起きている間は繕うことができるけど、眠ってしまった後に見る夢までは自由にならなくて。
ボクが暗闇を怖がることも、その理由も、もうみんなに知られていて。
なるべく心配はかけたくないのだけれど、今日も揺り起こされ、心配そうにのぞき込む顔を見上げる。
「ゴメン。起こしてしまったかい?」
「オレは、見張りから戻ったとこさ。大丈夫か? チャック」
ボクは見上げながら意識もせず笑いかけ、けれど大丈夫だと告げる声の震えは止められず、よけいに心配させてしまう。
「こうしてたら、きっとちゃんと眠れる」
ディーンが手袋をしたままのボクの腕をしっかと抱える。
「ありがとう」
ボクは彼に笑いかけ、まもなく彼は熟睡し、しばらくボクは寝顔を見守る。
彼も両親をなくしているのに、ボクよりよほどしっかりしている。
結局眠れず起き出せば、見張りのグレッグとアヴリルに見つめられ、ボクは無言で笑みを作る。
そう起きていれば、笑みだけは作れる。
「また父親の夢でも見たか?」
ちいさくうなずき「ゴメン」とつぶやく。
笑みは作っているはずだけど、泣きそうな笑みだと仲間たちに言われている。
「夢は、選べねぇからな」
グレッグも、ときおり夢にうなされる。
「ここで休んではどうですか? 焚き火が暖かいですし、テントの中より広いですよ」
アヴリルも、暗い場所が苦手だという。
「ありがとう。けれど落ち着いたらテントに戻るよ。起きた時ボクがいないと、また眠ってないって、ディーンが心配するからね」
ゴメン。ボクはキミたちに嘘をつく。
夢の中、闇に飲まれた土砂の中、閉じ込められてただ一人。
早く、急げ、時間がない。
震えながら、泣きながら、両手でひたすら土をかく。
けれど結果はわかっている。
それでもボクは暗闇の中で、『キミたち』を求めて、土をかきつづけているんだ。
あの日からいびつなままのボクの指先を、手袋で隠すように、ボクはキミたちに隠し続ける。