ワイルドアームズ5
脳内チャックが近頃ゼットファンで困る
今日もチャックが、「ゼットっていいよね! いいよね!」って、正直うるさい。
自分もナイトバーンも「嘘」だけど、ゼットは本物だって。
(本物のバカだろ?)
だいたいうちのチャックがゼットファンになったのは単純な話で、彼女のために一生懸命なのがツボだったらしい。
こっそり物陰で、ゼットのポーズをマネしてみてたりする。
(普段お前が人前でやってることと、さほどかわらない気がするんだが。)
自分のは所詮薄っぺらな嘘だから、どれだけマネしてもカッコよくはならないって笑う。
けど、憧れちゃうなって。
(なら遠慮なく、本物目指せばいいじゃないか。)
そう言えば、好かれないために軽薄を気取る青年が、口元の笑みを残したまま困っている。
自分は他人に好かれるという前提だけは、ゼットもチャックも同じなんだと思う。確かにチャックは、ゼット系のキャラなんだ。
誰かに嫌われてもウザがられても、さほど気にもしない。
もっとも、ゼットは好かれようとああいう行動をしてるんじゃなくて、好かれる自分への自信が大きい。
チャックも対人関係においては、根っこのところは同じなんだと思う。
ロディやキャロルのように嫌われること、人に拒絶されることを、気にしない。
別に、好意に囲まれて育ってきたわけじゃないだろうけど、チャックにはつるんでいられる友だちがいたからね。
それは大きいと思う。
ゼットはどうだったか知らないけど。
空っぽ
ファリを説教するチャックの言ってることは、みんなの受け売りだけど、ひいき目にはチャックって素直だなとか、ちゃんと人の話を聞いてるんだなとか思う。
あれを差し引いても、ミラパルスでもメシスでも、流されやすいのは確かだし。
で、なんか仲間たちとの経験ごと、全てをファリに明け渡してるように思った。
そしてファリのやるせなさを引き取ったみたいだなとか思った。
そうやってチャックは、空っぽになっていく。
私はチャックのことを、こんな風に思っている
マジメで努力家義理堅いが融通も利く。善良でお人好しで、けれど世間も知っている。明るい好青年。
ただし、疫病神であることと、それに絡むあれこれさえ除けばの話。
それがないとむしろ本来の恐いモノ知らずの無謀さも出る。
事なかれ主義は疫病神であることの影響で、普段気弱な面が目立つ。温和に見えるが、ため込んだあげく爆発する。
いろいろ恐がりだが、疫病神である自分と自分がもたらす災厄、大事な人を失うことが恐いものの根本になっている。
いろいろと現実が厳しすぎたため、夢にすがってなんとか生きながらえてきた。
いろいろややこしく絡まってるが、ロディの逆だと考えると、わかりやすい。
希望にいきつくロディの方が、キャラクターとして一般的だからら、わかりやすいのだと思う。
そのロディの逆。
あきらめと絶望にたどり着いてるのに、軽薄だけど好青年ってあたりで惑わされる。
疫病神であっても、ありふれたどこにでもいる人間。
他人に嫌われたり拒絶されることを恐れないというよりも、いちいち考えてない。
一人でいることが単純に寂しいわけではない。
このあたりは本来の気質と人間関係に恵まれた子ども時代の友人関係によって形作られている。
確かにお人好しだけれど、人の弱さ汚さもいっぱい見て来て知っている。
つまりある程度濃い小さな村の中で、支えがある状態で、口の悪い大人や幼馴染みとのケンカを通じて揉まれてきたため、いわば打たれ強くなってるところへきて、ハンター見習い中も犯罪者を見てきたし、各地のトラブルに巻き込まれている。
さらに疫病神であることで、考え方がズレている。
人の性善説を信じてるってのは違って、悪い部分もあると知った上で、そんなもんだと思っている。
他人を恨んだり憎んだり恐れたり怯えたりしないことについては、そういうのが自分に向けられているというのを除いても異常なレベル。
そういうのが理解できないわけではないが、せいぜい口先で呆れてみせる程度。ミラパルスの自分に濡れ衣を着せた人々に対しても、処刑したベルーニに対しても、原因である教授に対しても、深く引きずっている様子はない。
つまり、ロディが落ち込むような状況でも全然落ち込まない、ということ。
そしてロディのように恐れられもしない。
逆にチャックの方が、人との関わりが深くなればなるほど、その相手を害しそうであるために恐くてならない。
ほっといたら人間関係って繋がっちゃうから、軽薄をよそおってまで深い関係を作らないようにしている。
人を恐れさせないことについては、これも異常なレベル。
むしろ舐められる。人畜無害だと思われる。こいつなら何をしても許される的な印象を与え、ミラパルスの人々だけでなく、レベッカさえ騙して利用する。
人を恐がっていたキャロルでさえ、お説教をくらわせても、嫌われるかもしれないとか、反撃されるかもしれないとか思わない。
グレッグでさえ、事情聴取につい応じてしまう。
ぶちきれた時以外は聞き上手。自分のことはあまり話さず、自分の問題として抱えている。自分は疫病神なんだと言い切っても、周囲に否定されるのがデフォだっていうのもその理由だし、人に話してもどうしようもないと思っている。
関わりが深くなりかけると一気に身を引くので、人によっては拒絶された感を持つ。
本来の人懐こいが、深い関わりを持つことに恐れを持っている。が、このズレには当人も困っている。
関わりをもつまいとしても、つい関わってしまう。
ロディの場合人に拒絶される事が恐いわけだが、チャックの場合拒絶されたらそれはそれで無問題。
そして、いろいろ欠点を持ち、常に他人に優しくできない普通の人々のことを、チャックは好きなんだと思う。あるいはそれが普通だと思ってるのか。
疫病神だから他の人たちを全て拒絶して荒野を渡り続けようと考えるほどに。
ファリの目は節穴
ファリは、本当にほとんど見えないぐらい視力がないんじゃないか? って話。
どうもアヴリルについての情報は秘中の秘であったとしか思えない。
アヴリルの見逃しっぷりについては、局でのペルセフォネも同じだし、そっちについてはナイトバーンもいたのに、グレッグも同じように見逃してるし。
この局のグレッグの扱いについては、「ベルーニは本気でグレッグを逮捕したかったのではなく、たんに局とギルドが、宣伝用のハンターの獲物としての悪役として採用してたので、見て見ぬふりをした」「ハンターの方も、高額賞金に手を出したら、自分の方が危ないとわかってた」という捏造設定で流すとして。
にしても、誘拐されるまでアヴリルの外見についての情報は、四天王にさえ明かされていない秘中の秘だったと思われる。っていうか、そういうことにしとこう。
伝説のジョニー・アップルシード。ファルガイアにて眠りについたベルーニ全ての母にして強硬派。
そのアヴリルをヴォルスングが目覚めさせた。だが、その外見や所在については秘されていた。
名目はなんとでもなる。
たとえば穏健派テロリスト(艦長たちのこと)対策とかなんとか。
秘密を守るにはまず身内からとヴォルスングが言えば、ファリドゥーンもペルセフォネも、はいって言うしかない。
しかもこれは名目というには現実的だし、事実になる。
どこからかアヴリルについての情報が漏れ、艦長たちは奪い取って、落っことしたのだ。
ヴォルスングはそれについても利用して、穏健派大粛正を行う。
で、アヴリルが艦長のところにいるのではない、ってことも把握している。
けれどヴォルスングたちは、まさか艦長が、単純にアースガルズがアヴリルを落っことして、艦長側も見失ってるなんて思わなかった。
これもまた単純にアースガルズが腕ごと落っことしたのではなく、「そこ」で落ちるよう、ループアヴリルが仕込んでおいたわけだ。
が、ともかくヴォルスングは、艦長は故意にアヴリルを落とし、アヴリルを穏健派に匿わせていると考えた。
まさかアヴリルが、ノーマークのニンゲンと行動を共にし始めるだなんて、ヴォルスングたちは、まるっきり思いつかなかったわけだ。ニンゲンなんて、その程度の存在にすぎなかった。どこかの穏健派が匿っていると考えた。
けど艦長の方は、アヴリルがニンゲンの村か町あたりにいるかもしれない、ぐらいは考えた。けれど自分たちで探しに行くわけにはいかない。で、昔のニンゲンの知り合いのことを思い出す。もうトニーが高齢だってことを忘れてて、トニーに探してもらおうなんて思ったりする。でも袂を分かってずいぶん経って連絡も取ってなかったから、どこにいるか見つけるのに一苦労した。
で、やっと見つけて連絡取ったら、なんとアヴリルの情報に直結してて、村の若い連中と一緒に旅立ったという。
それからも何かと後手後手に回ったり、地上には直接手出しできないもんで、介入してくるのがあの時点になるわけだ。で、艦長は、すでにトニーと、トニー経由でディーンたちの情報を得ていたから、あっさりディーンたちを信頼したし、トニーとも話をつけていたというわけだ。
一方さかのぼってヴォルの方は、軍やら情報局やらに探させてたわけだが、全然成果が上がらない。
で、ヴォルはファリやペルを利用していたが、信用はしていなかった。それどころか、忠誠を疑っていた。
二人とも、元穏健派だし。
そういう意味では、カルや教授の方が、もっとわかりやすい手駒だ。
だもんだから、アヴリルについての情報を、直接は教えなかった。
教えたのは、現場要員のみ。「この女を、丁重に連れてこい」レベルで。
けどそこからデュオグラマトンに、情報が流出していた。
デュオグラマトンは、あちこちの情報をつきあわせて、「その女」が行方不明のアヴリルではないか? と、推察した。
直属のペルより、フリーで雇われ番組制作者のデュオの方が、行動の制限をされてなかったってわけだ。
でまあ、ちっともアヴリルの手がかりを得られないから、ヴォルはますます部下を疑う。
しかも、ここでデュオのゲリラ放送、アヴリルの姿が確認される。
けど、ディーンは何の後ろ盾もないニンゲンの子どもにすぎない。
だから後ろに穏健派がいるんじゃないか? って考える。
裏で糸引いてるのがダイアナなら、そりゃあ他のベルーニが見つけ出せるわけがないよなってわけだ。ファリドゥーンもグルじゃないのか? って。
そうじゃなくても、老い先短いとはいえ、四天王の婆ちゃんって立場の穏健派大物に残ってられたら、面倒なわけだ。
だからファリを、脅してた。さっさと冷凍睡眠させないと、ダイアナは死ぬことになるぞ、って。
Ubでって取れるが、「暗殺するぞ」って臭わせてるわけでもある。この提案を受け入れられないなら、忠誠心を認めないぞ、って意味でもある。
で、そういう話が進んでて、ペルセフォネも一緒にやってきて、で、ホントに見つけちゃったりするわけだ。RYGS邸で、アヴリルを。
さらにファリドゥーンもペルセフォネも、取り逃がしちゃったりするわけだ。
まあ、ファリもペルもちゃんとそれについては報告したわけだけど。
ペルの方はデュオの暴走ってことで、ファリの方もダイアナの一存ってことで、表面上は納めた。
というか、ファリは本気でダイアナが糸引いてたんだと思った。ルシルは、自分が招かれざる客を入れたと思ってるが、ファリはダイアナがそう仕向けたに違いないて。だから、ルシルにお咎め無しなのも当然で。
一方デュオは局外のベルーニで、表向きアヴリル情報は知らなかったことになってる。ディーンのニュースだって、変なことを言い出したニンゲンの子どもの色物ニュースに過ぎなくて、その後ろにアヴリルが映ってたのは偶然って建前で。
ヴォルはファリペルに対し、「ハーフである我への忠誠など、所詮こんなもの。ならば力と恐怖で縛り上げ、道具として使い潰すのみ」って、ますますなっただけだった。
さらにカルにアヴリル捕まえてこいって出したら、ちゃんと捕まえてくるし。
で、改めて艦長に持ってかれたわけだけど。
こうなるとあれだ。ダークネスティアでヴォルにダイアナ殺されても、ファリは何も言えないんだ。
だって、RYGS邸にアヴリルがいちゃったんだから。
ファリの目から見ても、裏でこれまでの糸引いてたのはダイアナ状態。
もしかすると自分→ダイアナ経由で、穏健派に情報だだもれしてた? いや一応公私は分けてたはずだが。だがそうとしか考えられないッ! 状態。
穏健派同士、ファリに内緒でダイアナと艦長が通じてたって、なんらおかしくないんだから。
ダイアナは穏健派だから、裏切りってわけじゃないけれど、ファリはヴォルに対してもダイアナに対しても、自分の責任だって思うわけだ。
で、最後に、どうしてファリはああもアヴリルを見逃していたか?
ホントに目が悪かったんだよ彼は。ゼットアウラと同じ異種族カップルだから、そういうのありかもだし。
けど小さい頃から異様に勘は鋭くて、日常生活には困らなかった。
目が悪いだなんて、ほとんどの人が気づかないくらいだし、当人もその不便を意識しないぐらいに。
一度会ったことある人なら、また会えば気配で分かるし。
でもアヴリルの場合、本人に会ったことなかったんだ。
その気配がアヴリルだって、わからなかった。
軍の一番上だから、直接探索する立場にもなかったし。
ついでに、ヴォルスングも周囲の人たちも、ファリが目が悪いとは思ってなかった。
ファリは逆に、子どものころからの付き合いのヴォルが知らないとは思ってなかった。
でも、実のところ、それが問題にならなかったから、話した事もなかった。
それでも戦闘となると、視力をカバーするために、あのフェイスマスクをつける。
あれは顔を護るためというよりも、視力補強のためのものだった。
だから戦闘モードに入ると、彼はすぐフェイスマスクをつける。
たとえ敵がどんなに格下でも、ファリは手を抜かない。
だもんだから、RYGS邸でグレッグが閃光弾を使った時、一人でおもいきり喰らっちゃったんだよ。
喰らう喰らわないは、実のところディーンたちも同じだったのに、彼がめいっぱい喰らったのは、普段ほとんど視力に頼ってないのと、あのフェイスマスクが逆にそれを何倍も光を増幅したからだったんだ。
あの壁紙の、どこ見てるんだかわからないファリの視線も、目の前のルシルの胸から目をそらしたんじゃなくて、そういう事情があったんだよッ!
って、捏造してみた。
チャックの人脈再び
WA5をプレイしてすぐ二次創作にとりかかった。
私は最初からチャックファンだったわけではない。
チャックについての最初の印象は、シナリオ中の彼の扱いがおかしいな、ということだった。
空気 なんていう生優しいものではない。
チャックがらみで起きるはずの話が、故意にスルーされているというのが、彼に対する最初の感想だ。
それは、予算の都合でチャックから分離することができずに残ってしまった絡みであり、ストーリーをディーンに集中させるために、無理矢理スルーしなければならなかったのだろうと。
疫病神宣言に、バカなこと言ってるんじゃないよと、腹を立てた程度だった。
南東地方の村は次々潰れてしまって、ほぼハニースデイだけになった。
この設定はありとしても、予算と時間があったら、誰も住んでいなくていいから廃墟になっているキャロルの故郷と、あともう一つ潰れそうな村があってもよかったんじゃないかと思う。
そっちがナイトバーンの家があり、かつてヴォルスングを排斥した村だ。
ハニースデイにナイトバーンがやってきて、若者たちを連れていったというのは、そのままでもいい。
けれどその架空の村がないために、チャックの人間関係は、実の所すさまじいものになった上で、スルーされる事になる。
ナイトバーンは、昔からあそこに住んでいたとは限らないとはいえ隣ん家。そうでなくとも小さな村の、父親と同年代程度の近所のおっさん。今は雲の上の人だろうが同じ組織の一員。父親を死においやり親友を強制労働させた男。
ヴォルスング排斥事件も、チャックはその目で見ることになる。
チャックと、ナイトバーンとヴォルスングについては、その絡みについて触れ始めた最後、ディーンとは関係なしにシナリオに関わるあれこれが噴出しはじめる。
だがそれを切り離せなかったのは、予算のせいか? と。
だから疫病神だと思い込み人との関わりを避けていた、という設定が作られた……というわけではなさそうだ。
ナイトバーンがらみについては、関わりを避けるのをやめてディーンの仲間になった後でなければ、話に出ようがない。
ジョニー・アップルシードについては、最初酒についても聞いたことがないようだったし、合流してからはアヴリルの記憶喪失についてさえ、きちんと聞いてない。
ハニースデイのヴォルスング排斥事件も、チャックが忘れるほど幼い頃の話ではなかった。
ディーンたちは聞きもしないし、チャックも自分の事情を自分からは話していない。
話の流れ的には、ポンポコ山でディーンを助けた時、疫病神病からは脱していることになっているはずだ。
ナイトバーンの家とヴォルスング排斥事件が、別の村で起きたとしても、シナリオ上問題はないどころか、しっくりくる気がする。
たとえば村が三つでなくても、キャロルの村がまだ残っているとする。ここは滅ぶ寸前のハニースデイより悲惨な状況で、昔の事を知る老婆がただ一人、崩れかけた家の前で出稼ぎから帰ってこない息子を待ち続けている。
この老婆は、労働者狩りで一気に村が崩壊したとか、キャロルの父親は労働者狩りに連れて行かれ、母親はその後出て行ったままだなんて話と同時に、ヴォルスングが排斥された事件も語ってくれる。
もちろん息子や村人の何人かは、ディーンたちの活躍で戻ってくる。
あれ? これだとキャロルのお父さんまで戻ってきかねないな。いや、現状でもあの中にお父さんがいてもおかしくないんだが。まあ、強制労働所みたいな場所は、他にもあるんだろう。
とかなんとか、怪しくなったところで放置してと。
というわけでまあ、予算の都合とかで、割を食ったのか?
ファリドゥーンにヴォルスング頼まれても、しっかり顔を合わせたら昔のこと思い出して主役のディーンそっちのけの話がはじまりかねないから、スルーしちゃったのか?
妥当といえば妥当な解釈なんだけど、14の事故でそれ以前の記憶が吹っ飛んだ、なんてことにしといた方がよかったんじゃないの? ルシルやケントとは、その後あらためて友だちにはなれるんだし、その頃にはすでにナイトバーンは、村から出てたはずなんだし。
ただ、暗所恐怖症仲間のアヴリルと、さらに記憶喪失仲間になってしまうんだけど、そっちの方が単純で簡単だと思う。
記憶喪失×2じゃご都合主義すぎるとか、チャックの過去に何かありそげすぎて困るのは確かだけれど。
けど、都合じゃなくて、シナリオ上まったく出てないにしろ、チャックは自分が疫病神だと思い続けていた。けど、それをディーンたちの前には出さなかった。そのためにいろいろ齟齬が出たと、そんな風に思わずにはいられなかったりする。