「お前はなぜ、我を許せるのだ」
問う。だがファリドゥーンのヴォルスングに対する敬愛に、疑いはない。
「あなたの罪は、私の罪です」
その穏やかな、そして優しく包み込むような声に、ヴォルスングの胸が詰まる。
「我はお前を、道具として利用したにすぎぬ。道具に罪があろうものか」
顔をそらしたまま、事実を述べる。
「それこそが私の罪です。私は道具としてではなく私として、あなたの前にあるべきでした」
ファリドゥーンは、ヴォルスングに並んで座る。
そしてヴォルスングは、暖かな腕に肩を抱かれ、驚き顔を上げる。
「もう、お一人ではありません」
溜め込んでいた涙が、頬をつたった。
寂しかった。子どものころからずっとずっと寂しかった。
けれど物心ついたときにはすでに両親にさえ涙を見せられず、泣くときはいつも隠れ、声を殺して泣いていた。
ヴォルスングは今子どものように顔をゆがめて嗚咽を漏らし、涙で濡れた頬をファリドゥーンに晒す。
やってきたルシルは、一瞬驚いたようだったが、彼女も微笑んでヴォルスングの隣に座り肩をよせた。