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ワイルドアームズ5

希望は絶望の始まり

 チャックは、子どものころ……14才の事故以前は、普通にいろいろ将来に夢見てる子だったと思う。

 きっとそれでルシルなんかに、子ども扱いされてたり。
 それこそきっと、ディーンとレベッカのように。
 夢ばっかり見てた。

 ありふれた普通の子どものようでいて、「希望は絶望の始まり」と言い習わされるハニースデイにおいては、それこそ毛色が違って見えるほどに。
 大人の持つ閉塞感など自分に関わるものだとは考えもせず。

 そんな希望のない村で、やはりナイトバーンは異質で。
 そして希望に輝いていた。
 そのナイトバーンが口にした具体的な夢は、どれほど魅力的だっただろう。
 ナイトバーンが大人である分、村人たちの風当たりは強く、けれど彼は動じなかった。
 チャックは、キャロルや、あるいはロディのように、「人が自分をどう思っているか」気にしない。
 チャックは本気でお人好しだ。人に好かれようとして、お人好しをするわけではないぐらいに。

 チャックは「希望は絶望の始まり」を体現していく。

 たぶん、14の事故を境に、性格も大きく変ったのだろう。
 根の所は変っていない。以前のように、希望は持ってしまう。夢も見てしまう。
 けれどその上で、「だめ」だとあきらめる。あきらめる以外方法がなくなる。
 頑張って苦労して、手に入れたと思った瞬間、それは失われてしまう。
 大事な人が、失われていく。
 失った人は、戻ってこない。
 その頑張りや苦労の方向性が間違ってると言ってしまえばそれまでだけど、それは結果論でしかなく、ダメになった原因は圧倒的な力を持った偶然に左右されることが多い。

 それでもチャックは、次の夢を見る。
 村を出てハンターになって、そしてルシルを迎えに行こうとする。
 世界を変えてでも、ルシルを取り替えそうとする。

 村人たちから見れば、まるで絶望するために新たな夢を見ているようなものだ。
 村で希望を語ったナイトバーンは、若者たちを連れ出して、村へ絶望をもたらした。
 そのナイトバーンを、なお追ったチャック。
 ダメだろうとチャックは思う。けれど夢を捨てきれず、そしてまた失う。
 ルシルは死んだわけじゃない。
 けれどもう、チャックの元へ戻ることはない。
 チャックはそれでいいと、あきらめる。

 夢が叶わぬなら、その未来は無意味なのか?
 先をなくした人々の捨てきれぬ希望に蝕まれたヴォルスング。
 怨念は無意味だと結論づけたのだろう。
 どこかで希望をあきらめることができなかった。
 その希望のために、かなり無茶なこともする。
 一時の激情にかられてだけではなく、地道な努力を続ける。
 そして希望には終止符が打たれる。

 はたから見れば、絶望するために希望を持つようなものだ。
 だから村の人々は言う。
 夢なんか見るもんじゃないよ、希望は絶望の始まりなんだから。

 

なぜ主役であるディーンに、脇役としてのチャックが必要か? 再び

 ディーンのお仕事がらみのSSは、チャックメインのサイトなんだから当然チャックがらみの話になるわけだけど、それとは別にチャックは、ああいう立場に立ったディーンにとって、必要なんだと思っている。

 脳内ED後設定では、チャックは、ヴォルファリのファリみたいに、周囲一般から「なくてはならない補佐」「有能な片腕」……などとは思われていない。
 有能な秘書でもなく、有能な護衛でもない。公式な身分はギルドマスターですらなくハンターのままで、けどディーンの友だちという立場で周囲をうろちょろし、バカ話をし、まぜっかえす。ふらふらしてて頼りないむしろ邪魔者。
 ハンターとしては有能なんだけど、それを知っているのはごく一部。ライセンス持ちの政府付き渡り鳥的に、ディーンやら他の高官の雑用を引き受けたり手伝ったりしているが、大きなプロジェクトの責任者として、大勢を引っ張って行くようなことはない。

 無能ってわけじゃないが、ディーンの友だち枠で大きな顔してるだけっていうのが、他が見たチャック。
 ディーン含め、直に関わる関係者は能力を認めてるから、チャックを縛る人もいないんだけど。
 独自判断ができて小回りがきく便利屋的というのは、確かに便利なんだけど、もっと別の。

 ヴォルスングにも、そして艦長にも、チャックにあたる人がいなかった。
 耳を傾けるに値する存在と立場でもって、「ダメだ。あきらめよう」って言う人が。

 こういうチャックは、ディーンのカリスマに惹かれてやって来た人々から見ると、すっごい腹立たしいヘタレにしか見えないだろう。なんでこんなヤツがディーンの友だちで、準側近扱いで、デカイ顔して出入りしてんだよっていう。ギルドマスターならともかく、ハンターが。

 艦長もヴォルもディーンも、ものすごく強い。
 そのカリスマ性で、人々を惹きつけていく。
 天路歴程号の乗務員たちも。
 四天王含む強硬派の人々も、恐れながらであったとしても、彼なら無茶をやり遂げてでも、ベルーニを救ってくれると思って支持したのだろう。
 そしてチャックを含むディーンの仲間たちも。ディーンのジョニーアップルシード就任を喜んだ人々も。

 三人は、その強さや支持でもって目標に到達していく。
「人はあきらめない限り、なんだってできる」。
 それはヴォルスングや艦長にとっても、真実だったはずだ。

 だが、だからこそ壊せない壁につきあたった時、壊せるはずだと考えてしまう。
 誰もが自分と同じように、がんばればがんばれると思ってしまう。
 壁を壊せば、そのどちら側にいる人たちも自由になると。

 たぶんそうやって、艦長もやってきた。
 そしてヴォルスングも。

 けれどジョニー・アップルシードとしてファルガイアに降り立った艦長は、ベルーニがニンゲンを支配する社会の種を撒き、それを正せなかった。今でも正そうとしている艦長をUbが蝕み、蝕まれつつも艦長はあきらめないでいる。

 荒野に芽吹いた希望と期待され、ヴォルスングも精一杯頑張った。ハーフという希望の具現である我が身を否定されようと頑張って頑張って、けれどそれでも排斥された。ヴォルスングを受け入れたのは、同じ望みを持ち、そして未来を断たれた、過去の怨念だった。
 怨念と共に、価値なき希望叶わぬ世界を滅ぼそうとしてはじめて、ヴォルスングは利用するための道具としての人々と、関わり始めた。

 艦長のまわりにも、ヴォルスングのまわりにも、イエスマンしかいない。艦長にしても、天路歴程号のクルーたちは、艦長に賛同してつき従った人々だし、ファリは従うことが義務となっている。
 艦長もヴォルスングも、泣き言を口にする弱い人々とは、対等の関係になりえない。
 あきらめるな頑張れと励ますにしろ、任を果たせと威圧するにしろ、そんな対象でしかない。
 ディーンも、同じ道を歩み始めていた。

 その目の前で、チャックはあきらめ続けた。
 精一杯やって、なおも挫折した。
 考え抜いて、身を引いた。
 どうしようもない現実に打ちのめされる姿を、ディーンに見せ続けた。
 弱気だから、頑張りが足らないから、望みがかなわないのではない。
 それをチャックは、体現している。
 そしてアヴリルが言葉にし、ディーンに伝えた。

 チャックは、人が誰しも頑張り続けられないことを、知っている。
 誰しもがディーンと同じようにはできないことを、ディーンになれないことを、知っている。 
 希望から目を背け、夢見ることさえあきらめることで、今をしのいでいる人々を、知っている。
 同じ人々を、ナイトバーンも見て来た。
 だからこそ壁は越えるものではなく、壊すものだと言えたのだろう。
 ナイトバーンもまた、ディーンやヴォルや艦長に並ぶ一人だ。



 チャックは、壁を壊してなお、越えるべきではない事もあると知っている。
 そういうものを、たくさん経験してきた。
 ディーンに、見せつけてもきた。
 地道な努力でもって上ったハンターという夢の高みの限界を。
 希望と信じたナイトバーンの豹変を。
 繋ぎ止めておけなかったルシルの心を。
 失った両親を。
 あきらめるしかないことを、知っている。

 実の所、あきらめて割り切れないからこその、絶望だとしても。
 だからこそ、そうしないといけないことを、知っている。
 絶望してなお、夢見ることもあきらめても、今をしのがなければならないと。
 夢や希望が断たれても、存在を無に帰すべきではない。
 たとえそれに価値などなく、理由などない生命の本能にすぎないとしても。

 だからディーンのようなタイプの側には、チャックがうろついてなければならないのだ。
 弱き者として。
 ヘタレとして。

 

暗い所はちょっと……

 うちのチャックの暗所恐怖症具合は……

1 村にいるころ  一時期は夜眠れないレベル
 お母さんやケント無くした後一時期ぶり返し。

2 村を出てから正規ハンターになるまで
 怖いけど単身だからこそ我慢できる。
 単純に暗い所が怖いんじゃなく、暗いところは誰かをなくしそうなので怖い、なので単身の方が持つ。

3 パーティin後
 ナイトバーンのあれで、完璧にぶり返し。  なんだかんだで恐怖をねじ伏せてたけど、クレイドルで隠し通せなくなる。

 やっぱチャックのかっこつけって、演技なんだなあと。
 虚勢のための見栄じゃないんだなあと。

 あと、人に歩み寄ったり頼ることを自然体でやるよなと。
 疫病神だからと、意識して人との関わりを避けようとしているはずなのに、むしろ意識してないと避けられないし、実際避けきれてない。
 人と深く関わることが苦手といいつつ関わりが深くなりはじめると、斜め上方向に怖くなって引いたり背を向けるという意味で苦手なわけだし。
 相手が、人が怖いんじゃなく、疫病神である自分が怖い。

 

空気でありたい

 チャックは、存在感的に頼りないというか空気なわけですが、チャック自身も自分の存在に、あまり自信がなさそう、というよりだからこそ空気になりやすいんじゃないかと。

 関われば関わるほど悪夢になっていく夢を見ているような気分なんじゃないかと。
 自分が疫病神である夢を。
 むしろ、疫病神としての自分が存在しているのは夢であると思いたいのかも。

 

どうでもいい

 小耳に挟んだところによると、許すの最上級は、忘れることなんだそうだ。

 で、チャックはひどい目にあっても、ケロっとしている。
 ミラパルスでも、あそこまでやられたけど、あれで終わっちゃったし、ディーンたちに騙された上でグレッグ見逃したり。
 本当に忘れてるわけじゃなくて、本当に気にしてない。
 教授に対しては多少反応するけど、多少で終わってしまう。
 あっさりしてる。
 うちのチャックは、ナイトバーンに対してのみちょっと違う。
 けど本編のチャックは、ナイトバーンに対しても、あっさりしすぎだ。
 ファリドゥーンに打ち倒されても、ファリに対して怨みとかカケラも持たない。
 チャックを殺そうとしたベルーニたちに対しても。

 許しちゃってるんだなって思う。
 いや許そうとさえ思ってない。
 どうでもいい、というのに近いのかもしれない。
 他の人に対するナイトバーンの仕打ちには怒っても、自分に対してはどうでもいい。
 ディーンたちに騙されたのも、どうでもいい事だ。
 そんなのどうでもいい上で、相手のいいところだけ見て、評価してる。
 ファリに対しても。