(C)hosoe hiromi
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幼馴染みで親友で

 ポンポコ山から帰還して、ハニースデイに到着したとき、ディーンはチャックが泣くかと、そわそわしながら見守っていた。
 案の定、チャックは親友ケントの姿を見つけて、その名を呼びながら駆け出していく。
 そしてケントもまた、満面の笑みをうかべて両手を広げ、チャックの名を呼ぶ。

 チャックは、その胸に飛び込んだ。
「ケントぉ!」
 右肩から、おもいきり。
「チャック!!」
 その攻撃にふんばって耐えたケントが、広げた両手を頭上で組んでチャックに振り下ろす。
「このやろう! 生きてやがって!」
 ケントの足元に叩きふせられたチャックが、起き上がりざまケントの両足をすくい上げ、ひっくり返す。
「キミこそ! 生きてたなんて!」
 あとはもう、地面の上を転げまわりながらの、取っ組み合いだ。

 言葉と笑顔がなければ、かなりの大喧嘩。
 我に返って止めに入ろうとしたディーンが、グレッグに襟首を掴まれた。
「ほっとけ」
「でも、ケンカを止めないと!」
「男同士の幼馴染で親友なら、あれもありだ」
「ありなのかッ!?」
「ああ。ああやって、互いの無事を確かめてるんだろうさ。男と男の友情ってやつだ」

 村の同年代の子どもといえば、レベッカしかいなかったディーンにとって、驚くやら感心するやら、ともかく印象的な光景であったことは、間違いはない。

 後日ディーンがそれをヴォルスングに話し、そしてヴォルスングが、わけのわからぬファリドゥーンにいきなり戦いを挑み大騒動になり、楽しげに乱入してきた艦長にお説教喰らったのは別の話。

 さらにファリドゥーンとチャックは、ルシルにも説教をくらったのだが、ファリドゥーンは、なぜ自分が怒られているのか、最後までわからなかったという。


というわけで、貧乏くじを引くファリドゥーン。
そしてうちのディーンは、わたわたしながら実は内心泣くヤツが好き。
泣いてるの慰めるのが結構好き。
……がんばれレベッカ。

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