世界についての妄想
魔獣論考
あるいは魔獣とUbとベルーニとキャロル、そしてファリドゥーンとニャー(やるせないを使う猫系魔獣)の関係と、
なぜヴォルスングはレギオ化したか?
一言で言えば、もしかして魔獣って、Ubの同類なんじゃないかな? と、妄想してみた。
公式設定によると、魔獣にはおおまかに、三種の由来があるらしい。
まず昔からいた猛獣のたぐい。
次に、ベルーニによって乱された生態系が生み出したもの。たぶんベルーニが持ち込んだ生命は、ベルーニだけではなかったはずで、小は微生物やウイルスのたぐい、大は家畜や植物まで、いろいろで。
異星の生命体も連れ帰っていたかもしれないし、古代ファルガイアから持ち出して一緒に帰還した生命体もあっただろうし。
けど帰還した生命体も、現代ファルガイアの同種とは、ベルーニ同様微妙に違っていて。
その交雑から、新たな種も生まれていたりして。
そしてロクス・ソルスのクレイドルで生体実験中起きたバイオハザードに由来するもの。
中でも三つ目が、ことさら危険であるらしい。
この三つ目。
ベルーニがどういう生体実験をしたかわからないが、動植物ニンゲンベルーニすべて等しく切り刻んでたんじゃないかと思う。
Ubが何であるかを突き止め、対処法・治療法を見つけるために。
となれば同胞に対しても、遠慮することなどできなくて。
切り刻んで、すりつぶして、混ぜ合わせて、投与して、結果を調べて。
やってるうちに、バイオハザード。
そして生まれた最強魔獣。
思うに、Ubに抵抗できる生き物なりベルーニを作りだそうとして、それに感染すると魔獣になる、魔獣因子みたいなものを作り出してしまったんじゃなかろうか?
で、それが実験動物に感染し、魔獣化したのでは? と。
この実験動物には、集められた様々な生物やニンゲンやベルーニ、そしてそれらを合成した人工生物や、極限まで体を機械に取り替えた生物までいたりして。
魔十因子が、科学者や、療養中の人々や、医療スタッフを、実験動物と区別する理由はなくて。
そうやって生まれた魔獣こそ、ロクス・ソルスから出なかったとしても、魔獣因子は避難するベルーニたちと共に、ファルガイアへともたらされた。
こんなシーンを、夢想してみる。
ロクスソルスから、避難民を乗せた天路歴程号と同型の宇宙船が、ファルガイアの宇宙港に到着する。
だが着陸に失敗し、宇宙港は炎上する。
脱出に成功したものの怪我をしたベルーニたちが運ばれていく。
そして消火活動中のベルーニ兵が驚愕する。炎の中から魔獣たちが現れたのだ。
魔獣たちとベルーニ兵との戦いが始まる。だがそれは、ロクス・ソルスで生体実験を受けた者たちの、なれの果てだったのだ。
魔獣たちは倒される。
すでに魔獣因子は、脱出した者たちだけでなく、戦ったベルーニ兵たちに、感染し、潜伏していた。
だが、だからといって、ポンと魔獣化するわけではない。魔獣化するのは、ファルガイアの生物と混じりあった生命体だけだったのだ。
だからこそ純粋ベルーニは、魔獣化しないキャリアとなり、魔獣因子を広めてしまった。
そしてヴォルスングもまた……。
怨念の力だけではなく、ロクス・ソルスという地において、それによってレギオ化したのだ。
魔獣因子はロクス・ソルスが発生源で、そこからベルーニの移動と共に拡散し、地表に広まっていったと考えられる。
そして二番目の、ベルーニによって乱された生態系から生まれた魔獣にも感染し、三番目になることで、ファルガイアの魔獣も危険性が増していった。
この魔獣因子が、時と共に魔獣を強力にしていくと考えれば、ロクス・ソルスの魔獣が桁違いに大型で凶暴で、一方カポブロンコのようなベルーニのやってこない辺境の隠れ里の周辺の魔物が弱いことにも、納得できる。
だが、ディーンたちが旅立つ前、カポブロンコあたりでは見かけなかったはずの強そうな魔獣が現れた。
これも、魔獣の大型化・凶暴化が進んでいることの現れだろう。
で、一人で村を飛び出したキャロルのことを考えた。
ニンゲンにはベルーニから、一律にARMが支給されるらしい。
カポブロンコでは12歳でだが、カポブロンコは隠れ里であるため、ベルーニからの支給はなく、自力調達していた。
だがこの12歳が、一般的な支給の基準と考えられる。
ともかく普通の人、つまりそんじょそこらのおばさんでも、村や町を出て駅なんかにいたりできるのは、ARMを持っているからだろう。
チャックも14でポンポコ山まで行ってる。パイルバンカーはハンター見習いになったときに手に入れたそうだから、持っていたのは12で支給された別のARMだろう。
しかし、ならキャロルはどうしたのか?
この支給時期が一般的なものであるならば、キャロルが村を飛び出した時、彼女はARMを持っていなかったはずだ。
一週間放浪の末、ぼろぼろになって教授に拾われたらしいが、その一週間、どうやってしのいだのか?
まず、魔獣は近年加速度的に危険性が増したので、キャロルが村を飛び出した時は、さほどでもなかったと考えてみた。
プロヴェクタス駅で、チャックはブランク・ミーディアムを渡す際、この先は凶暴な魔獣が多いからと言っている。つまりライラベル周辺だ。
だが現実には、ハニースデイ周辺ほどではない。もちろん、ディーンと出会ったミラパルスと比較しての話だったと考えるのが、順とうだろう。
だが、こう考えられないだろうか?
チャックは村を飛び出してから、各地を旅していたようだが、ハニースデイだけは近づかなかったはずだ。1年前のハニースデイは、もっと安全だったのだ。つまりキャロルが、同じ地方にある村から飛び出した時は、さらに危険性が低かった、と。
この可能性は、幾分あると思う。
クレイドルの事故は3年前。キャロルが村を出たのが2年前で、チャックが1年前。
ハニースデイからライラベルへ上京したチャックが、ライラベル周辺の魔獣は凶暴だという印象を持ったとしても、おかしくない。
だがこれだと、ミッシーズミアの子たちの説明がつかない。
カポブロンコ同様に、ベルーニにとって員数外であるミッシーズミアの子供たちも、ここに流れ着く前にARMを手に入れてないならば、入手の機会はまずないだろう。
だが、わりと近いとはいえ、ライラベルまでゴミあさりにでかけたり、もっと足を伸ばし駅まで出張り、なにやらしている。
キャロルは、そしてミッシーズミアの子たちは、ARMなしで、どうやって魔獣から逃れたていたのか?
実のところ逃れられてないのがだ、見えてないだけなのかもしれないが、にしたってミッシーズミア自体に魔獣がいるのだ。ARMもあっても極小数で、魔獣避けは簡素なバリケードしかないのに、なぜ彼らは生き延びているのか?
ここで発想を逆転させてみた。
ARMが魔獣の驚異を退けているのではなく、魔獣を呼び寄せているのではないか? と。
これが結構、ぴったりくる。
魔獣因子に汚染された魔獣は、Ub研究から生まれたといってもいい。
ロクス・ソルスは、ベルーニがUbから逃れるための地だが、そこにベルーニ自らUbを持ち込み、それを研究した。
発症者は、結局クレイドルで眠らなければならないのだから、Ubの影響が小さいロクス・ソルスに行けば健康が回復する、というわけでもなさそうだ。悪化しない、という程度ではなかろうか?
で、Ubから生み出された魔獣因子にも、Ubと同じ性質か似た性質があるとすれば?
ベルーニではなく、ARMを襲う性質があるとすれば?
ARMを持っているから、魔獣を退けられるのではなく、ARMを持っているから、魔獣に襲われるのだ。
そう考えると、つまりこうなる。
ARMを持っていなかったら、魔獣に襲われない。
正確には、もともとファルガイアにいた猛獣のたぐいは関係ないから、襲われにくい、となる。
そう考えれば、昔のキャロルや、ミッシーズミアの子たちの生存確率は、高くなるのではなかろうか?
だが、確かめることはできない。確かめるためにARM抜きで荒野を渡ってみようと、誰が考えるだろう?
魔獣に襲われればARMに頼るしかないというのに?
二年前、キャロルが、荒野を彷徨っている。
水も食料もARMもない。
もとよりサイズもあわず、お古でぼろだった靴も壊れてなくし、傷ついた足を引きずりながら。
渡り鳥のルートも、目指すべき人里も知らず、ただ彷徨っている。
ただ立ち止まることができないために。
魔獣に襲われたが、どうにか逃げられた。魔獣は、追ってはこなかった。
だがその幸運も、尽きたらしい。
今キャロルを取り囲んでいる魔獣は、いままでのものとは明らかに違う。キャロルをターゲットとして……食料として見なし、逃がす気はなさそうだ。
野犬たちの群れ。
足の痛さも忘れ、背を向け走り出すが、あっというまに追いつかれ、噛みつかれ、押し倒される。
もうダメだと思ったのに、最後の時はやってこなかった。
キャンキャンと、犬の声が遠ざかっていく。
薄れる意識の中で、キャロルは大きな手に包まれたのを、感じ取った。
さて、ARMは古代文明の遺物をベルーニが再利用したものだ。これはゴーレムにも、そして鉄道の機関部なんかにも言える。
というかファルガイアの機械的な資源は、たぶん古代文明の遺物しかないんじゃないかと思う。
つまり魔獣は、そういうものに対して敵愾心をもち、集まってくる。そしてその使用者を襲う。
そう考えれば、発掘場や遺跡に強力な魔獣が巣くっていることに、納得がいく。
たぶん鉄道がその被害を免れているのは、いやもしかしたら免れていないのかもしれないけど、ほとんど高架だからであり、もしかするとそのための高架なのかもしれない。
だが魔獣は、使用者のいない遺物を襲って壊すわけではない。
でなければ、ライラベル自体や、埋蔵ゴーレムなんかも、あっというまに魔獣の餌食になるはずだ。
となればこうなる。
魔獣は、ARMを使う精神力に反応して襲ってくる。
ベルーニが、魔獣を退けるためにニンゲンに貸し与えるごとに、魔獣因子はまき散らされ、ニンゲンがARMを使うことで、魔獣を呼び寄せている。
こう考えると、ゲーム冒頭のシーンはこうなる。
アヴリルが強力なARMを持ち込んだから、それまであのあたりじゃ見られなかった強い魔獣が、あのタイミングで現れたのだ。
……魔獣が出た時点で、まだあのARM使ってないけどさ。まあ、持ってるだけでもARMは反応してたりしてさ。
ここでふと、やるせない攻撃をしてくる魔獣のことを、思い出した。
なんでファリドゥーンのまわりには、やるせないにゃ~、をする魔獣(勝手にニャーおよびネコブレスと呼んでいる。)が多いんだ? これは気のせいなのか?
ニャーが出るのは、ファリん家遺跡、クレイドル、改造実験塔だっけ? まあライラベル周辺とか、バスカーんとことか、例外は多いんだけど。
ファリ周辺というより、ベルーニ周辺に多いんじゃないか?
で、魔獣は、ベルーニかニンゲンかに関係なく、ARMを介して発露される精神力を食べている、と考えてみた。
ニャーは、やるせない気持ちが好物なのだ。あるいはやるせない気持ちを食べるから、ニャーなのだ。
Ubで滅びを目前としたベルーニたちの周辺には、だからニャーが出やすいのだ。
もうファリなんか精神力大きいから、ニャーまっしぐら、大満足! で、精神力を食べられてファリはどんどん落ち込んでいく、と。
……なら、なんでカルの塔にも出るんだ? というのはおいといて。
こうなると、なぜ艦長ともあろう人が、似合うARMを持ってなくて、ファリ戦で素手戦闘し、奪ったファリのARMをすぐポイしちゃったのか、そして教授も素手なのかの理由にもなる。
そのことを知ってたか、感じてたのかは知らないけれど、ロクス・ソルスに出入りしてる最強級ベルーニ二人が共に素手なわけで。
マザーもロクス・ソルスだから、ヴォルや四天王も出入りしてるわけで。で、ARMも使って粛正しちゃったりしてるわけで。
逆に言えば、あの時ぐらいしかARM使ってないはずで。
そこらへんは、置いといて。
Ubがベルーニを排斥するように、魔獣はベルーニ文明を排斥する。ベルーニか、ニンゲンかに関係なく。
そして魔獣は、ARMを介在として発揮される精神力に引かれ、襲うことでそれをさらに引き出し、喰う。
ロクス・ソルスの魔獣が凶暴なのも、発生源に近いというだけでなく、クレイドルで眠る人々の精神力を、喰っちゃっているからだ。
クレイドルの大惨事は、魔獣が療養中のベルーニの精神を、根こそぎ喰っちゃったという事件だったのだ。
一方ニンゲンも、ARMを与えられることで、魔獣に襲われるようになり、生き延びるために強い精神力が必要とされていった。
百年前は、ベルーニとニンゲンの精神力の差は、もっとあった。けれど今は、縮まりつつある。
で、置いといた「ヴォルはマザーでARM使ってるし、ゴーレムの指揮権奪って暴れさせたのもヴォルが精神力でやってるんじゃない? マザーから。なのになんで魔獣に襲われないの?」
それは、レギオだから。ってのはどうでしょうね?
魔獣なんだから、魔獣に襲われないんですよ。
最後に、なんでそれが、魔獣という形を取ったのか?
またすっ飛んだこと言いますが、魔獣っていうのは、ベルーニから見たニンゲン、あるいはベルーニを受け入れてくれないファルガイアそのものだと思うのですよ。
いきなり逆で、すみませんが。
Ubがベルーニを拒絶する。
形を与えられたUbが、新種の魔獣。
そしてそれに形を与えたのは、ベルーニ。
ベルーニには、受け入れてくれない母なる星や、迫る滅びの足音や、ニンゲンに対する、恐怖や嫌悪や憎しみがあると思う。
ニンゲン側も、ベルーニに対して、同じような感情を持っている。
ベルーニとニンゲンが結ばれるなんてことを考えれば、ベルーニから見れば「下等生物と?」であり、ニンゲンから見れば「オモチャにされるだけ」でしかなく、とにかくありえない、気持ち悪いという感情が、先に立ってしまった。
感情論で、混じり合うのは気持ち悪い。
互いに相手のことを、まさに魔獣みたいなものだと思ってた。
とりあえず、強大なベルーニの精神力。
クレイドルで療養中のベルーニたち。
ニンゲンにとってUbは無害だ。
ならベルーニが、そのニンゲンの特質を獲得できればいい。
頭ではそうわかる。けれど感情は、混じり合うのは気持ち悪い。ニンゲンには(ベルーニじゃないものには・魔獣には)なりたくないと、拒絶する。
ベルーニにより乱された生態系が生み出すような、魔獣にはなりたくない。
けどそれを受け入れなければ、生き延びられない。
死ぬのはいやだけど、魔獣になるのも嫌だ。
新しい魔獣が、そんなベルーニの精神力を喰ったとしたら?
あるいはそれが、魔獣因子を誕生させる一因となったとしたら?
っていうか、ここまできたら魔獣因子こそが、Ub対策としてベルーニが作ろうとした、ベルーニとファルガイアの生物(つまりニンゲン)を混ぜ合わせるための、何かだったんじゃないか? と。
ここで一つ、立ち返りたい。
魔獣って、ベルーニやニンゲンがそう呼んでるだけの話です。
悪の存在じゃないはずで。
魔獣だと思うから魔獣なわけで、つまりは異質なものと混じり合い、新種(知らない未来が展開されること)へ恐怖が、魔獣というレッテルを貼っているだけで。
ニンゲン側もそういう異質なものを気持ち悪がるのは、同じなわけで。
怨念は、そういうのを乗り越えようとして挫折した人々の思念の集合体だそうで。
その怨念と、混ざり合うのは気持ち悪いという恐れ。
それと魔獣因子が合わさった。
ヴォルスングは、魔獣じゃない。
けど、周囲の人々の精神力を、とりまとめる力があった。
そういうのは、たぶん元からベルーニ側にはあったんじゃないかと思う。
けれどハーフであることと魔獣因子、そして怨念が、強力に後押しした。
実は怨念がヴォルを喰ったんじゃなく、ヴォルが怨念という精神力を喰った。
本来は、もちろん人を襲って精神力を取って喰うわけではない。それはカリスマとして発揮されるような代物で。
けどベルーニの、そしてニンゲンの、双方への負の感情や、その軋轢の固まりみたいな怨念を、喰ってしまった。
Ubはベルーニ限定だけど、滅ぼしたいっていうのはつまり、そういうことなんじゃないか? なんて。
精神力の食い過ぎで、ヴォルスングはレギオになったのではないか? と、そんなことを思ってみたり。
はい、穴だらけです。
けどこの手の捏造を元に話を作るときは、この程度で断定口調で書いてます。
本気にしないように。