(C)hosoe hiromi
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災厄の女神

 月の玉座から見下ろせば、地にわだかまり波打つ負の感情。
 人が生み出す暗いうねり。
 その波間から顔を突き出し、怨嗟を唸る無数の魍魎。
 嘆き悲しみ、怒り憎み、怨みつらんで手を差しのばし、
 すべてを引きずり込まんと、掴みかかる。

『我らはこれほどまでに苦しんだ。お前たちもそうであれ』

 けれどいくら仲間を増やしたとて、そこに安息などあるはずもない。
 その苦しみは、その内にこそあるのだから。

 救いを求め、伸ばしたその手で、私の手を取りなさい。
 滅びにたどり着く、その前に。
 その身に帯びた災いは、私が地へと還します。
 全てを忘れ、眠りなさい。
 お前たちを追いやった全てが、遠い昔のこととなるように。
 目覚めた時には微笑んで、その手を差し出すことができるよう。

09.06.25
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