(C)hosoe hiromi
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縛られて

 ベルーニに指図されるままに、保安官はボクを縛った。
 ハンターライセンスが出てきても、ボクの戒めは解かれることなく、
 ベルーニは、失せ物の行方など気にしていない。
 誰かを処刑したいだけなんだ。
 だから保安官は、流れ者のボクをベルーニにあてがった。
 悲しむ人のない、このボクを。

 震えながら立ちすくむ。
 死にたくなんかない。
 あと少しで、正規ハンターになれたのに。
 やっぱり夢さ。つかめるはずのない、ボクの夢。
 許されるはずのない。

 父さんを亡くしたあの日から、ボクは何かに生かされている。
 もし今ここにボクがいることで、この人たちが死なずにすむのなら、
 そのために、今日まで生かされていたのなら、
 夢を見せてくれた何かに、ありがとう。
 けれど怖くてたまらない。

 見せしめに、しばらく吊されたままになるだろう。
 その後で、ここに埋められるんだろうか?
 それとも荒野に放り出されるんだろうか?

 できれば(父さんのように)地の奥底に埋めて欲しいと頼みたかった。
 それはそれで怖かったし、
 わずかばかりの遺髪を(母さんが眠る)故郷に届けて欲しいと頼みたかった。
 けれどルシルには、知られたくはなかったし。
 けれど唇は震えたまま、もはやなんの言葉も絞り出せず、ボクはただその時を待つ。

 アデュー。
 ボクが出会った全ての人に。
 ボクが出会うかもしれなかった全ての人に。


 もしこの地に埋められたなら、人柱の代わりにでもなれるだろうか?
 ボクがもたらすのは、災厄なのに?
 もし荒野に捨てられたなら、一疋の蝶となって荒野を渡ることができるだろうか?
 風に流され彷徨いそうだね。

 まもなく首に縄をかけられて、ボクは奈落へ落ちていく。
 そしてきっと、目を覚す。
 見慣れた故郷の雪山の、その地の底の暗闇で。
 そして今まで見ていてこの夢を、闇の中で反芻しながら、次の夢に落ちるんだ。
 いつか疫病神など最初からいなかった夢に、たどり着けるだろうか?

 助けを求めたあの人たちに、ボクの災厄が及ぶ前に、
 早く終わってくれ。
 どうか間に合ってくれ。
 日差しはゆっくりと、けれど確実に傾いていく。
 なぜ彼らを巻き込んだ。

 キミたちは間に合って、その手で運命をもぎ取ってくれた。
 ああ、やっぱりこれは夢なんだ。
 ゴメン。キミの憧れのハンターなのに、見習いの上カッコ悪くてさ。
 でもキミなら、きっとみんなが憧れるような、素晴らしいハンターになれると思うよ。


 だから、アデュー。
 これ以上キミたちが、ボクと関わりませんように。



08.09.17


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