ポンポコ山の採掘場が崩れ落ちる中、私たちは脱出を急ぎました。
地鳴りが轟き、舞い上がった土煙に照明が遮られ、あたりが一気に薄暗くなりました。
もはや一刻の猶予もありません。
奥へと戻ろうとするディーンさんをグレッグさんが連れ戻すと、私たちは出口に急ぎました。
レベッカさんとアヴリルさんの背中を目印に、背後にディーンさんの声を聞きながら、ただひたすらに走ります。
薄暗がりの中、足もとがおぼつかず、転がってきた小石を踏んづけて、体勢を崩しました。
いつものように転ぶと思った瞬間、身体がふわりと浮きました。
先へと急ぐその勢いはそのままに、力強い腕に抱き寄せられた私の身体は、倒れることなく持ち直したのです。
顔を上げた瞬間、不安そうなチャックさんと、目が合いました。
チャックさんはすぐ前に向き直り、そのまま私の手を引いて走り出したのです。
しっかりと、痛いほどに、私の手をぎゅっと握って。
そして私も、その手を逃すまいと、精一杯握り返して走ったのです。
目が眩むほど眩しい光の中に飛び出して、雪の上に倒れ込みました。
先に脱出したレベッカさんとアヴリルさんと、振り返ってグレッグさんとディーンさんの姿を確認し、安堵しました。
そして私たちは、採掘場の入り口が、轟音とともに大きな土煙を吐き出す様を、ただ黙って見守ったのです。
気づいた時には、しっかり握られていた私たちの手は、解かれていました。
かつて両親は、引きずるために私の腕を掴みましたが、手を繋いだ覚えはありません。
教授の暖かな手は、幾度も私の手を包み込んでくれましたが、私が握り返すには、あまりにも大きすぎました。
人を怖れていた私は、自ら選んで仲間たちと行動を共にし始めたばかりでしたし、チャックさんとは、出会ったばかり。
ですから誰かとしっかり手を握り合ったのは、それが初めてだったように思います。
けれどチャックさんが、私に限らず誰かの手をしっかりと取ったのは、その時限りのように思えました。
あの時の手の力強さと、不安そうなチャックさんを、私は忘れることができません。
ですからその時の話を、チャックさんに振ったのです。
「あ、ゴメン」
何を謝っているのですか?
「何がって、えっと、いろいろ。ゴメン、覚えてない」
私は呆れ、そして腹を立て、チャックさんの手を取ると、説教に連れ出しました。
さて私は、何を怒ったものでしょう?