(C)hosoe hiromi
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イライラの日

 昔の嫌な想い出とともに、そのとき感じた怖れと不安がよみがえります。
 怯え暮らしていた場所から飛び出して、やっと怯えることから抜け出して、優しく強い人々と出会い、前を見られるようになったはずなのに、今でもふいに恐くなります。
 それだけでなく、自分とは直接関係なさそうな、ほんのちょっとのキッカケで、私の中にドロドロとした黒いものがあふれ出すのです。
 それだけでなく、苛立ったり、腹立たしくなったり、恨んだり、嫉妬したり、そんな扱いきれない嫌な感情が膨らんでいくのです。
 今は素晴らしいお父さんや友だちがいて、不幸せなことは一つもない。
 なのにどうして、こうもいとも簡単に、私はイライラしはじめるのでしょう?
 みなさんに、充分可愛がっていただいてるのに、一人取り残されていくような不安を感じるのでしょう?

「それって普通じゃないかい?」

 では、チャックさんもそうなのですか?

「もちろんさ。そしてひどく自分が情けなくなるよ」

 それとは違う気がします。

「そりゃあ、まるっきり同じとは言わないさ」

 チャックさんに正論を言われたのも腹立たしくて、私は口を閉ざします。

「ごめん」

 黙り込むことで、チャックさんを責める自分が、とても嫌で……、

「ごめん」

 泣けてきます。

「もしかしたらキャロル、いわゆる『女の子の日』ってやつかい?」

 私は泣きながら、チャックさんに一番おっきなミサイルを撃ち込みました。

2009/08/29
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