(C)hosoe hiromi
◆細江の趣味◆ザブングルのこと

戦闘メカ ザブングル

好きだから言わせて!

 ザブングル(Xabungle)とは、ウォーカー・マシン(以下WM)というメカ(足がついてて、それで移動するメカ。人型とはかぎらんのだな。おおむね大型の戦闘用のWMは人型なのだが。)に乗って、荒野広がるゾラ(と呼ばれる地球)で、西部劇(っぽいこと)するロボットアニメ。
 ザブングルはその主役メカ(でも、途中ギャリアという機種に、とってかわられる)ってわけです。
 日本サンライズ(当時)の、(ガンダムで有名な)富野監督の作品。
 でも1クール目は、イデオンの映画の制作と重なったせいか、富野カラーが薄くなってます。富野カラーがはっきり出てくるのは、エル・コンドルやアコン・アカグの話あたりから。
 痛快な活劇、熱くてドライな連中。とくに1クール目は。
 ギー(浮きバイク)でびゅんびゅん地表を飛び回りWMを襲う少年少女の強盗団、サンドラット。
 熱い日差し。乾いた風。土埃。
 つまるところの、「乾いた大地」(エンディングのタイトル)。
 そして、そこに生きるキャラクターたちの、生命力の輝き。
 私たちのモラルや常識から外れてはいるが、彼らは彼らのモラルや常識を持っていた。
 決して、インモラルな連中ではないのだ。
 その手の設定は、見せようとすればくどくどし、面白くなくしてしまうものなのだが、ザブングルはゾラという世界を私に見事に見せてくれた。
 ビエル司政官のファンになるのは、ずーっと後。ザブングルはとにかく、キャラクターたちが生きていた。
 私に物語とキャラ立てを教えてくれたのが、ザブングルだった。

それは、こんなふうに始まった。

 荒野に、ジロン・アモスという少年が倒れている。顔がまんまるの、少年だ。
 そのすぐそばで、ラグ・ウラロという少女が率いるサンドラットが、ホバギーでWMを襲っている。
 乾いた大地の上を、強い日差しに照らされながら、WMの大人たちと、ホバギーの少年少女たちが戦う。舞い上がる砂煙、青い空、風きるホバギー、ロボットというより、作業機械であるところのWM。
 ジロン・アモスは、(助けが必要なのは自分の方なのに、しかも常識で考えたら悪物であるところの)ラグ・ウラロを助け、あろうことか「女は大事にしろと、親父に言われた」なんぞと、抜かしてみせる。
 なにしろこのゾラ、とことんドライでないと、やってけない世界。赤の他人を用もなく助けるヤツなんか変人だし、何されたって3日で帳消しという不文律もある。ラグたちのやりかたも、ゾラでは「ガキばっかりなのに、偉いもんだ」と認められるし、逆に孤児を育てているマリア・マリアは「変人」の烙印が押されてしまう。
 だから、サンドラットの面々はジロンの言葉に大笑いするが、いつも頭目として仲間をひっぱっていく役割だったラグ、生きるために強い女を演じなければならず、自分自身でもそうだと思ってたラグは、この言葉にコロッといってしまう。
 ……いーっつもそーなんだ。後のアコンの時も、カタカムのときも、他のことには抜群のバランス感覚を持ってるくせに、ラグは自分を女と認め、優しい言葉をかけた男に、コロッとまいってしまう傾向があるのだ。(ラグに惚れてるサンドラットの少年ブルメは、とんとそれに気づかないようだが。)
 とはいえ、はいそうですかとラグもジロンにメロメロ(どーゆー表現だ)になるわけでもないが、ジロンのケガの面倒を多少見てやるという、破格のサービスをしてやるわけだ。
 で、ジロンは運び屋のキャラバンでWMを盗み、親の敵を討つという目的があるのだが、親が殺されたのが3日よりも前の話。これまたゾラの一般常識をはずれまくってると、サンドラットの面々はあきれかえる。
 でも、ラグはジロンが気になるのと、サンドラットのためにWMを手に入れたいとか考えて、ジロンに協力してやるわけだ。サンドラットのナンバー2のブルメ君は、ちょっとばかり面白くないけど、
 最初、運び屋の娘エルチが、文化カブレのお嬢様で、父親にベタ可愛がられてるってんで、これを誘拐してWMと交換……と考えたものの、エルチのナイフさばきに撤退(ブルメのヘアバンドの縫い目は、このとき切られたためにできたのだ)。
 夜中、忍び込んで盗み出そうとして、ジロンはあえなくエルチに捕まってしまう。

 とまぁ、こんなふうに始まるわけ。……記憶だけを頼りに書いてるけどね。

魅力的な、ザブングルの世界。

 この間、世界もキャラも、実に立っていた。ほんのワンシーンで、この世界を描いてみせてくれた。
 たとえば、バザーが終わる。運び屋のキャリングのランドシップ(以下LS)、アイアンギアー(以下IG)を中心にした町が、いきなり動きだし、それぞれの目的地へと出発してしまう。
 人々は私たちの目から見てドライで、人の命は安いけれど、けっしてサイバーパンクの世界の人々のように、枯れたり、ギラついたりはしていない。だけど無気力じゃない。逆に気力に満たされている。世界には、閉塞感ではなく、開放感で満たされている。

 そんな中で、主人公ジロン・アモスは、異質である。
 一週間前に殺された親の敵を、未だ追い続ける、熱いやつである。
 彼は、彼らよりも私たちに近い存在だ。視聴者である私たちが、感情移入できるように。
 ジロンにとって、両親が殺されたことを、親の敵を、たった3日で忘れろという世間の常識の方が、非常識なのだ。
 だけど、まわりは「それが当然」という顔をしている。なにしろ、それによって生きているのだから。
 サンドラットの強奪だって、その掟があるからこそ、奪って3日逃げきれば、誰はばかること自分の物だと、言えるのだ。
 そして、一方で掟を無視しながら、ジロン・アモスはその掟に則って、ザブングルを自分の物にしようとする。
 そう、ジロンは自己矛盾していて、身勝手なヤツなのだ。
 ラグやエルチが、一時はものめずらしさに興味を持っても、こいつの「女を大事」の底の浅さなんて、たかが知れている(新たな追いかける対象が出てきてみろ。すぐに前のは忘れるから)。長続きするハズがないのだ。
 なのに、どうしてエルチは最後にジロンに日和ったか?(TV版)
 ジロンは走っとるだけで、なんも成長はしなかった。
 中身がガキのまんまでも、身勝手でも、矛盾してても、女にもてる……。ザブングルは男のファンタジーなのかもしれない。
 でも、ファンタジーというジャンルの物語は、人間の内面を象徴的に現したものであって、そこに物語が持ち込まれれば、必ず変化する。そういう意味では、ジロンが主役のザブングルは間違いなく、ファンタジーではない。
 ま、誰もザブングルのことを、ファンタジーだなんて、言わないけどさ。
 だけど、困ったことに周りの連中は成長した。
 その成長したエルチやラグがジロンに引かれ続ける。それこそが、ザブングル最大の破綻といえよう。

 じゃあ、ザブングルっていう物語は、なんだったかってーと、キャラものだった。
 ひとりひとりのキャラクターは、抜群に光っていた。
 ただ、その光を集約すべき主人公が、ズレていた。
 最初のころは、まだいい。自己矛盾していよーが、身勝手だろーが、ジロンはジロンだった。
 その「走る」に現される行動力が、ドライに割り切って、一歩引いて生きてる連中の中で、熱く輝いていた。
 生き延びるために計算してやってる連中の中で、後先かまわず突っ走るジロンは、魅力的だった。
 だが、ジロンは物語から、つまり彼にとっての現実から、何も学ばなかった。学ばない上で、主人公ゆえに、おいしいシーンやセリフ、役まわりだけに恵まれた。でも、物語が進むにつれ、整合性がなくなってきてしまった。
 なりふりかまわず、親の敵を追いかける。なりふりかまわず、さらわれた女(エルチ)を追いかけ、取り戻そうとする。それを貫いたなら、別のタイプのいい主人公になれただろう。だが、一貫性がなかった。
 偉そうにして、偉そうなことを言いうが、言動が一致しなくなった。なのに周囲の連中はジロンに一目おいた。見てる私に、なぜジロンが大きな顔ができ、一目おかれるのか? を納得させられなかった。
 考えられるのはただひとつ。「主人公だから」
 つまり、甘やかされてたのだ。
 周りのキャラクターは、すでにキャラクターが立ち、自由に動きまわりはじめていた。こうなると、成長は免れない。
 成長した周辺キャラクターと主人公のギャップは、日ましに大きくなっていった。
 幾度となく、そのズレを修正しようとした形跡を、物語から読み取ることができる。
 ズレはどんどん大きくなってはきたけれども、それでもまだ、すでに完成していたキャラクターたちの魅力、そして世界の魅力は、私を後半まで引きつけ続けていた。

 その経過を、追ってみる。

 IGではキャリングが死に、ブレーカー(戦闘員全般を、ブレーカーという。おおむねWMに乗る)頭のホーラが造反して逆にIGから叩き出され、その結果ジロンやサンドラットが、IGに乗り込むことになる。
 そしてジロンの敵、ティンプは、オーバーロードであるところのイノセントの仕掛け人で、彼の攻略によりIGは他の運び屋から狙われるはめになる。もっとも、ティンプが動かなくても、キャリングとホーラ(&その配下のブレーカー)を失ったIG(またはその交易路)を狙うヤツなんて、いくらでもいただろうけど、とにかくティンプはそれに火をつけてまわったわけだ。
 で、イノセントとティンプがつながってるゆえに、ジロンもイノセントと敵対してくわけなんだけど、ここで注意。なんでジロンに、イノセントとティンプのつながりがわかったか……・。これがまた、簡単なんだな。ティンプのWMには、イノセントのエンブレムが、デカデカと書かれてるからだったりする。
 なんのこたない。ティンプってのは、シビリアンを引っ掻き回す仕掛け人なんて偉いものではなく、ただのエサなのだ。ジロンみたいなヤツをひっかけて、現状を引っ掻き回すための。でもって、それを計画したのが、イノセントのビエル司政官。ただし、イノセント本来の目的には合っているけれども、現イノセントたちの総意ではなく、どっちかってーとイノセントたちは現状維持とゆーか、自分たちの平和だけを望んでるし、ビエル自身も、自分がやってることが、イノセントにとんでもない不幸(滅亡)をもたらすことは知っていて、かなり悩んでたし、部下のドワス君は反発するし、スタンは巻き込まれて死んじゃうし。
 でも、ビエルってば、本質はマッドサイエンティストなんだよ。たとえパンドラの箱とわかっていても、それを開けずにはいられないタイプなのだ。あいつがいいヤツで、人類の夢のために身を捨ててどーこーした……、なんてのは、誤解だよ。絶対に。ビエルの認識としても、イノセントのプロジェクトを遂行することは、非人間的な行為なのだ。だから、「人としてあるべきか、イノセントとしてあるべきか」というセリフは、でてきゃしませんって。
 でまあ、ジロンはイノセントの聖域(ドームと、緑地)をぶっこわして、IGは運び屋家業もできなくなり(運び屋が売るものは、イノセントが生産している。銃も、WMも、LSも、食料のうちの大半も)、放浪しはじめるわけ。
 で、エル・コンドル話があって、アコン話があって、ホッター老人とトラントラン(イノセントが作り上げた、ゾラの環境に適応するための人類改造種、第一号。なお、トラントランという言葉は、トランスフォーメーション(transformation)あたりから来てるんだろう。変異種ってなわけだ。なんか、トラントランは知能が低いから失敗作とされたっていう説が広まってるが、見るかぎり彼らは村を作り畑を作り家畜を育て、集団で行動している。シビリアンの場合、そういうことができるのは、一部(ジロンたち)でしかなく、知能が低いってのは、アメリカインデアンが白人と異なる文化を持っていて、差別ゆえに貧しい暮らしをしているのを、貧しい=劣っているいうのと同じくらい、バカげている。よく見ればわかるが、ザブングルには彼らの居住区がでてくるのに、こういう場所にいるはずの、女子供の姿がない。となれば、遺伝的なことで、彼らには女が生まれず、よって種として成立しない失敗作と解釈するほうが、自然ではないか。)の話とか、ハナワン(人類改造種その2。知能もあり、集団生活もできるけど、いかんせん陽の光に弱く、泥の海の洞窟の中で暮らしている。環境への適応という点で、失敗とされたようだが、このくらいの欠点、克服できそーな気もする)の話とか、まあいろいろあるわけだ
 で、ドタバタしているうちに、エルチがイノセントに、さらわれてしまう。ちなみにさらったのは、ホーラの部下、ゲラバ・ゲラバ。
 エルチかラグをさらえという命令で、ホーラとしてはエルチに惚れてるから、ラグをと思ってたんだけど、ゲラバとしては、エルチの方がさらいやすかったってわけ。彼女、イノセントかぶれで、ビエル様ポッ! だったし。
 で、なんでイノセント(つまりビエルが。……ビエルのしたことは、おおむね「イノセントが」と、言われる。)が女をさらわせたか?
 簡単に言えば、ティンプに換わるエサにするためだ。
 この直後、ビエルは、イノセントのトップリーダー、アーサー・ランクに状況を説明する間もなく、エルチを政敵ビラム(イノセントの目的はおいといて、自分たちを守ろうという、つまりカシム派)の手に残し、失墜、失踪する。
 おおむね世間では、これは見た目通りに取られている。が、考えても見てほしい。エルチがビラムの手にあるかぎり、IGとジロンというトゲは、正確に自分たちの成長を妨げているカシム派に突進するのだ。
 考えすぎだって?
 じゃあ、これはなんだ?
 イノセントは、ゾラを4地区に分けて管理しているらしい。これは登場したイノセントの制服パターンからの推測。イノセントの制服は、縦割りでデザインが違い、横割りで色が違う。
 そして、アーサー・ランクのいる、イノセントの中枢ヨップは、ヨーロッパにある。ビエルはアメリカあたりで、ビラムはアジア・ユーラシアあたり、残るアフリカあたりが、マツミだろう。といっても、海が干上がって地形が変わってるから、ほんとに「あたり」でしかないが。
 ともかく、ビエルはずっと、エルチを連れ、IGをひきずって、西へ西へと移動していた。
 ビエルの担当地区は、東側でヨップと隣接してるのに、である。
 アーサーに会いたきゃ、東へ飛べばいいし、通信だってできるのだ。報告したければ、なんぼだってそのチャンスはあった。
 それに、実質権力を握ってるのがカシムであって、アーサーが傀儡にすぎないことぐらい、ビエルが知らないとは、思えない。
 それどころか、万一アーサーとビエルの会見が成立でもしてみろ。ティンプを使ってシビリアンを殺したのも、エルチの洗脳計画を立てたのも、つまりシビリアンにひでーことしてるのが、実はカシム派のイノセントたちではなく、ビエルだってことにアーサーが気づいたら、どう思うか! (と、このへんアーサーファンと、私の解釈は、大きく異なるのだが。)(そーゆーことばっかりしてるから、ヨップの地図がジロンの手にわたったのまで、ビラムたちはビエルのせいだと、思っていた。出てすぐ退場の、マツミ司政官の手柄なのに。)

 話しを戻す。

 でまあ、さらわれたエルチがビラムの手元で、IGをつぶすための戦士として洗脳されてるころ、IGはシビリアンの反イノセント組織、カタカムをリーダーとした、ソルトとの関係を深めていく。
 これがまた情けない組織で、まともに戦えもしない。略奪もできないし、稼げない。資金の出所といえば、わたしゃビエルしか、思いつきません。他に誰が出すっての? 誰がソルトという組織によって、益を得るっての?
 あとは、エルチエルチでジロンは突き進む。んならいーんだけど、ティンプを追いかけていた時のようながむしゃらさはない。時にがむしゃらだったりもするのだが、すぐ立ち止まってよそ見をする。
 イノセントの方は方で、歴史をひもとき「ぐんたい」なるものを作ってIGに対抗しようとする。で、その頭にエルチをすえる。
 敵も味方も、これまで出てきた連中が、このイノセントの軍と、IGに、集まってくる。
 と書くとすっきり話がまとまってるよーに見えるけど、実際にはまとまってない。
 ビリンとキャローン、マリア、ビエルとブルメ、アーサー・ランクの話しがどんどんからんで、それぞれはいい話なのに、ベースとしっくりこないのだ。
 たとえば、ブルメがIGを飛び出して、失踪中で死にかけたビエルを拾い、さらにIGを飛び出したジロンとファットマンと合流し、Hポイントを攻略にいって失敗、変貌したエルチに驚愕し、ビエルが死に、敗退するという話が、何話かにわたってある。(ビエルは、堂々としているので気づかれていないが、負け男だ。いれば、そっちが、必ず負ける。)
 これ自体、とくにブルメ・ビエル関係は、私がビエルファンということをさっぴいても、人気があるエピソードだ。が、そのHポイント攻略の話、「忍び込み大作戦」に、ビエルが延々、イノセントの秘密を喋べくる(ゾラが地球のなれのはてで、天変地異のさい宇宙に逃げたイノセントは、新しい環境に適応できず、新人類としてトラントラン~シビリアンを作った)シーンがある。これは、ビエルファンの私が見ても、いらない。逆に、Hポイントから撤退した後、再びジロン、ブルメ、ファットマンは、IGに合流するんだが、IGに帰還するシーンがない。次の回で、すでに合流済みなのだ。
 連中が戻ってきたということについて、あるいはビエルからもたらされた情報について、IGはひと騒動あったはずなのだ。
 ……他のエピソードの場合、出てったヤツが戻ってくれば、ちゃんと描いてあるのにな。
 このころのキャラクターたちは、みんなイライラしていた。いちど立ってしまったキャラが、失った自由に対して、憤っているかのようだった。
 憤ろうが、イライラしようが、話しが停滞しようが、物語としてはかまわない。問題は、その後それに決着がつけられなかったということだ。
 ぎゅっと煮詰まった後の大ブレイク。大カタストロフがない。
 見た目、派手な戦闘と勝利で決着がつけられているように見えても、その中でそれぞれのキャラクターの動きが、見られない。
 まるでそれまでの経過を一切無視して、大ボスと戦闘して、勝利したら、今までのことは全部ちゃらで終わらせる、へたなRPGのシナリオのようなものだ。

 で、終盤、アーサー・ランクが本格的に活躍しはじめたころには、ズレはいたましいほどになる。
 アーサー・ランク。主人公たちと同世代で、しかも繊細で病弱、超美形のイノセント・トップリーダー。
 アニメ誌も制作者も、アーサーが大人気という幻想を抱いたのではないかと思う。まあ、人気はあったし、ミーハーは騒いだ。でも、ミーハーってのは、騒いでるから騒いでるんであって、実態は、騒ぎほどじゃなかったんじゃなかろうか?
 実際、何度人気投票(ザブのFC、ヨップマップで)をやっても、アーサーはほとんど上位に食い込まなかった。
 一位はだんトツで、ブルメ。それからまん中の上に、ビエルがいる。アーサーや、そして主人公ジロンは、その下だ。
 サイレント・マジョリティの好みと、騒いでるミーハーの好みは、違う。ミーハーがアニメ誌にのせられたのか、アニメ誌がミーハーにのせられたのかはわからないが、とにかくあの騒ぎはバブルだった。
 大真面目にやってるからこそ面白かったギャグ消え、ゲラバのレオタードといった浅いものになった。あれほど強い個性を持ったキャラクターたちは平板になり、時に混同までした。ラグ、ビリン、マリアはミーハー娘で、ティンプとホーラがごっちゃになった。
 その後ろでブルメが、しょーがーねーなーと、頭をかいていた。
 まるでキャラクターたちみんなが、自分の人格を放棄して、話しを終わらせるためにぶつかり合いを避けはじめたかのようだった。
 そしてエルチはアーサーが命を引き換えにして洗脳を解き(頭と頭を伝線でつなぐと、人格が転移するっての、どーにかならんのかね)、IGとソルトは、イノセントの中枢をぶっこわし、ジロンはWMで、その何倍もある巨大ミサイルを受け止め、最後にジロンとエルチがくっついて、終わった。
 つまり、それらしい大騒動を、ムリヤリ盛り上げて終わらせ、それらしいエンディングをくっつけたような気がしないではない。
 現システム壊したっていったって、シビリアンは迫害されてたわけでもなんでもない(いじめてたのは、ビエルだけだ)し、搾取されてたわけでもなく、実質イノセントに養われてたんだよ? あんたらこれから、どうやって生きていくの?
 巨大ミサイル受け止めたのも、ノリと勢いだけでいったようにしてあるだけで、私はそれを納得するほど、ノリもしなかったし、勢いもかんじなかった。
 攫われたのがラグだったら、ジロンはラグとくっついたわけ?
 アーサー・ランクは、イノセントは生体改造でドームを出てシビリアンと共に歩むことを考えてるみたいだけど、そんなことできるんなら、これまでのイノセントの苦労は、なんだったわけ? 遺伝子レベルの改造がいるはずよ?
 多くのファンが描いたその後では、シビリアンはイノセントかが技術を学びつつ、なーんてことになってたけど、そんなことが簡単にできるの?
 私は、無理だと思う。
 ジロンたちは、壊しただけだ。作るための破壊じゃない。現体制の反乱分子にひっかけられて、現体制を壊しただけなのだ。
 ビルディング・ロマンじゃなく、カタストロフ・ロマンなのだ。
 ゴジラが東京タワーを、壊したよーなもんだ。
 もっと正格に言えば、ザブングルは、自意識がでてきた幼児が、親の支配をはねのける話だ。
 幼児ならまだしも、ここまでやれば、生活能力がない若者が、親にむかって暴力をふるってるみたいなもんだ。
 大人へと成長するなら、マリア・マリアや、ホッター老人が垣間見せてくれたような、イノセントに極力依存しない方法もあったはずだ。
 (ホッターはダムを作り、マリアは畑をつくっていた。いずれも、ジロンたちとの接触で、失われたようだが。)

 たぶん、イノセントはシビリアンとの接触によって、急速に滅びるだろう。その後、シビリアンは手厚いイノセントの保護を失って、それでも過酷な環境の中で、生き延びていくだろう。どれだけ文明を、維持できるかは、わからない。WMもLSも失われるだろうけど、全部が消えることはないだろう。銃ぐらいは作り出せるに違いない。

 ……ま、いーけどね。カシムやっつけて万々歳でも。映画なんか、アーサー生き返ってポーズつけちゃってる現状ではさ。

 とかいいつつも、私はザブングルが好きなのである。