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世界についての妄想

ハニースデイの歴史

 気になったのは村人のセリフのひとつ。
 昔はもっと村は大きかったのに、ベルーニに取り上げられた?っぽいことを言っている。
 
 可能性その1 昔はメシス駅あたりまでハニースデイだったが、駅と鉄道をつくる際にに、土地を取り上げられた。
 可能性その2 人口減により大きな村を維持できなくなった時に、強制的に村を小さくさせられた。
 
 1だとかなり昔のことで、2だと昔といっても割合最近のことになるはず。
 
 ハニースデイって、ちょっと無理がある場所に畑があるんじゃなかろうか?
 斜面の上の方から水が引けるかどうかによるだろうし、ゴブ他魔獣から身を護るための立地っていうのもある。周辺の環境だって、わからないところがいっぱいある。けど、もうちょっと農村作るにはよさそうな土地が、あの地方にはあるように見える。
 
 で、こんな風に考えてみた。
 
 かつてそこに、ただ一人草花を愛する少女が住んでいた。
 天からベルーニたちがやってきて、そしてニンゲンたちを集め、過去の遺物を掘り出し、鉄道を建設しはじめた。
 少女の花畑は、ニンゲンたちの暮らしの片隅へと追いやられたが、ただ静かにそこに在り続けた。
 
 昔ベルーニが鉄道工事をはじめたときできたニンゲン労働者の宿場町が、ハニースデイの原型だ。
 資源はポンポコ山から掘り出されたのだが少々遠い。しかも長期間暮らすにはあまりにも不向きだ。
 そのため、ポンポコ山と鉄道建設のベースポイントが、別に必要となった。
 南東地方の労働力は、いったんハニースデイに集められ、そこから鉄道へ、採掘場へと振り分けられた。
 同時にハニースデイは、その労働者たちの寝床や食料の供給地ともなった。
 
 やがて鉄道の建設が終わるころには、ベルーニのニンゲン支配の構造もまたできあがっていた。
 ハニースデイは、採掘場と鉄道の中継地点としての名残のみ残し、労働者の余剰人口は再び各地に追いやられ、ニンゲンは無断で住居地を替えることすらできなくなった。
 一時期多数の宿舎が建設され、労働者でごったがえしたハニースデイだったが、建物は資源として活用され、採掘場向けの畑を耕す人々と、採掘場に働きに出る者たちの家族のみが、そこに残った。
 
 さらに月日が流れ、南東地方全体が労働人口減に悩まされるようになってきた。
 特に採掘場がナイトバーンに支配されるようになると、重い年貢の取り立てと労働者を奪われた南東地方の農村は、急激に崩壊しはじめる。
 ハニースデイが残ったのは、ポンポコ山と直接関わる中継地点でもあったからだ。
 他の農村が潰れていくなか、たとえニンゲンを使い潰すつもりでも、とりあえず今食べさせておくものが必要だ。ハニースデイの負担は、ますます重くなる。
 ハニースデイが負担に耐えきれず潰れるタイムリミットは、まもなくだった。
 もし潰れてしまったら? 採掘場にいる者たちに食べさせ続ける必要が、どこにあるだろう?
 ベルーニの終焉もまた近づいている。ナイトバーンが長らくポンポコ山を維持する必要など、どこにもないのだ。
 
 手入れされない段々畑は、崩れ落ちる。
 労働力を集約させなければ、農村は維持できない。
 広すぎる村を、魔獣から護ってやる余裕も、Ubで疲弊しつつあるベルーニにはもはやない。
 できるのはARMを渡し、自衛させることだけだ。
 べルーニ兵は、労働者を失ったハニースデイに、村の縮小を命じる。
 村は、ゴブの侵入を防ぎきれないでいる。
 
 村の規模に比べ、ハニースデイに立ち寄る渡り鳥は、少なくない。
 村人たちも、渡り鳥だからといって、それを理由に邪険にはしない。
 少なくとも、あからさまには。
 彼らは、現金収入をもたらしてくれるだけではない。
 多くがこの地方出身の、故郷を失った者たちなのだ。
 出稼ぎや奉公と同じく食べるために、あるいは労働者狩りを逃れるために、故郷を離れた者たちだ。
 だが振り返れば故郷は消え、見失った家族や友人の手がかりを求め、この地方最後に残った村に立ち寄っている。
 
 草花を愛する少女は、小さな花畑の世話をしながら、時代の移り変わりを眺め続けている。
 ハニースデイの村人たちは、産まれ、泣き、喜び、苦しみ、怒り、死んで行くが、彼女の邪魔をすることはない。

 

ギルド

 まず、見習いに採用されるためのテスト。
 ディーンは「ちょっくら魔獣退治してこい」だったわけだが、やっぱこれが基本だったりする。
 が、どこの魔獣でもいいわけではなく、「カメラが設置してある場所」に限定される。
 身代わり受験を防ぐためだが、「面白い絵が撮れたら放送する」こともある。
 「テレビ番組に放り込まれ、いろんなチャレンジさせられる」のも定番だ。
 番組制作のネタにされているわけだ。
 また危険なだけで意味のない、あるいは面倒なだけで下らない、または後味のわるいお使いイベントもある。
 このへんで、ギルドに夢見た理想と現実の違いに嫌になり、途中でやめてそのまま渡り鳥になってしまう者が出始める。
 さらに筆記試験もある。
 試験は一律ではなく、試験結果やギルドとベルーニの都合によって、次の試験が決まる。
 
 これらの試験では知力体力判断力精神力といった実力だけでなく、反社会的かどうかが調べられている。
 つまり権力者であるベルーニに対して従順かどうかだ。
 
 クリア条件を満たせば、従順でないという理由で試験に落ちるわけではない。
 むしろ後に実力に見合わない無理難題が与えられ、命を落とすように仕向けられる。
 なぜならばギルドの存在理由の一つが、ベルーニにとって面倒なニンゲンをピックアップし、消すことだからだ。
 ベルーニがやりたがらないが、ニンゲンにやらせても構わない、面倒でやりがいのない仕事が、どんどんギルドに回ってくる。
 
 試験に受かると見習いハンターパスが与えられ、一律支給品のARMに代わって、ハンター用のARMが支給される。
 そしてある程度仕事を選ぶことができるようになる。
 とはいえ選べる仕事の中身は、ベルーニのための汚れ仕事が大半で、憧れのゴーレムハントは勝手にやれといった状況になっている。
 一応ギルドでは、見習いハンター向けの各種講習会を、有料で開いている。その内容は、ゴーレムの見つけ方、掘り出し方、体術、捕縛術、似顔絵の描き方、ギルドに提出するレポートの書き方など、多岐に渡る。が、大半の内容は、支払う金だけの価値はないお為ごかしだと言われている。
 見習いになってからも、特に任務が与えられることもある。任務は引き受けなければならない。任務は試験よりもなお、危険で面倒で、ギルドが掲げた理想とはかけ離れていることが多い。
 そのため任務を達成できず、あるいは任務を放棄して、渡り鳥になる者も多い。
 また一定期間に一定の成果を上げなければ、見習いの身分は無効になるため、それにより渡り鳥になる者もいる。
 
 無許可のニンゲンの旅は違法であるため、渡り鳥の立場は無法者だ。
 だが、ギルドとハンターシステムは、むしろ大量の渡り鳥を生み出している。
 そしてある程度世間を知ったハンターにとって渡り鳥は明日の我が身であり、渡り鳥にとっては昨日の自分であるため、それぞれの立場だけで争いになることはない。また、単に渡り鳥というだけで賞金がかかるわけでもないので、渡り鳥の逮捕はハンターにとっては無意味であるし、各地の保安官にとっては、地元のトラブルを解決してくれるのは、ハンターよりもむしろ渡り鳥である。
 
 ギルドから姿を消した者たちの大半が、故郷に帰らず渡り鳥になっている。
 大成したハンターも、大金を手にして引退した後、故郷に帰ることなく、どこかで悠々自適で暮らしていると言われている。
 だがそれは表向きの話で、大半が消されたか、強制労働所に送られている。
 反社会的であるとか、ギルドの秘密を知り暴こうとしたというだけでなく、特に理由などないことも多い。
 ハンターが逮捕した賞金首も、表向き全員処刑されていることになっているが、強制労働所送りになっている。
 強制労働所で、処刑されたはずの賞金首と、逮捕したハンターが顔を合わせることもある。
 いきなりギルドに騙されて送り込まれた見習い未満や、裏社会に顔が利く悪徳ハンターでもなければ、早々にリンチされ命を奪われることも少なくはない。
 
 ちなみにチャックは、非常に従順と見なされ、講習会は下らないものも含めて受けていた。ギルドに関する悪い噂は知っているが、半ば耳をふさぎ、半ば過渡期である今はそうした歪みもしかたがないと、自分を納得させている。

 

ライラベルとトゥエールビット

 ライラベルには、ビッグなチャンスが転がっている。

 と、夢に見る人(ニンゲン)は少なくない。
 なにより見た目が華やかだ。他の街とは違い過ぎる。
 テレビ局の射幸心を刺激する視聴者参加番組の影響も大きい。
 ニンゲンにとって、唯一の出世の登竜門であったハンターギルドがあることも大きい。
 仕事も選ばなければ、なにかしらあって喰うに困らない。
 いや、ゴミ漁りだけでも、食べてしまえる。
 宿に金をはらわなくても頭上には天井があるし、テレビまで見放題。

 同じ豊かでも落ち着いたトゥエールビットともまた違う。
 トゥエールビットの豊かさは、その住民たちがしっかりと掴んでしまっている。
 住民が掴み、維持し、育てた豊かさで、この街に縁のない者が、唐突に割り込める街ではない。
 だからこそ、トゥエールビットは落ち着いた街になっているとも言える。

 二つの街は、ギルドと軍とにたとえられる。
 いつでも飛び込みで試験を受けられるギルド。ハンターになっても、活動はほとんど制限されない。
 軍は巨大なシステムで、軍人となったら自由は大きく制限される。
 べつにトゥエールビットは、軍人の街ではないのだが、RYGS家の印象やら、それなりの名声と財産を得た隠居軍人が多いためか、そういう印象がある。
 テレビ局と政治の世界にたとえられることもある。
 テレビは素人を、一気にスターへと持ち上げる。それが、ライラベルだ。
 だが政治の世界は、政治家ばかりで固まっていて、容易に人を近づけさせない。
 そしてギルドとテレビ局、そして軍と政治の関わりは、それぞれに深い。
 ハンターやその見習いが、局の番組にかり出されることなど珍しくないし、引退した政治家と引退軍人が個人的に交流しながら現役に影響を与えている。
 そもそもギルドはその成り立ちからしてテレビ局を有する情報局の下位組織だったし、一応独立してからもテレビ局との腐れ縁は、切れてはいない。
 引退した軍人同様、引退した政治家も、数多くトゥエールビットに居を構えているし、だいたいRYGSも軍人だけでなく政治家も輩出している。

 立身出世を望む者にとって、特にまだなんの実績もコネもないニンゲンにとって、落ち着いているが保守的で新規参入が難しいトゥエールビットに比べ、変化に満ちたライラベルの方が魅力的にうつるのも、当然だろう。

 だが、変化は好ましいものばかりではない。
 大きな幸運には、もっと大きな不運がある。
 ハイリターンは、ハイリスクによって、支えられている。
 ライラベルの密閉されたドームの内側には、幸運と不運の風が、嵐のごとく吹き荒れている。
 よい風に乗ることができれば一気に吹き上げられるが、失敗すれば一気に叩きつけられる。
 強い風に乗り、高みに上り詰めるほど、危険もまた大きくなっていく。
 それでもニンゲンには、他に現状を抜け出す手段が、ほとんどなかった。

 稼ぐだけなら、渡り鳥の方がまだ割がいい。
 だが渡り鳥は、この世界ではアウトローで、先と展開はなかったのだ。
 ディーン・スタークが現れるまでは。
 はじめて彼が、渡り鳥のままで世界を変えようと考えた。

 世界が変わってからも、その格段に充実したインフラと密度から、ライラベルとトゥエールビットは、当面特別な街であり続けるだろう。けれどその先のことは、誰にもわからない。

 

ハニースデイの生活

 個人的には、高度成長期以前の東北地方みたいなイメージ。

 あの集合住宅にはトイレも台所も風呂もない。食事は食堂、トイレは外で共同、風呂と洗濯は湖かタライ。冬場だけ燃料を使ってタライにお湯を差すけど、その燃料もぎりぎり節約。もちろん風呂は毎日なんてない。井戸もなくて、飲料水も湖の水を使っていたかもしれない。

 水まわりだけ、ベルーニが来てからポンプで湖の水をくみ上げられるようになった。
 それまでちょっと水不足になると、桶で水をくみ上げて斜面を登り、畑に水をまくという重労働。
 基本段々畑なので、耕作機械よりも牛馬と人手。
 それでもあんな場所に住み着いているのは、平地のど真ん中だとゴブに襲われるから。
 あるいは、ベルーニが鉄道建築や採掘場の基地としてニンゲンをつれてきて作った村だから。
 今はもうないとしても、平地に村があったとしても、おかしくはない。

 出稼ぎは、以前も普通にあった。
 採掘場、他の町への奉公、それから季節渡り鳥も。
 ベルーニに無断で居住地を離れる渡り鳥というよりも、狩りに出ているイメージに近いのかもしれない。
 ベルーニがやってきてからも、あるていど取れていたバランスが崩れて村が崩壊しだしたのは、最近のことだ。

 

ハニースデイの主

 WA5のニンゲンは、ベルーニの許可がないと、勝手によその土地に引っ越すことができない。

 どうも渡り鳥の放置っぷりを見る限り、引っ越し禁止なだけで、旅はさほどでもないようだ。
 列車さえ使わせなければ遠い所まではいけないってことだろうし、それでもゴーレムハンターになりにとか、新しい仕事を探して他へ旅をするというのは、ありのようだ。行商人もいるし、他の土地に商売に行っている者もいる。
 建前禁止だけど、自転車の歩道走行程度に、黙認されているのかもしれない。

 だが、無断引っ越しは禁止で、許可がいる。

 ゴウノンのように豊かで規模が大きく自主性が認められている町なら、仕事も多少幅があるだろう。
 リンゴ酒を造るばかりじゃなく、リンゴ農園だってあるんだし。
 ミラパルスのような場所だと、実体はともかくベルーニに雇用されてるという建前ではあるようだ。
 これがハニースデイになると、農業をする以外にない。
 そして年貢の支払いが定められている。
 年貢が払えないと、労働力で納めなければならなくなる。
 これは農奴といって、差し支えないだろう。

 いや、飢えても飢えるに任せてしまうあたり、一応持ち主の財産として家畜並には食料を手当されたりしていた農奴以下かもしれない。もっとも、飢えるに任せて使いつぶす領主も少なくはなかった。それこそ飢えて死んじゃっても、知ったことではない。

 じゃあ、ハニースデイの領主は誰だったのか?
 候補は二人。
 一人はナイトバーン。ポンポコ山同様、あのあたりの権利をナイトバーンが手に入れていた。
 そして建前はニンゲンのため、俺たちの暮らしのためとい言いつつも、そこから上がる利益をむさぼっていた可能性は十分にある。
 ナイトバーンなら住民がどれだけ飢えようと、全部死なせる気でいたのだから、ほったらかしなのも当然だ。
 鉱山での仕事と年貢は連動していた。
 連動させることができる、という時点で、ナイトバーンの影響力が伺える。

 なら、ナイトバーンがその権利を手に入れる前は、誰が持っていたのか? あるいは、なぜそれを委託したか、手放したのか?
 地域に密着した領主っぽい存在として登場するのは、RYGSしかいない。
 あるいは、他にもいたが、その領主っぽい存在は、単に画面内に登場しなかっただけなのかもしれない。
 持ち主はいたが、Ubで領地の管理どころではなくなった、という可能性もある。
 逆に、まったくいない可能性もある。ベルーニ社会そのものが所有者だった。

 話を戻してもう一人。どこの誰ともわからぬベルーニでなければ、RYGSだ。
 領地がトゥエールビットのみでなければならない、という理由はない。
 トゥエールビットが農業都市ではない以上、食料はどこからか仕入れなければならない。
 そしてダイアナが倒れ、ファリ両親が亡くなり、ファリドゥーンも軍務で忙しくなると、領地の面倒など見ていられなくなる。そこでダイアナは穏健派ということもあって、ニンゲンのナイトバーンに丸投げしていた、という可能性はどうだろう?
 ファリは、まさかナイトバーンがあんなことをするとは考えないだろうし、ヴォルもファリに対して穏健派にも理解があるような顔をして、その計画を後押ししたりして。その後ははっきりいって、そんな農村のことを気にかける余裕など、まるでなかった。
 というわけで、ナイトバーンに委託されていたとしても、ナイトバーン以外に委託されていたとしても、本来はRYGS。
 ならば、ニンゲンのメイド一人を雇うのに、わざわざファリドゥーンが駅までとはいえやって来た理由にも、少しはなると思う。