ヴォルスングに、アヴリルはただ微笑む。
「確かに、あなたの誕生には、なんらかの意図が介入したでしょう。でなければ、ハーフが健康体で産まれることさえ、難しいのですから」
ヴォルスングの父は、バスカーだった。そのための研究を手がけていたことも、わかっている。
「ですが親が子にそれを望むのは、あまりにも当然のことではありませんか?」
荒野に芽吹く希望を求め、両親はハーフである我が身に力を与え、作り上げたのだろうか?
「わたくしの世界もそうでした。現在のベルーニよりも高度な技術により、より才のある完璧な子を求めたのです。穏健派は、それは自然に反すると、多数の死傷者を伴う大規模なテロ活動を起こしてでも阻止しようとしました」
アヴリルは、冷たいほどの微笑みを浮かべている。
「ですが強硬派においては、放任により子に欠陥をもたらすなど犯罪と同じと考えられていました。そして文明はすでに、そうして才を得た者たちによって、支えられていたのです。ですがそれでも、わたくしはその者たちが、社会を支えるために作られた道具だとは思いません。ヒトはただ産まれ、社会を造り、自らの意思で自らの才を社会のために役立てる。それは不自然なことでしょうか?」
「では我が身もために在るわけではないのだな」
「あれこれ子という未来に望む事もまた、ヒトの性なのでしょうね。時にそれが子の重荷となったとしても。それが親バカというものです。少なくともわたくしは、そのように存在したわたくしの成り立ちを否定する気はありません。わたくしの生き方が、わたくしに望みを託した者たちの意思に沿おうが沿うまいが、わたくしはただ信じるままに生きるだけです」
無言で驚きを現わすヴォルスングに、アヴリルはその氷の微笑みを溶かして朗らかに笑う。
「わたくしの時代、特に強硬派では、そのような生命への介入はあまりにも当然のことすぎて、意識さえしなかったのですよ」