ファルガイアに到着してすぐ、南東地方を担当した。
で、メシス駅の近くにあるハニースデイって小さな村にも、定期的に視察にいってた。
で、村に、いつも花の世話をしてる女の子がいるんだよ。
この百年近く、ずっと。女の子のままで。
そりゃあニンゲンでも、理論上は百年近く長生きしたっておかしくない。
だが、婆さんになってなきゃ、おかしいだろ。
ベルーニだって、子どもが大人になるには充分な時間が経ってるんだ。
そりゃあ最初は、成長が止まる病気だとか、子どもとか孫とかに代替りしてるんだろうって想おうとした。けど、そうじゃないんだ。
恐いのは、その女の子じゃない。村の連中が、その子をまるで気にしちゃいないんだ。
変じゃないか、ありゃあ何者だと問い詰めても、何を言われてるのかわからないらしい。
ベルーニに問い詰められて、けど何言われてるのかわからなくって、怯え困ってるってだけなんだよ。
しかもだ。後で知ったんだが、ヴォルスング様を排斥したのもこの村だっていうじゃないか。
異質な相手を排斥する閉鎖的な村なんて珍しくない。
ならなんで年を取らない女の子ならよくて、ハーフの少年はダメなんだ?
それに、どうやってヴォルスング様を排斥したんだ?
いくら当時子どもだったからって、ニンゲンが束になってたって、どうやったってヴォルスング様に勝てるはずがないじゃないか。
見た目も実体も、貧しいだけの何もない普通の村だよ。
だけど俺は、あの村の連中が、気味悪くてしかたないんだ。