(C)hosoe hiromi
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レベッカの涙

 カポブロンコでの平和な生活を抜け出し、夢を実現させるため一人でライラベルへ行く。
 そんなレベッカの決意を認めた時から、こうなることはわかっていたはずだ。

「アヴリル、どうしよ! レベッカが、レベッカが泣いてるよ!」
「はいそうですね」
 うろたえまくっているディーンに比べ、アヴリルはリリティアと呼んでもいいぐらい、極めて冷静だ。
「ど、どうしよう! オレ、どうしたらいいんだろう!」
「とりあえず、ごはんを食べてしまってください。これではいつまでたっても、片付きません」
 食いしん坊のディーンが、食べるものも食べずオロオロしている。
「そ、そんなこと言ったってさぁ! レベッカの片思いに、男のほうが全然気づかなくて、別の女とくっついちゃって、平気でレベッカの前に現れるんだぜ!
 でもってレベッカ、そいつの前では笑顔なのに、一人になったら泣いてるんだ!」
「では、後片付けはディーンがしてくださいね。
 ……レベッカに対して、ディーンに何かできることがあるとでも言うのですか?」

 レベッカが、ぽろぽろと大粒の涙を流して泣いている。
 ただし、テレビの中で。

「ごはんが食べられないなら、テレビは切りますね」
「た、タンマ! 今ここで切られたら、オレこの先どうなったかが気になって眠れなくなっちゃうよ!」
「一人で生きていくことを決意して、二人から離れるんです」
「な、なんで知ってるんだ?」
「再放送ですから。それほど気になるなら、レベッカに会ってきたらどうですか?」
「そ、そうだね。よし! 思い立ったら今すぐライラベルにテレポートだ!
 撮影風景とか見学させてもらえば、オレだってこんなにオロオロしないですむよな!
 あれ、ウソ泣きなんだって、ちゃんとわかるよな!
 でもレベッカすごいよなー。オレ、泣こうと思ったって泣けないぜ!」
「ディーン。そういえばレベッカが言っていましたよ。
 涙を流すシーンのときには、ディーンのことを考えると」
「え?」

(ディーンもレベッカも、本当にバカですね。かわいいですけど)
 アヴリル=リリティアは、?を頭上に十個ぐらいうかべるディーンを見ながら、ニコニコと笑っていた。

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