世界についての妄想
希望を排斥する村
なぜヴォルスングは、ハニースデイで排斥されたのか?
単純にハーフだから、であるならば、なぜ一度は受け入れられたのか?
気味が悪いといったって、ハニースデイには、ベルーニさえ不気味がる、年を取らない少女がいるのに、こっちはスルーである。
ベルーニとのトラブルを恐れてならば、最初から受け入れなければいい。
Cardinal Starのあきら様の、セレスドゥのカラーリングに似ている、特にあの肌の色はヴォル以外に見られないことから災厄を連想させたという説には、うならされた。
それは各地の人里に長くとどまれなかった理由の一つであるかもしれない。
けれどそれでもなぜ、特にハニースデイで、ニンゲンとベルーニの壁を越えようとし、ジョニー・アップルシードに言及した少年のことが、特に人々の記憶に残り、なんとなくではなく、はっきりと排斥されるという事件が起きたのか?
チャックが疫病神を自称したとき、充分不幸を周囲にまき散らしているにもかかわらず、なぜそれは否定されたのか?
ハニースデイの村人たちは、特に希望を持ち込む者を嫌っている、いや恐れているからではないだろうか?
しかも、ニンゲンとベルーニの問題限定で。
ハニースデイの村人たちは、ベルーニを嫌っている。けれど、悪口は言うもののあきらめて、状況に流されている。いや、「あきらめなければならない」と、自ら言い聞かせているようにすら見える。
それはつまり、幸せを望んでいないわけではないのだが、抱いた希望を否定され絶望することを、恐れているということだ。
これは、虐げられたニンゲンの典型であるチャックの状況にも、ことさらはっきりと現れている。前向きに行動を起こすたびに、それは徹底的に否定されるのだ。
チャックは、希望たろうとしない。逆に絶望を自称する。チャックが排斥されないのは、「自分たちはチャックよりマシ」と思わせてくれる存在だからではないだろうか? 周辺の消えた村よりはまし、行方不明になった者よりはましというのが、村人のささやかな慰めだからではないだろうか?
そしてチャックは行方不明になり、なんか偉そうになって戻ってきたのに、すぐさまそれが全部フイになるようなヒドイ目にあう。それが村人にとってのチャックであり、自分たちの姿なのだ。
それと真逆なのが、ナイトバーンだ。時期はヴォルスングの来訪より後だが、ナイトバーンはベルーニにも認められる地位を築き、そして村の若者たちだけでなく、世界中の若者に希望と憧れを抱かせた。
だが実際に彼がこの地方にもたらしたのは、今までよりなお悪い絶望としか言いようがない。
そしてさらに後に、ディーンたちがやってきた。
ニンゲンとか、ベルーニとかほざく、希望たらんとする者が。
これにチャックが加わっても、村人たちはこう思うだろう。
「失敗して、もっとヒドイ目に遭うんだろうなあ。でもそれがチャックだし」
時期的に、希望を携え村を訪れた三人の中でヴォルが一番古い。そして実際に災厄をもたらしたのは、ナイトバーンだけだ。なら、そのことがヴォル排斥の理由になるはずがない。
けれど、ちょっと多すぎないか?
何の特産物もない、このあたりじゃ一番大きかったとはいえ、周辺の村が全部潰れた後にかろうじて残る程度の農村に、なんでこんなのが次々現れて、ニンゲンとベルーニの関係とか言い出すんだ?
ハニースデイには、ヴォルスング以前にも、なぜかこんなのが、次々現れてたんじゃないのか?
その上で、村人たちは希望を見せつけられては裏切られるということを、ヴォル以前にも散々繰り返し体験してきたんじゃないか?
それでも郷出身のナイトバーンについ期待しちゃって、裏切られ、だもんだからポンポコ山の人々を解放したディーンたちさえ、ベルーニに仕返しされる、悪いことが起きると邪険にしたんじゃなかろうか?
そして、そうしたことが繰り返されたのは、毀された祭壇に一番近い村だったからじゃないんだろうか?
毀された祭壇は、大量の負の思念が貯まっていた。そのレギオが、それぞれ独立した人であったとき、ハニースデイに立ち寄った可能性は高かったんじゃないだろうか?
そして立ち寄った理由は、ディーンたちこそゴブ退治だったけれど、もし過去のアヴリルが、ミーディアムがニンゲンとベルーニを結びつけるキーアイテムだという話を残していたら、それを知った希望となることを目指す者たちは、ミーディアムにかかわりの深いあの遺跡を、訪れたのではないだろうか?
最初村人は、やってきたヴォルを、反対する人もいただろうけど、基本的にハーフでかわいそうだな、ぐらいの気持ちで、受け入れたんじゃなかろうか?
けれどヴォルが、ベルーニだニンゲンだ希望となるんだ! なんて言い出したもんだから、慌てて排斥したんじゃなかろうか?
っていうか、怨念の収集があの場でなければできないのか? とか、まさか怨念を収集し作り上げるためにあの施設があったんじゃないのか? とか、だとしたら作ったのアヴリルだろう、とか。
あ、いや、ループ中のアヴリルは、訪れる以前のことなんか知らないんだし、基本的にあれば自分の記憶をよみがえらせるためのものみたいだし。あれがなくても怨念は、別の所でもっと悪い形で収束したかもしれないんだし。
貧しい村で、生まれ育ったキャロル。
教育を得られる機会も、その賢さを生かす機会もない。
彼女が疎んじられたのは、その秀でた、けれど役に立たぬ賢さ故であったかもしれない。
その頭のよさが彼女に見せてしまう現実。
手のつけようのない貧困、労働者狩り、残った住人たちのモラルハザード。
崩壊しつつある村。
彼女の賢さが、彼女を可能性へと導く。
ここにいても、確実に滅びに巻き込まれるばかりだ。だから、飛び出せと。
それは小さな小さな、無いも同然の可能性。けれど、 そして彼女は、その小さな手を伸ばし求める。
その手を取ったのは、チャパパンガ。
キャロルもまた、幸運と希望を求めたがゆえに、周囲の怒りを買ったのではないだろうか?