(C)hosoe hiromi
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闇の呼び声

 グレッグとディーンが一緒に見張り当番だと、チャックは男用テントを独り占めすることになる。
 横たわって暗闇にひたり、そっとまぶたを閉じて、さらなる闇の奥を見る。
 鮮やかによみがえるのは、今日一日の出来事ではなく、あの日のことだ。
 坑道自体が身震いし、あちこちで蹴散らされた小石のように、大きな岩が転がり出す。
 轟音の中、聞こえるはずのない叫び声が、やけにはっきりと耳に飛び込んでくる。

 あの日、チャックのまぶたの裏に、父親の最後の姿が焼き付いた。
 最後の声も、耳にこびりついて離れなかった。
 父親のことを思いだそうとすれば、その姿と声に支配され、チャックの思考は凍りつく。
 暗がりにその瞬間を重ね、眠るたびにその夢を見た。
 陽射しの下での浅い眠りだけが、僅かな休息を与えてくれる。
 けれど真昼の夢は長くは続かず、目覚めたとたんに霧散して、チャックは現実に打ちのめされた。

 今チャックは恐れながらも、父の姿と声を求めて、暗闇の中で目を閉じる。
「父さん」
 つぶやいても、脳裏に浮かぶのは、岩に潰されたナイトバーンの姿ばかり。
 あきらめて、まぶたを開けて暗闇を見つめれば、ただ彼の声だけが、耳の中でこだまする。
 その声は、チャックを呼んでは、いなかった。

2010/05/01
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