わたくしをはぐくんだ人々は すでになく、
わたくしが護ろうとした世界は、荒野へと変貌した。
文化も文明も失われ、ただ痕跡を残すのみ。
人の根幹さえも、変わりつつある。
これで世界を、護れたと言えようか?
それでもわたくしに、笑顔と共に差し出されるいくつもの手。
彼らを、わたくしの世界の残滓ではなく、新たな世界に芽吹いた命と考えましょう。
わたくしは、未来へ一粒の種を送り出したと、信じましょう。
差し出された手を取って、光に満たされた新しい世界で、
わたくしはゼロからはじめましょう。
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