手にした月のミーディアム。
すこし薄汚れた、ありふれたミーディアムに、月の力を込めたもの。
ブランクに戻して書き換えることができなくて、故障してるんだと思ってた。
壊れてるんだし、月は疫病神のボクにはお似合いかなと、ずっと手元に置いていた。
このミーディアムが特別で、それを手にしたボクも選ばれたなんて言われたら、少し期待しちゃうじゃないか。
かえすがえす眺めていると、薄汚れた外見さえ、オリジナルの年期に見えてくる。
夢みたいな話だとは思ったけれど、そんな夢でもボクは飛びついた。
疫病神だなんて話より、それこそずっと夢があるしね。
みんなと合流したとき、もしこのミーディアムを持っていなかったとしても、何も変わらなかっただろう。
選ばれた一人でなかったとしても、ボクはディーンを、選ばれたみんなを手伝い護る気になっていた。
けれどこれがなかったら、あったとしても月でなかったら、ボクは耐えきれなかったかもしれない。
すぐに、お前は疫病神なんだぞと、つきつけられてしまったから。
誰かと一緒にいればその人たちに、災いをもたらすのだぞと。
けれどボクを選んだのは災厄をもたらす月のミーディアム。
だからボクは、疫病神であること込みで選ばれたんだと、みんなと一緒にいてもいいのだと、そう考えることができたんだ。