最愛の女を失った時、俺は自ら闇を求めた。
復讐しようと決めたのさ。
俺が掲げた灯火は、背負った闇に明るく映えた。
それまで俺に見向きもしなかった連中が、羽虫のようにうようよと、希望の灯を手にするつもりで、俺の手の中に集まった。
俺を信じた連中を、俺は嗤って裏切った。
ニンゲンの絶望だけが、乾いた喉をうるおした。
だが俺の渇きは、絶えることがついぞなかった。
ああ、お前らにもう先はない。苦しみぬいて死ぬだけだ。
別にお前ら自身に怨みなんぞ持っちゃいないし、これといった理由もない。
だが同じ理不尽を、ファルガイアは問答無用でベルーニに突き付けたんだ。
ベルーニにとっちゃ、このファルガイアこそが希望の地だったってのによ。
ニンゲンの俺とベルーニのアイツが、歩み寄れると信じたのにだ。
なら、公平にいこうじゃねーか。
ファルガイアがベルーニを滅ぼすんなら、俺がニンゲン全部を道連れにして滅んでやる。
この地に生き残るのは、ニンゲンでもベルーニでもない、あいつ一人で充分だ。
その後のことなんぞ、知るものか。
ディーン・スタークも、偽りの希望に群がる虫の一匹にすぎなかった。
だが、闇の中に踏み込んできたヤツは、まさしく太陽だったんだ。
俺の作り出した闇の世界が、真昼の光に照らし出された。
闇の装いを剥ぎ取られ、俺はみすぼらしい姿を、ヤツにさらした。
よく見ろッ! これがお前らの信じた希望の真実だッ!
手を俺の血で染めて、希望の息の根をその手で止めろッ!
それが嫌なら、希望を偽りと認めてみせろ。俺が絶望を与えてやるッ!
ヤツは、歩みを止めようとはしなかった。
だから俺は、もう一度未来ってやつを、信じてみたくなったんだ。
太陽の輝きを目の当たりにして、俺はひととき闇を忘れた。
だが、俺は闇だ。それは、俺自身が選んだことだ。
光に手を伸ばせば消えるしかねえ。
それでも俺は、光を求めずにはいられなかった。
予想外に生き延びて、愛する女も再び得て、やり直せるかと思ったさ。
だがかつて見た夢をたぐろうと振り返り、己の闇の大きさに圧倒された。
そしてやっと、闇の中で陽の光を受けて輝く月に気がついた。
俺が裏切り踏みにじり、未来を奪った連中の先頭に、チャックが立っていたんだよ。
ああ、今度は俺が復讐されるのか。
ところがあいつは、俺を見さえしなかった。
かつて俺が夢に見て、そして憎んだ道の先を、ディーンと一緒に目指していた。
だがすがる思いで伸ばした手は、拒絶されはしなかった。