(C)hosoe hiromi 細江ひろみ
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『ブルーフォレスト物語』は、伏見健二さんが作ったアジア風ファンタジーTRPGシステムです。
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ブルーフォレスト物語 全滅リプレイ

あるマヌケたちの物語

 このリプレイは、『ブルーフォレスト物語がよくわかる本』に収録するはずだったセッションである。
 世のリプレイは、成功したものばかりなので、うまくいかないことが大変な失敗であるかのように思ってしまう人もいる。だから掲載しようと思ってたが、ページ数が増えすぎたので、没にした。

 なぜこのセッションは失敗したのか? それは、セッション開始直前に、全員がうろたえるような出来事があったからであると、現場にいた私は考えている。
 セッションは非常にデリケートなものだ。セッションとは無関係のことであっても、参加者がうろたえると、判断力も鈍ってしまい、このような結果に陥ることもある。
 それだけではない。先日までプレイしていたキャンペーンで、プレイヤーたちは高レベルキャラクターに慣れてしまっていた。高レベルならなんとかなることも、低レベルでは致命傷になるものだ。

 

「プレイヤー・ヒカルの場合」
ヒカル:こんどは呪文を使うキャラクターがいい。本職の魔法使いね。だから魔術士、魔道士、呪術士のどれかをやりたいんだけど。

わたし:そうはいっても……。その職業につきたい。という理想と、実際につける職業のギャップというものがあるからねぇ。別の職業につきながらも、将来の夢のためにがんばってね。どうせ、すぐに転職できるようになるから。

ヒカル:そうだっけ。チニタは転職しなかったから、わかんなかった。

わたし:職業は外面のこととあきらめて、将来について考えながら成長していけばいいんじゃないかなぁ。修行の旅ということで。とりあえず、「学師」

っていう職業以外ならどんな職業でも呪文を取れるんだし、魔術士かなんかになったときに使えなくなる呪文を取らないようにしておけば、損はしないしね。あと、個人的な旅の理由とかもあるといいです。



「プレイヤー・ミサトの場合」

ミサト:ねぇ、泥棒じゃなくったって、泥棒してもいいんだよね。

わたし:そうだよ。薦めないけど。

ミサト:ダメ?

わたし:ダメじゃないけど、ほかの人が見たときに、キャラシートに書いてある職業には見えない、っていうプレイはまずい。

ミサト:ふだんは職業らしい行動をしていて、裏でこっそり泥棒するならいい?

わたし:そうそう。地道な泥棒だったら、そうだろうね。表の職業があって、そっちは真面目な仕事ぶりで。

ミサト:ほら、怪盗には実力がついてから、っていってたじゃない。盗人はなさけなさそうだから、旅芸人しながら泥棒の修行に励むわ。

わたし:ほい。でも、芸のできない旅芸人も情けないものがあるから、芸の特技もとったほうがいいよ。でないと、芸人の仕事もできないし。「逆に、旅芸人でないものが芸を持っていても、金儲けにはつながらない。芸人が芸をするからこそ人は「芸を見ているんだ」という気分になり、金を投げるからである。同じように剣に関する工芸技能があっても、職業が職人でなければ剣研ぎの仕事はまかされない。職人でもない奴の仕事は、信用できないからである」

ミサト:うん、泥棒にも役にたつ芸を覚えるつもり。それと、呪文で芸はできる?

わたし:完全にダメ。ダイナマイトで芸をやるようなもんだよ。やろうとしたとたんに、犯罪者になっちゃうよ。

ミサト:そっかぁ。

わたし:そうそう、道具が必要な特技もあるから、注意してね。笛の特技だったら笛とか。

ミサト:草笛とか、口笛でもいいよね。今、テレビで大根や人参を笛にして演奏してるけど?

わたし:……笛作りの特技がいることにしよう。

『マスターの判断によって新しい特技を追加できる。あまりに便利すぎる特技を作るとそれに振り回されてRPGの面白さをそぐことになる』

ミサト:笛を作る特技って素敵だなぁ。

わたし:とりあえず、キャラクターの設定考えておいて。



「プレイヤー・マユミの場合」

マユミ:ミサトと話あったんだけどね、私とミサトのキャラクターは双子の少年でねぇ、旅芸人をしながら裏では盗みも働いているっていうことにしようと思って。

わたし:へ? いきなりどうして?

マユミ:実は泥棒をする旅芸人って、けっこう実力がつかなさそうだから、ふたりで一人前のキャラクターにするの。助け合いながら旅をすれば、どうにかなるでしょう?

わたし:考えたねー。

マユミ:でも、全体の職業のバランスっていゆうやつが悪くならない?、旅芸人がふたりになるわけだし。

わたし:それは考えなくっていいよ。表面に現われる職業は、力のバランスにはあまり関係ないし。ようは心意気だけよね。自分のどんな能力を仲間のために役にたてていくか?、っていう。

マユミ:シナリオは大丈夫なの?、戦うシナリオで、戦える人がいなかったら、困るんじゃない?

わたし:全員学師のパーティだったりしたら、さすがに却下するけど。それでも「どんな事件でも戦わずして解決してみせる!」っていいきれるんならいいよ。解決せずに事件にかかわらないことを選ばれるのが困るだけで。



『学師を10倍楽しむ方法』

 まず、傭兵などでキャラクターにすばらしい肉体と、目指す専門知識、関連知識が備わるまで成長させる。呪文は無視し、生活費を蓄える。

 そしておもむろに学師に転職し、遺跡などを発掘するのである。

 学師の働き口などめったにないので、生活費が尽きたらもとの傭兵にでも戻ること。学師は頭脳明晰なプレイヤーにお薦めする。ふだんよりパーティの知恵袋とならなければ、単なる厄介物である』

マユミ:楽しみだなー。ミサトが軽業をするでしょう?、私がお金を集めてまわるのね。で、「これでギャラは同じです」っていうの。

わたし:……

マユミ:それから、旅の目的も決めたから。父親が酒乱の乱暴者で、病弱な母親は最近亡くなったのね。そんなときに物置で宝の地図を見つけたのよ。で、殴る蹴るの父親から逃げるように、宝探しに行くの。でも、ラストは宝を持って故郷に錦を飾り、父親に一生うまい酒に困らない生活を提供できたら、美談よねー。ということで、そうゆう話にしたいんだけど。

わたし:……したいっていっても、なるかどうかは努力と運しだい。いちおう希望は聞いたけど、それはキャラクターの人生目標としてとっておいて。

マユミ:はーい。



「サカエの場合」

サカエ:俺は天下を統一して平和をもたらすことを夢みているというキャラでいいかな?、そのための力を手に入れられるなら、手段は選ばないタイプということで。もちろん、仲間思いではあるけれども、将来出世したら部下に使ってあげようという、偉ブリッコが目標。

わたし:了解、

『関係ないが、サカエとヒカルは夫婦なのである。サカエのほうが夫でヒカルが妻だ』



「ひとみの場合」

わたし:ひとみはマスターです。

ひとみ:!!!!!!!!!!!!

わたし:シナリオはこっちで用意するから安心してね。

 こうして、ひとみがベックリしている間にも、プレイヤーの好みや設定を取り入れつつ、綿密な計画がたてられて、実行に移されていくのであった。

 

 まずは、ミサトとマユミが双子で家を出るところに、ほかのメンバーがいあわせたことにしよう。

 宝の地図といえば、眉唾だけれども当たれば大きい。場所は山の中で、当然ダンジョンの中。そして当然ゴブリンが住み着いていて、これを退治するだけでいいか。

 戦闘力のないパーティかもしれないから、頭を使えば戦闘を回避できるようにしておこう。

 とすると、パーティに情報を渡してくれる人が必要だな。

 近くに国境警備の砦があって、ゴブリンが食料を盗んでいくので困っている。

 なぜその兵士が自分でゴブリン退治にいかないかというと政情不安定のために、砦を離れられないからだ。そこへ、パーティがくるわけだから、ゴブリン退治をするなら兵士からも礼金をだすことにしよう。

 ゴブリンは毎日食料を盗みにくるから、その間ダンジョンはカラッポになる。そこを狙えば戦いを回避して宝を手に入れられることにしよう。犬ゴブリンくらいはいてもいいかな。あ、留守番ゴブリナなんかいいかもしれない。宝には、ゴブリンを退治できる程度の呪文の品も用意しておこーっと。宝を手に入れてた後ならゴブリンが帰ってきても、退治できるだろう。

 やっぱ、基本が一番よね。

『ゴブリナ』

 ゴブリナとは、かよわく純真な先祖帰りしたゴブリンで、ブルー・フォレスト戦乱でプレイヤー用キャラクターとして詳しく紹介されている。

 

「キャラメイク」

 混乱を避けるために、キャラ名をプレイヤー名と同一にしてお送りいたします。

ミサト:さすがに、前に一度しか作っただけだから、作り方忘れちゃったねー。

 とかいいつつ、5分もしないうちにキャラクターの能力値が決まる。こんなものは、キャラシートの書き込み項目に、何を書き込むか?、を書き入れた物をいくつか用意しておけば、何度も何度もキャラの作成方法を説明する必要もなくなる。

 生まれたばかりのキャラクターの能力値の決定には、プレイヤーの自由意志がからまないので、完全に単純作業なのである。

ヒカル:あーん、能力値が低いー。成長は全部能力値を延ばすために使おっと。これで次の時には念願の魔術士になれる。

わたし:大丈夫?。呪文は、ペーペーの冒険者にとっては身を守る重要な手段だよ。

ヒカル:早く魔術師になりたいもの。サカエ:だ、だめだ。闘士か市民にしかなれない。

わたし:よかったじゃない。とにかく闘士にはなれるんだし。呪文に欲さえださなければ、武器や防具の制限ないし。「闘士とは、戦うだけのバカである。レベルの高い闘士とは、すごく強そうな戦うだけの大バカである。これは、本当はすごく弱かろうとも、すばらしい知性を持っていようとも、他人にそう見えてしまうのである」

 1レベルの闘士 戦う人 3レベルの闘士 戦うだけの人 5レベルの闘士 なんにも考えずに戦う人 ヤクザのボスの後ろに立っている、半裸の大 男が闘士である。



わたし:実力のない騎士よりは、実力のない闘士のほうがみっともなくないし。

サカエ:俺を外見で決めるなーっ。いつか見返してやるッ!、あとで騎士になろっと。

わたし:容姿をよくしなければならない分、騎士は戦士より不利になるけど、いい?

サカエ:やっぱ、主義があって行動しているからには騎士のほうが似合っているし、人の上に立てるようになりたいから、交渉ロールに関係してくる容姿も、いつかは上げたいし。

わたし:了解、いいキャラになりそうだね。

ヒカル:所持金はー?、生まれの地位のルールは使っていいの?

わたし:じゃあ、生まれの地位ルールは、使いたい人は使っていい。でも、使ったら取消不可能ということで。



『と、こうゆうふうにしているマスターが多い。生活の知恵である』



マユミ&ミサト:きゃはははは。

わたし:どうしたの?

マユミ:双子なのに、歳が違うのー。

ミサト:なおせなおせ。

ヒカル:買い物のリストー。チャートはどこー。

ミサト:マユミちゃーん、兄弟でしょー。お金貸して。

わたし:兄弟間の金の貸し借りはOKね。

マユミ:なんで兄弟なのに、こんなに所持金が違うんだ?

ミサト:そりゃあ、兄ちゃんのほうが手癖が悪いからじゃないか。

マユミ:そうかぁ、じゃあスリ特技はこっちがこっちが持って、軽業はそっちってか?

ミサト:いや、兄ちゃんが軽業で稼いで、スリ特技で稼ぎは弟が戴く。

マユミ:観客からとればいいじゃないか。

わたし:それで話が面白くなるんだったら、なんでもやってくれい。ひとみ、シナリオ読んだぁ?

 ~ああだこうだ~

 

「出会い」

ひとみ:えっとですねぇ。双子のマユミとミサトの生まれ育った村から始めますね。

ミサト:っていうことは、家があるんだよね。じゃあ、いろんな物を家から持ち出してもいい?

ひとみ:えーっと、いいんですか?

わたし:それはマスターが妥当だと思えるように決めればいいです。

ひとみ:じゃあ、家から持ち出せた物が最初の所持金と買ったもので、金目のものを探していて「宝の地図」も見つけました。ふたりのお父さんが「やい、マユミにミサト。酒買ってこーい」っていいます。

ミサト:「とうちゃん、酒を買う金くれよ」

ひとみ/父:「うるせぇ、今まで誰が育ててやったんでぃ。酒場で芸でもして稼いで買ってこーい」

マユミ:「しょうがない、行くぞミサト」

 ところで、酒場で芸したら金が儲けられるの?

ひとみ:1D6銀貨くらいでいいですかぁ?

わたし:ひとみの好きでいいよ。そうゆう状況で、常識的にいくら貰えるか考えてみて。

ひとみ:常識的っていうのが、わかんないんです。

わたし:ひとみが客だったらどうする?。

マユミ:でも、芸は完壁なんでしょう?、特技として持っているんだから。

ひとみ:じゃあ、ここは田舎の酒場なので、村の人は村の子供がいくら芸をしたって、お金なんかくれません。でも、村の外の人ならくれます。酒場の親父さんは双子の家庭の事情を知っているので、場所代はいらないといってくれています。

ミサト:ラッキー。で、酒場に旅人はいるの?

ひとみ:ふたりいます。

ミサト:じゃあ、芸をするぞ。「あははははは、ミサトでーす」

マユミ:「あははははは、マユミでーす」

ミサト&マユミ:「ふたりあわせて、少年ブラザーズでーす」

ひとみ&わたし:……

ミサト:で、爆転をする。お金は貰えるだろうか?

ひとみ:サカエにヒカルが酒場にいたら、このふたりが入ってきて芸を始めたけど、お金投げる?

マユミ:やーん。ひとみのいじわるー。

サカエ:俺は将来のために金を貯めているんだ。余分な金はないよ」

ヒカル:銀貨を1枚だけ投げる。チャリーン。「なんだか知らないけれども、がんばるのよ」

マユミ:「わーい、死んだお母さんみたいに優し人だー。おばちゃん美人だね」あ、ファザコンで年上の女性に弱いことにしまーす。

ミサト:「お金を稼いで酒を買って帰らないと、父が殴るんですぅ」

ヒカル:「私にはこんな大きな子供はいないわ。プンプン」

マユミ:16才はガキだよね。一年が6カ月なら8才でしょう?

わたし:ガキじゃないよ。親が老衰で亡くなっててもおかしくないし、そろそろ結婚を考える歳でもあるし。私たちの20才くらいだよ。

マユミ:あら、そう。

ひとみ:酒は一番安いので、5銀貨。

ミサト:「にいちゃん、これじゃあ酒が買えないよ」

マユミ:「しょうがない。地図の場所まで行ってみよう。多少は金目のものがあるかもしれない」

ひとみ:酒場の親父さんが「おめーらみたいなガキがいったって、どうにかなるもんかい。護衛を雇う金なんぞないだろう」

ミサト:「おっさん、私ら子供じゃないよ」

ひとみ:「いいや、おめーらの頭の中は、ガキのまんまだ」

マユミ:いえてる、いえてる。

サカエ:「よし、キビ団子を買ってやるから、俺についてこい。俺の部下として宝探しにいこう。見つかったら山分けだ」

マユミ:「よ、おっちゃん。ふとっぱらだね」

サカエ:「金に困ったときは、お互い様だ」

ひとみ/酒場の親父:「そっちの神官さんにも、一緒にいってもらえ。でないと生きて帰れねぇぞ」

マユミ:マスターががみんなを一緒にしようと、がんばってる、がんばっている。 ひとみ:……

わたし:マスターは無駄口をたたくプレイヤーに注意すること。

ひとみ:お静かにー。

ヒカル:「治癒呪文なんて持ってないけど?」

ひとみ:……

わたし:神官だから、持ってそうに見えるんですよ。ヒカルの発言はPC発言?

ヒカル:なし、なし。

ミサト:「神官さーん、お礼できるかどうか、わかんないけど、一緒にいってくれよー。美人の神官さーん。神官さんだったら私たちの苦境を見捨てたりしないよねー」

ヒカル:「私になにが出来るかわかりませんが、おつき合いしましょう」

 

「国境の砦」

(しまった。ひとみがプレイヤーを押さえきれない。考えてみればひとみは、このメンバーの中で一番年下。初マスターの緊張だってあるはずなのに、さらに年上に対する遠慮が出てしまっているッ!)

わたし:状況描写は、適当に作って多めにすると雰囲気がでます。

ひとみ:はーい。では、半日ほど歩いて、国境警備の砦があるところに到着しました。

ミサト:今、何時ころ?

ひとみ:え?、えーっと。何時ですか?、シナリオには書いてないけど。

わたし:そういう決まってないことについては、妥当であれば何時でもいいんです。まぁ午後ってことで、1D6振ってきめちゃったら?

ひとみ:午後6時ころです。

マユミ:時計ってあるの?

ひとみ:ありましたっけ。

わたし:貴族の偉いさんの所にはあるかもね。いや、いーんだって、ひとみが決めて。

ひとみ:時計はないけど、午後6時くらいです。えーっと。砦は小さいけど石作りで、まわりは荒れた起伏の激しい土地です。あと、最近は政情不安定です。そのせいで、兵士が3人もいます。サカエ:そうそう。だから俺が偉くなって、平和な世の中を作るのだ。

ミサト:宝のある場所は、ここから近いのかな?

ひとみ:近いです。

ミサト:じゃあ、そっちに行こうか。

ヒカル:そうですわね。

ひとみ:そろそろ暗くなってきてますけど。

ヒカル:じゃあ、松明をつけよう。

わたし:ひとみ。こっちから話しかけちゃえば?

ひとみ:あ、そうか。兵士が明かりを見つけて「そこの者たち、そんなところで何をしてるんだ?」って。

ヒカル:まじーよー。政情不安定なら疑われちゃうよ。逃げよう。一同:そうしよう。

ひとみ:え???、じゃあ、兵士が追いかけてきます。「まてー、怪しい奴めー」って、砦の中からさらに3人の兵士がでてきます。

サカエ:あー、追ってきた。よし、戦うぞ。剣を抜く。(いかん。ついこの間まで、10回以上のキャンペーンを生き抜いてきたキャラクターをプレイしていた上に、ここ一か月プレイをしていないもんだから、強かったキャラクターの思い出が美化されている。強さゆえに力を過信して、何も考えてないッ!、正面きって戦ったら、プレイヤー・キャラクターが死ぬッ!)

わたし:よしこちゃん。兵士6人を相手にして、ペーペーのパーティが勝てるわけないから、時間の節約のために「つかまりました」にしていいですよ。

ひとみ:じゃあ、つかまりました。

サカエ:え?、もうつかまっちゃったの?

わたし:戦闘したけりゃどうぞぉ。

ヒカル:私、戦えないわよ。

ミサト:私もー。

マユミ:私も。

サカエ:あ、やっばー。「こりゃあ兵隊さん。どうしたんですか?」

ひとみ:今更そういっても怪しいだけなので、全員牢屋に入れられてしまいます。

ヒカル、ミサト、マユミ:えー、私たち何もしてないよー。

ひとみ:え?。

わたし:サカエを止めなかったんだから、同類と見られてしまったわけです。

ヒカル:「偶然、ここまで一緒だっただけです。非力な女の身で、剣を抜いた男をとめられるわけもありません」

ひとみ:えーっと。

わたし:言いわけが、兵士が信じて当然そうだったら、認めればいいんです。どっちかわからなければ、ヒカルの交渉ロールを振ってもらえばいいんですよ。サイコロで決めるんです。

ひとみ:では、交渉ロールを振ってください。

ヒカル:失敗しました。

サカエ:「仲間だろう。おめぇだけ助かろうなんて、ひどいじゃないか」

ヒカル:「うるさいねぇ、頼まれたから来てやっただけなのに」

マユミ:私も交渉ロール振ってもいい?

ひとみ:どんな言いわけですか?

ミサト:「おじさーん、私らは関係ないよー」

マユミ:「とおちゃんの酒代を稼ぎにきただけだよー」

ひとみ:振ってください。

ミサト:失敗した。

マユミ:おもいっきり失敗した。暴発した。

わたし:暴発するのは呪文だけだってば。

ひとみ:こうゆうときは、どうしたらいいんですかー。

わたし:うーん、じゃあ私はNPCをやります。兵士Aね。「隊長。こいつらどう見ても、不法侵入者のようには見えません。ちょうどよい機会ですから、ひとり牢に残しておいて、ほかの奴らに食料庫をあらすゴブリンを退治させてはいかがでしょう」

ひとみ:「それはいい考えだ。よし、誰が残る」

サカエ:「あ、俺が残ります」

一同:それじゃ絶対勝てないでしょうッ!

ヒカル:だめか。

 

「ゴブリンのいるダンジョンの前で」

 結局、マユミが残ることになった。マユミは鍵開け特技を持っているのである。これさえあれば、普通の鍵なら開けることができる。

 とりあえず、3人はゴブリンのいるというダンジョンの前にきていた。

サカエ:「さーて、行くぞ」

ミサト:「ちょっと待てよ。いぶり出したほうがいいんじゃないのか?」

ヒカル:「何に火をつけるの?」

サカエ:「一度にどばーっと出てきたら、しまつに困るぞ」



  ~中略~



ひとみ:ダンジョンの入り口から、ゴブリンがこっちを見てますけど?

サカエ:なんでわかったんだ?

ひとみ:長い時間、ダンジョンの前でワイワイダべっていたからです。

サカエ:そりゃあ勿論小声でやってたんだよー。ダメ?

ひとみ:ダメ。

ヒカル:隠れますッ!

ミサト:私も隠れるッ!

ひとみ:もう見つかっているんです。

ヒカル:じゃあ下がります。

ミサト:私もッ。

ひとみ:タイマツは誰が持ってましたっけ?

ヒカル:私が持ってます。

ひとみ:じゃあ、目だってます。

サカエ:よし。俺も男だ。戦ってやろうじゃないか。

 しかし、いくらゴブリン相手とはいえ、3対1では勝てるはずもなく、マスターは手加減しましたが、あっというまに闘士サカエは気絶してしまった。

ひとみ:ゴブリンは、サカエを見おろしてヨダレをたらしています。

ミサト:「サカエー、今助けてやるからなー」

 身軽な旅芸人ミサトはゴブリンの攻撃を避けまくり、サカエより長く戦った。長く戦っただけで、結果は同じだった。

ヒカル:「こうなったら私も戦いますッ」

 神官ヒカルは戦う間もなく、あっさりやられた。

 こうして闘士サカエ、旅芸人ミサト、神官ヒカルは常に1対3で戦い、ゴブリンの夜食となってしまったのであった。そのころ、牢の中の旅芸人マユミは、ハッと気づいていた。

マユミ:私、鍵開け特技も、鍵開け道具も持ってるんだった。

 こうして、明るい将来を夢みた冒険者たちは、夢見ただけで終わってしまったのであった。



 はあぁ~~~。