(C)hosoe hiromi
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キミの笑顔

 怒られるのは、慣れている。
 子どものころは、ケントと一緒にしでかして、毎日みんなに怒られた。
 父さん、母さん、そしてルシル。
 村の婆ちゃん爺ちゃん、おっさんおばさん、兄ちゃん姉ちゃん。
 ナイトバーンにも、もちろんさ。
 何度も拳固を落とされたし、尻も赤くなるまで叩かれた。
 お説教が始まったなら、神妙な顔つきで謝るのが、一番早い。
 一番勘弁して欲しいのは、ゴハン抜きの罰だった。

 父さんと母さんはいなくなり、
 ケントとルシルとは離ればなれ、
 そしてボクも村を出た。

 今ボクを怒るのは、七つ年下の女の子。
 ボクが何かやらかすたびに、ボクの名を叫び、ボクの手を引く。
 精一杯背伸びしながら、小さな指先を突き付ける。
 頬をふくらませての一生懸命のお説教は、一つ一つもっともだ。
 彼女の一生懸命に応えるべく、一生懸命謝るけれど、なかなか許してもらえない。
 きっと、たぶん、間違いなく、またすぐボクがやらかすからだろう。

 彼女は最近まで、人見知りが激しかったそうだ。
 けれど今、仲間たちに懐き、本物の笑顔を向けている。
 そしてボクにはお説教。
 その間ボクは、キミを独占しはするけれど、笑顔はおあずけであるらしい。

 ボクなりに、期待に応えようとしたんだけれど、
 ボクはキミを、怒らせたり悲しませたり、あるいは呆れさせてばかりいる。
 キミを幸せにできるのは、キミと本物の笑顔を交わせる人だから、
 だから、ゴメン。キミを幸せにする人は、どうやらボクではないらしい。

2010/05/01
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