(C)hosoe hiromi
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ミーディアム

 手にした月のミーディアム。
 すこし薄汚れた、ありふれたミーディアムに、月の力を込めたもの。
 ブランクに戻して書き換えることができなくて、故障してるんだと思ってた。
 壊れてるんだし、月は疫病神のボクにはお似合いかなと、ずっと手元に置いていた。

 このミーディアムが特別で、それを手にしたボクも選ばれたなんて言われたら、少し期待しちゃうじゃないか。
 かえすがえす眺めていると、薄汚れた外見さえ、オリジナルの年期に見えてくる。
 夢みたいな話だとは思ったけれど、そんな夢でもボクは飛びついた。
 疫病神だなんて話より、それこそずっと夢があるしね。

 みんなと合流したとき、もしこのミーディアムを持っていなかったとしても、何も変わらなかっただろう。
 選ばれた一人でなかったとしても、ボクはディーンを、選ばれたみんなを手伝い護る気になっていた。
 けれどこれがなかったら、あったとしても月でなかったら、ボクは耐えきれなかったかもしれない。
 すぐに、お前は疫病神なんだぞと、つきつけられてしまったから。
 誰かと一緒にいればその人たちに、災いをもたらすのだぞと。

 けれどボクを選んだのは災厄をもたらす月のミーディアム。
 だからボクは、疫病神であること込みで選ばれたんだと、みんなと一緒にいてもいいのだと、そう考えることができたんだ。

2010/05/01
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