たたたと走って、けつまずくのは、キャロルにとっては日常茶飯事。
その結果、チャックの胸に飛び込むことになったのは、単なる偶然。
とりあえず転けずにすんで、運が良かったはずである。
顔を突っ込んだところも、これまたあつらえたように、彼の胸のファー。
「大丈夫かい?」
笑いながら、チャックはそのまま固まっているキャロルに声をかける。
とたんにキャロルは、バネ仕掛けの人形のように飛び退いて、そのまま尻餅をつく。
「チャックさん!」
「なんだい?」
「それ、臭いです。ものすごく」
革のジャケットにくっついているファーだから、洗えるもんじゃない。
しかも位置的に、食べこぼしなんかも、つきやすい。
「まあ、そうだろね。慣れちゃったけど」
こうしてチャックは、またもキャロルに叱られた。