(C)hosoe hiromi
◆細江の趣味◆ザブングルのこと

戦闘メカ ザブングル

個人的趣味と推測と独断と偏見によるエッセイ集

キャラクター編 あ~

アーサー・ランク

 美しい外見を持つが、中身はジロン・アモスと同じ根を持つ。
 人格的にも。そして、物語の中の立場や、その役割においても。
 彼の最大の不運は、アニメ誌に騒がれてしまったことにある。
 この作品中、もっとも不幸なキャラクターといってもいいだろう。

 実際に、彼には人気を得る素養はあった。外見もいいし、性格もいい、行動力もある。さらに病弱で、儚げである。
 これと思ったら、それしか見えなくなり、突っ走ってしまうあたりは、ジロンと同じだ。
 そして現実以上に美形として、そして人気があるとしてアニメ誌に持ち上げられ、その虚構が作品に反映されていったことが、彼の不幸であった。
 人格的成長という点で、他のキャラクターに遅れを取ったジロン・アモスが主人公であるという理由だけで説得力のない役得を得ていたのと同様、アーサー・ランクは美形という理由で、説得力のない役割を割り当てられていたのではなかろうか?

 アーサーという存在自体は、急場しのぎの付け焼刃キャラクターでは、なかったはずだ。
 なぜならビエルが逆ガルマと、アーサーの逆シャア(逆襲のシャアにあらず)がセットであると見ることができるからである。
 しかし、アーサーの活躍時期は、シナリオに多々なる破綻が見られる時期と一致しており、数々の矛盾が、ジロンの側には役得の形で現れたように、アーサーの側には無理な設定の形で現れている。
 アーサーのせいではないとはいえ、それゆえアーサーは、イノセントの象徴であるよりも、ザブングルの破綻の象徴でもあった。

 実は体内に、外気に耐えうる薬が。は、まだいい。
 彼がエルチの洗脳を解くことができるだけの専門知識を持っていたとか、アイアンギアーの設備でそれが可能だったとか、ヘルメットをかぶって電線をつなげるというチープな方法とか、そうするとカシムの人格がアーサーに移るといった設定。
 あるいはイノセントの、シビリアンが世界の主となれば、自分たちのアイデンティティが失われることに対する苦悩を無視したストーリー展開。
 そして究極は、映画における生きかえり。
 こうしたことをやるな、とは言わない。
 だけど、説得力がある方法で、やってほしかった。
 女の子に持てる描写にしてもそうだ。
 あれだけの素質があれば、女の子たちがキャーキャー言うという設定だって、かまわない。
 だけどそれには、バックにバラ背負って出てきた美形というだけでなく、だからモテるという優しさだとか、強さといった、がさつなシビリアンの男たちとの違いっていうものを書いてほしかったし、女の子たちだってそれぞれ微妙に異なる反応をして欲しかった。
 たとえば今まで男運の無かったラグにとって、ひ弱で頼りにならなさそうなアーサーは、いったんは範囲外である。
 しかし彼女の場合、きっかけとしてひ弱なアーサーが、それでも精一杯ラグを気遣い、優しい言葉を掛けるというシーンがあれば、その瞬間アーサーにコロッといったって、不自然ではない。
 そしてラグは、ラグなりに、アーサーの役に立とうと考え、アーサーのいるアイアンギアーを守るぞ! とばかりに、戦闘にも力が入ったりするわけである。
 ブルメは、いつも通りヤキモキするわけだけれども、アーサーの大人っぷりをブルメに見せて、アーサーならしかたがないかと、一歩引くようなシーンを入れ、ブルメもまた成長したことを、表現する。
 さらにアーサーが、ラグにとって、一過性の存在であることも、ブルメが感じているとすれば、さらによし。アーサーに喜んでいるラグのために、ブルメもまたアーサーを守るというふうに、まとめていく。
 ……とりあえず、私はこういうのが、好みである。
 が、アーサーは美形だった。
 実際に美形だったが、実は繊細すぎて、ちょっと崩れると美形でもなんでもなくなってしまうのだけれども、美形という役柄だった。
 美形ギャグの中心となり、ザブングルの持っていた矛盾を全部背負わされてしまった。
 つめの甘さをごまかすために、美形だからと、引っ張りまわされた感がある。
 ジロンのそれは役得であったけれども、アーサーのそれは役得ですらなかったのではないだろうか?

 なお、名前はクラーク軌道(静止衛星軌道)の提唱者、アーサー・C・クラークからきていると、思われる。

アコン・アカグ

 ラグを女扱いしたため、ラグに惚れられる、2人目の男。小型ランドシップの船長で、ホーラの手下だが、手下に甘んじるつもりはなく、チャンスを狙うしたたかな男だった。しかし運は彼に味方せず命を落としてしまった。ラグが惚れた中で、一番いい大人の男だった。
名前は、アコンカグア山からきていると、思われる。

イノセント(種族)

 我々の直系の子孫。地球が大異変に見舞われたさい宇宙に逃げ延び、ふたたび帰ってきたとき、地球と、そして人類自身の変異により、そこに住めなくなっていた。地球の方は海が干上がり、人類の方は免疫を失っていた。たぶんそれだけではなく、オゾン層などの破壊や、大異変のどさくさ時の細菌兵器の使用などが推測できる。なお人間の免疫は、無菌状態では案外簡単に、失われてしまったりもする。
 ともかく、人類はイノセントを名乗り、地球をゾラと呼び、再び人類を大地に根づかせるべく、遺伝子レベルで人を改造し、まずトラントラン族を作った。がこれは失敗。ついでハナワン族を作ったが、これも気に入らなかった。三番めに作られたのが、ジロンたちシビリアン。シビリアンは順調に数も増え、計画は成功したかに思われた。
 しかし、人類が生き延びるためには、どうしても疲弊したイノセントそのものの退場が必要だったのだろう。シビリアンがイノセントに庇護され続ければ、自立することなく滅びてしまいかねないからだ。また、自分たちを再改造してシビリアンになるといっても、イノセントの現体制がなくなることには違いなく、そしてドームの中で世代を重ねたイノセントは、すでに現状維持を望むようになっていた。
 画面で活躍する小数のイノセントを除けば、無気力状態に陥っているといってもいい。
 計画に忠実(アーサー・ランク派)と言われるビエルでさえ、自分の行いを人の道に反していると感じていたようだ。
 イノセントとは、純真無垢といった意味。手を加えられていないということだろう。




イノセントの仕掛け人

 イノセントが雇っているシビリアン。シビリアンの間に、争いごとをまきおこす。ゾラという名のビーカーの中身をかき混ぜる、かき混ぜ棒。

イノセントのガードマン

 イノセントのドームにある大型コンピューターから遠隔操作されている、ヒューマノイドタイプのロボット。個人的に好みで、これのコスプレをしたことがあるが、夏にやるもんじゃないな……
 イノセントはガードマンをドーム外の現場で指揮するとき、ガードマンと同じ姿をすることがある。

エル・コンドル

 エルチを助けた文化の香りがほのかにする美形。で、エルチに惚れられる。なんか遺跡を「先祖代々のもの」として守ってるが、もちろんシビリアンで、つまりそれは勘違い。エルチを助けはしたが、気はなかったようだ。古いタイプのWMオットリッチでホーラと戦い死亡。
 名前はエル・コンドル・パス(コンドルは飛んでゆく)からきていると、思われる。

エルチ・カーゴ

 三人の主役のひとり。成り上がりの運び屋キャリング・カーゴの娘。文化マニアで面食いのお嬢さんだが、ナイフさばきの腕は確か。サンドラットに攫われそうになっても、難なくかわす実力の持ち主。プロポピエフ一座のスポンサー。
 文化的なイノセント(思いこみ)にあこがれ、イノセントのビエルに惚れるが、その気持ちはビエルによって利用され、洗脳され、イノセントの軍の司令官として、ジロン・アモスと敵対する。後に、アーサー・ランクによって洗脳を解除され、最後の戦いで失明し、ラストでジロンとくっつく。面食いがジロンとくっついたのは、失明したからだという説があり、深く納得した。