(C)hosoe hiromi
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ファルガイア・ちょっと怖い話

 ファルガイアに到着してすぐ、南東地方を担当した。
 で、メシス駅の近くにあるハニースデイって小さな村にも、定期的に視察にいってた。
 で、村に、いつも花の世話をしてる女の子がいるんだよ。
 この百年近く、ずっと。女の子のままで。
 そりゃあニンゲンでも、理論上は百年近く長生きしたっておかしくない。
 だが、婆さんになってなきゃ、おかしいだろ。
 ベルーニだって、子どもが大人になるには充分な時間が経ってるんだ。
 そりゃあ最初は、成長が止まる病気だとか、子どもとか孫とかに代替りしてるんだろうって想おうとした。けど、そうじゃないんだ。
 恐いのは、その女の子じゃない。村の連中が、その子をまるで気にしちゃいないんだ。
 変じゃないか、ありゃあ何者だと問い詰めても、何を言われてるのかわからないらしい。
 ベルーニに問い詰められて、けど何言われてるのかわからなくって、怯え困ってるってだけなんだよ。

 しかもだ。後で知ったんだが、ヴォルスング様を排斥したのもこの村だっていうじゃないか。
 異質な相手を排斥する閉鎖的な村なんて珍しくない。
 ならなんで年を取らない女の子ならよくて、ハーフの少年はダメなんだ?
 それに、どうやってヴォルスング様を排斥したんだ?
 いくら当時子どもだったからって、ニンゲンが束になってたって、どうやったってヴォルスング様に勝てるはずがないじゃないか。
 見た目も実体も、貧しいだけの何もない普通の村だよ。
 だけど俺は、あの村の連中が、気味悪くてしかたないんだ。

2009/08/29
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