりました。
最近、その遺跡があらためて発見され、コンピュータ分析に掛けられたことがきっかけで、コンピュータ上の意識体として目覚めたのです。ただし、誰もキャプテンの死の真相と再生に、気づきませんでした。
建国当時の冒険者気質にあふれたキャプテンは、今のエデンの姿を知って一肌脱ごうと考えました。
コンピュータ上の命令書の情報を操作し、最高装備とオリジナル・ジャンプドライブを積んだ宇宙船を建造させ、それをチョロマカシたのです。
そしてエデンに、正義の宇宙海賊という夢とロマンを実現し、人々の心を揺さぶろうと考えています。
キャプテンは、エデン国内のコンピュータのほとんどを、支配できます。
しかしキャプテンは、エデン全体に広がるコンピュータ・ネットワークが、彼をもってしても解析不可能なほどの微妙なバランスを成立させているわずかな期間、とびとびにしか意識を保てないのです。
ときおり目覚めてヒーローに情報を与えたり、便宜をはかってくれる、スーパーNPC。それがキャプテンの立場です。マスターにとって、プレイが手づまりになったときに、好きなように登場させたり退場させて、好きなように行動させることができます。行動を制限しないようにデータもありません。だからこそ、マスターはキャプテンを使いすぎないように注意してください。
PCたちの前には、モニターやスピーカーを通じて、ホワイトノイズにぼんやりと浮かび上がるシルエットと声だけで登場します。
●3.キャラクター・メイキングの手引き
このシナリオを最大限楽しむために、マスターはプレイヤーがキャラクターを作る前に、スペオペヒーローズとこのシナリオが、何を目指しているのかを、プレイヤーに再確認させるといいでしょう。
いかに法に反していようとも、いかにPCたちがダーティだといわれようとも、PCは正義感あふれるヒーローでなければなりません。
そしてスペオペヒーローズの宇宙の法則は、ヒーローでない者に微笑むことはありません。
つまり、マスターはPCのヒーローらしくない行動を、無制限にUHPで却下できるのです。
これは一見、ヒーローらしくないPCに有利なように見えますが、実は全然有利にはなりませんので、勘違いして悪事を働くPCにはそうすると、宣言してしまいましょう。
次にPCの装備や船の装備ですが、今後PCたちが帰ってこれる家は、この船になりますから、それなりの愛着を持って欲しいし、安全な場所でなければなりません。
また、海賊が何の憂いもなく、大きな買い物をしたり、公共の病院を利用したのでは、興ざめもいいところです。
そこで、マスターは宇宙船の規模や名前はプレイヤーたちに決めてもらい、最高の医療設備を含む高額な装備など、好きなだけ与えたほうがいいでしょう。
もちろん、PCが使えないものや、マスターの美意識に反する物まで、許可する必要はありません。
●4.シナリオの概要
エデンでは、クローンが全面禁止されています。
国外からやってきたヒロインが、クローン法違反だとして、エデン国家当局により人権を剥奪されて殺される(当局にいわせれば、非合法品を処分する)ことになりました。
ヒーローたちが当局の手からヒロインを救い、国外へ逃がしてやる冒険が、このシナリオでは用意されています。
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《クローン》
細胞の一片から全体を造りだす技術です。
スペオペ・ヒーローズの宇宙では、医療の一環として一般的化されています。
人格の再現は報告されていませんが、顔や指紋まで忠実に再現できるため、犯罪に利用されることもあり、大半の国家が法的制限を授けていますが、エデンの全面禁止はクローン技術黎明期の、旧時代的なしろものです。
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●5.【ニュース】
ヒーローたちは、海賊船に用意されているさまざまな学習ソフトにより、スキルを獲得して、今のキャラクターになったというわけです。
海賊先では、外国のニュースや警察の内部情報など、エデンにいるかぎり知ることができなかった情報が、よりどりみどりです。
そうしてヒーローたちは、エデンの幸福が表面上だけのものだったことを知ったところです。
エデンでは政策ミスはニュースにならず、その責任が追求されたかどうか、人々が知るすべはありませんでした。
しかし、エデンに政治的醜聞や失策、非人道的な行いがないわけではありません。周囲の国との間では、実にさまざまな事件をおこしているのです。
周辺諸国のニュースを見るかぎり、エデンは大変評判が悪い国なのです。しかし、エデンの政治家たちは、なぜそんなに評判が悪いのかすら、わかっていない様子です。
いま、周辺の国のニュースセンターが報道している最大のエデン関係のニュースは、公演のためにエデンに入国したアイドル歌手、アンジェ・クレイがクローン法違反によりエデン当局に身柄を拘束され、連絡が取れなくなったというものです。
エデン版ニュースで、彼女についての記事を見つけるのは『やさしい(スペオペヒーローズの目標値基準表を参照してください)』ことですが、見つかるのは芸能ニュースのすみの、公演中止を知らせる記事だけです。
キャプテンは、このことについて「エデンという井の中の蛙たちは、自分の正しさに自信を持ちすぎ、自分に疑問をもたなくなってしまったからだ」と、コメントします。
なお、エデンでは海賊船やPCの失踪はニュースになっていません。
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アンジェ・クレイは、数年前に大事故によって、身体の大部分を失いクローン再生を受け、長く苦しいリハビリテーションの後、歌手としてデビューしました。
今では実力を認められ、同じように四肢を失った人たちの、希望の星となっています。
芯のしっかりした女性なのですが、孤立無援の状態ですっかり心細くなり、ヒーローの出現を待っています。
体1、器2、敏3、知2、運3、サイズ1
回避1、礼儀作法1、交渉1、勘1、意思力1、演技2、歌2、踊り2
口癖「いつでも希望は捨てちゃいけないって、自分に言いきかせているの」
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エデン周辺の国家の人々にとって、エデンのクローン法は非常識な部類にはいるほど、極端なものです。
しかし、エデンの法を守る者たちにとっては、たとえそうであろうとも、エデンではエデンの法が守られなければならないのです。
国外の各種団体……彼女の母国政府、ファン団体、人権保護団体……はエデン政府に圧力を掛け始めていますが、エデンは不法な内政干渉だととりあわず、エデン法を知らずに入国したアンジェが悪いのだと表明し、それらの団体メンバーの入国を禁止し、さらなる反感を買っています。
エデンの市民は、そんな事件があったことも、アンジェがそんな目に合っていることも知りません。
ヒーローたちにも心あたりがあります。いままで外国からのゲストは、なんの予告もなく姿を消すことがよくあったのです。それまでのエデン市民としての常識では、外国人というものはワガママなので、何かあるとすぐ国に帰ってしまうものでした。
ところが、今回の事件にからんで、周辺諸国の各界の有名人による「私はこうして突如国外退去させられた」だとか、「いやがらせによって、退去においつめられた」などのコメントがニュースになり、真相を知ることができたのです。
その中にはPCの知っている大学教授、ミュージシャン、スポーツマンなど名前を見つけることもできます。
キャプテン「君たちはエデンの暗い面を知った。しかし、今の君たちはこのエデンを変える力を持っている。
もし、君たちがエデンを去るというなら、それもいいだろう。広い世界を見て学ぶがよい。私は援助できなくなるが、止めはしない。
ただ、今アンジェを救うことができるのは、それは機動力を持ち、なおかつ法の過ちを知った、君たちだけなのだ。私は君たちに何も命令しないが、アンジェを助けてほしいとお願いする。
アンジェのために、そしてエデンの信頼回復のために、エデンには腐ったエリートだけではなく、法を踏みにじってでも正義を貫く海賊がいるのだと、証明してほしい。
アンジェは惑星エデン2で当局の手を逃れ、ノアシティに潜伏している。当局はまだこの情報を知らないが、隠しとおせる時間は少ない。
彼女を助けられるのは、君たちしかいないのだ」
●6.【ノアシティ】
キャプテンはヒーローがエデンで活動するための偽身分証明書と偽クレジット・カードを用意しています。
これは、エデンで身分詐称するときの成功レベルを、1段階上げてくれる物で、偽の身分は、外国人旅行者です。
キャプテンは、アンジェがノアシティのホテル箱船にいることをつき止め、ノアシティの情報を混乱させました。
しかしついに、キャプテンの目覚めの期間が終わってしまったのです。今度いつ目覚めるのかはわかりません。
ヒーローはノアシティが混乱しているうちに、アンジェを救出しなければなりません。
惑星エデン2は大気が0.2気圧しかなく、ノアシティは半地下タイプのドーム型都市です。
エデン入るには関税を兼ねた宇宙ステーションからシャトルを経由しなければなりません。
また、エデンでは武器の所有についても厳しく制限しているので、空港ではボディチェックが行われています。
このシーンでは、隠蔽と役所のスキルが特に役立ちます。
サイズ1の武器を持ちこむのは『難しい』ことです。サイズ2なら偽装しても『非常に難しい』でしょう。それ以上は『考えたくない』ことです。
マスターにとっては、シナリオ進行の邪魔になりそうな品を、UHPを与えて取り上げるチャンスです。
●7.【ホテル箱船】
ホテル箱船は、パッとしない密集したビル街の、9階建てのビジネスホテルです。部屋には明り取り用の窓があるだけで、窓から人の出入りは不可能です。
建築規制により周囲のビルは同じ高さです。あとで、ビルの屋上から屋上への飛びうつりアクションシーンを成立させたいので、ビルが密集していることと、同じ高さであることを、さりげなく強調しておいてください。
ホテル箱船に近づいたヒーローは、張りこみをしている私服警官に気づくのは『標準』的なことです。特に注意をはらったヒーローなら『やさしい』ことでしょう。
ホテルへの電話やフロントは監視されていますので、彼らに気づかれずにアンジェの情報を得るのは『かなり難しい』ことです。しかし、ホテルの従業員は何が起ころうとしているのか知らず、アンジェらしき外国人が901号室に宿泊していることを、教えてくれます。
アンジェに近づいたことを知った私服警官は、ヒーロー近を逮捕しようとします。ヒーローが一瞬先に彼らの行動に気づき先手を取るのは『やさしい』ことです。
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エデンの雑魚警官
命令違反を何よりも恐れています。そのため臨機応変な対応ができません。見張れ、ここに来た者を攻撃しろ、と命令されるとあっちが大変そうでも助けに行けないのです。でも、逃げる時は逃げます。
体2、器1、敏2、知1、運-、サイズ1
回避1、有反動ハンドガン1、格闘1、役所1
ボディアーマー(CDレブルの同等品)
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フロントでヒーローを捕まえようとするのは、2人の雑魚警官です。ヒーローが勝利を得る寸前、雑魚警官が仲間に連絡をしようとします。
それを止めさせるのは『非常にやさしい』ことですが、却下して(UHPを与えて)ください。
●8.【アンジェ救出】
ヒーローが箱船の9階に到着したとき、ヒーローと同数の雑魚警官が、待ち伏せしています。また、別の2人の雑魚警官が、アンジェを部屋から引きずり出したところです。アンジェは手錠を掛けられ、顔には殴られたようなアザができています。
ただし雑魚警官は、ヒーローが1階で階段を使ったなら階段だけを、エレベータならエレベータだけを待ち伏せているのです。
ヒーローは6人の雑魚警官を倒し、ヒロインを救わなければいけません。アンジェもまた、雑魚警官がヒーローに気を取られたすきに、警官を張り倒して自分の安全を確保します。
戦いが終わるとアンジェは、もっとも活躍したヒーローにしがみついて、泣きだします。
「あぁ、世の中全部から見捨てられたかと思ったわ」
しかし、ヒロインを連れ出そうとしたとき、ホテルの火災隔壁が閉まり、エレベータが止まり、階段の下からは多数の重そうな足音と、金属がぶつかり合う音が、外からはパトカーのサイレンの音が聞こえます。
屋上になら逃げ道があるかもしれない! ビルは密集しているし、高さも同じだ。隣の屋上へと飛び移れるはずだ! そうヒーローが思いつかなければ、HPでこのアイデアを思いつかせてください。
屋上の扉に鍵を開けるのは『やさしい』ことですし、扉を壊すのは『少し難しい』程度です。
●9.【屋上】
このあたりはビルが密集しているので、ヒーローが隣のビルの屋上へ飛び移るなら『やさしい』距離です。
階段からは、「いないぞ、どこへ行った、上だ!」という声が聞こえ、しばらくすると屋上に無骨なボディアーマー(SD ハード1-Nの同等品)を身につけ、ジェラルミン風の盾を持った雑魚警官が次から次へと姿を現します。
8人の雑魚警官は2人の指揮官のもと、盾を構えフォーメーションを組み、ヒーローを取り押えようと近づきます。マスターは、雑魚警官を随時補給したり、アンジェを先行させて、ヒーローを隣のビルにジャンプしなければならないように追いつめてください。
屋上から屋上への距離は、最初は『やさしい』ですが、次は『少しやさしい』へと、徐々に難しくなっていきます。
マスターはさり気なく、追いかけてくる敵のうち指揮官が常に成功したグループに含まれるようにしてください。また、ヒーローに勘か知性をロールしてもらい、成功をUHPで却下してください。ヒーローはここで、本来なら『やさしく』気づくはずの、行く手に仕掛けられているワナを、うっかり見過ごしてしまいます。
ヒーローがそれ以上前進できなくなるころには、警官はまったくいなくなるか、簡単に片付られる数になっているはずです。
逃げきって、ほっとした空気が流れたとき、マスターはさりげなくアンジェをヒーローと切り離して、ビルの縁に立たせてください。
本来なら、下から急速に近づいてくるジェット音にヒーローが気づくのは『やさしい』はずですが、またもヒーローは聞き逃してしまうのです!
アンジェは突如足元から現れた、ジェットベルト(BMWジェットベルトの同等品)の男ゲーリー・ナマガキにはがい絞めにされます。
ゲーリーは悪魔の冷笑を顔に浮かべ、「法を守れぬウジ虫どもめが」というと、即座にヒーローの死角へと飛び去ります。
ヒーローは黙っていないでしょうが、今ゲーリーを撃てばアンジェはビルの谷間に落ちてしまいます。ゲーリーを取り押えることは『少し難しい』はずですが、ヒーローは足をもつれさせ、ヒーローとアンジェが互いに伸ばした手は、紙一重の差でむなしく空を掴みます。
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ゲーリー・ナマガキは、典型的なエデンの若手エリート候補です。法がどれほど不条理で悲惨な結果を生もうと、それが正義なのだと信じています。
上層部が法を自分たちに有利に作り変えていることも知っていますが、その手順が法に違反していないかぎり、彼らも、そして将来その地位につく自分も、正義なのです。
体2、器2、敏2、知3、運-、サイズ1
回避2、戦術1、有反動ハンドガン2、格闘2、役所2
ボディアーマー(CDリフレクターの同等品)
口癖「それが法だよ」
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●10.【敗走】
ゲーリーが去ると、ヒーローと同じ人数の雑魚警官が、ジェットベルトを使って屋上にやってきます。
ヒーローに、雑魚警官のジェットベルトを奪って逃げてもらおうという魂胆です。HP消費のアイデアで思いつかせてもいいでしょう。
なおノアシティは、最初にキャプテンがひきおこしておいた混乱と、エデンに存在しないはずの犯罪事件をまのあたりにした市民により、パニック状態になっていますから、現場を離れ人々にまぎれることにより、シティから抜け出すことができます。
●11.【追跡】
ヒーローが海賊船に戻ると、キャプテンが新しい情報を得たところです。
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「ノア・シティは残念だった。力になれなくて済まない。
ゲーリーの宇宙船の出港記録をキャッチすることが出来た。彼は、辺境の小惑星ドリーム・アイランドに向かっている。そこでアンジェを処分するつもりなのだ。
ゲーリーをいかせてはならない」
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ドリーム・アイランドは、エデン2のある宙域から13光年離れた辺境星系の直径300Kmの小惑星で、産業廃棄物廃棄場となっています。
大気はなく、重力はきわめて微弱、周囲には粗大ゴミや巨大ゴミが浮遊しています。
ゲーリーのエデン2星警110号宇宙船は、コピードライブシップなので、先まわりすることができます。しかし、どんな間隔でジャンプしながらいくかはわからないので、途中で待ち伏せることは、不可能です。
ゲーリーに通信を送った場合、ゲーリーは「法を解せぬウジ虫の命令など、聞く耳はもたぬ」とばかりに、交渉や脅しには応じません。そしてドリーム・アイランドを周回しはじめます。
ゲーリーはすでにアンジェをカプセルに詰め込み、これを着実にドリーム・アイランドに撃ちこむチャンスを狙っているのです。このカプセルはドリームアイランドの地表にぶつかれば大破し、彼の任務は終了します。
●12.【白兵戦】
ヒーローが110号に白兵戦をしかける場合、まず、110号にぎりぎりまで船を寄せて並走しなければなりません。そのためには相手の操縦スキルロールをうわ回るロールに成功しなければなりません。
次に船内では、まずゲーリーの部下の雑魚警官がヒーローを襲い、バッタバッタとヒーローに倒されます。
ヒーローは最後にゲーリーを見つけます。
彼は右手に持った銃でヒーローを狙いながら、左手でコンソールの赤いボタンを押してこう言います。
ゲーリー「たとえウジ虫が何をしようとも、私は正義のために法を守るのだッ!」
そのとたん、コンソールの上にあるいくつかのモニターに、恐怖に歪むアンジェの表情と、射出されるカプセルが映しだされ、足元から振動を感じ、射出音を聞くことができます。
このゲーリーの行動を止めるのは『不可能に近い』ことです。しかし、ヒーローがなんらかの方法でゲーリーが赤いボタンを押す前に彼を倒せば、アンジェを救い出すことができます。
●13.【ドリーム・アイランド】
ヒーローが白兵戦を仕掛けなかったり、船の横付けに失敗しつづけると、ゲーリーは海賊船が離れた瞬間を狙って、アンジェのカプセルを射出し、通信を送ってきます。
ゲーリー「法を理解せぬウジ虫どもめ。今のカプセルはアンジェだ。助けたければ追うがいい。でないとすぐにドリーム・アイランドに突っ込むぞ、クククッ」
110号は海賊船がカプセルを追い始めたとたんに、後ろからミサイル攻撃してきます。ゲーリーは海賊船とアンジェをまとめて片付るつもりなのです。
浮遊するゴミを避けながらカプセルを追いつくには『難しい』ロールに4回成功しなければなりません。成功するとカプセルと海賊船の相対速度が0になり、カプセルを収容することができます。
カプセルがドリーム・アイランドに突っ込むまでに残された時間は15ラウンド、毎ラウンド110号が海賊船を攻撃して(海賊船にとって、痛くもかゆくもない攻撃かもしれませんが)きます。
15ラウンドが過ぎれば、カプセルと海賊船はドリーム・ランドに突っ込んで、宇宙の塵となってしまいます。
●14.【結末】
アンジェを救出してしまえば、海賊船が追っ手のかからない場所まで逃げなければなりません。
アンジェのカプセルに追いつくためにかけたラウンドの半数のラウンドの間、浮遊ゴミとゲーリーの追撃を回避しなければなりません。
その後は簡単です。ジャンプしてエデンの外へ出てしまえば、他国の政府、団体、通りすがりのマスコミやキャンサーサービスなど、どの団体もちょっとしたことには目をつむりながら、アンジェを引きとってくれます。
アンジェは、ヒーローたちとの別れをなごり惜しみながら、いつか宇宙で再会しようと約束します。
その後……
ヒーローたちは、スクリーンの中の彼女に再会します。
新作ヴィデオ「エデンの宇宙海賊」は、なかなかの前評判です。もちろんヒロインはアンジェ自身、そしてヒーローたちに似た俳優が、海賊を演じています。
ストーリーはほぼノンフィクションですが、たったひとつだけ現実には存在しなかったシーンがあります。
アンジェはスクリーンの向こうから、ヒーローのひとりに切々と「愛」を告白しました。
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