俺がスターになる前から、あいつは俺のファンだった。
昔のあいつの憧れが、見せてくれた本物の笑顔が、登りつめる俺に力をくれた
もはや望めるはずもないとわかっていても、今もそれを望んでしまう俺がいる。
俺は世界に裏切られたと、恨み、憎み、俺にあこがれた連中を裏切った。
あいつから父親を、母親を、そして親友を奪い取った。
何が疫病神なものか。
それを演出していたのは俺だったんだよ。
強制労働だけじゃない。
直接にしろ間接にしろ、両手の指でも足りやしねえ連中を、俺が死へと追いやった。
どれほど憎まれたって当然だ。
命が十もあったって、あがないきれやしないだろう。
だが俺は、利用するという名目で、あいつに庇護され、生かされた。
ギルドのイメージキャラクター。
テレビの中でのみ輝く虚構の星。
あいつは、俺の前で仮面をかぶり、必要ならば口元に笑みさえ浮かべ、決して本心を見せやしない。
だが、かつて憧れに輝いていたあいつの目には、言い知れぬ闇が静かに凝る。
憎しみでも怒りでもいい。
それであいつの気が晴れるなら、殺されたってかまうものか。
だから俺なんかのために、その身を虚構に沈め、自分を失ってくれるなと。
だがあいつは俺に、俺の罪を見せつける。
その日ギルドから届いた一通の手紙。
俺はそれを見て、あいつの闇の深さを知った。
「出入り禁止になっちまった」
怪訝な顔で、ペルセフォネが俺の手から手紙を奪う。
もちろんそいつは、いいも悪いも感情のこもった手紙なんかじゃない。
ひどくそっけない事務的なプリントだ。
『ギルド会館全面禁煙のお知らせ』
一瞥したペルセフォネに、鼻で笑われた。