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ワイルドアームズ5

怨念のこと

 ベルーニが来てからせいぜい100年で、ヴォルスングという実力者を飲み込み世界を滅ぼそうとするまでの怨念が、どうやって形成されたのか?

 もう書いたっけ?

 いや、世界を滅ぼすような怨みなんて、100年もかからず形成されるよ。
 怨みとか憎しみとか怒りは、それほどまでに人を動かす。
 人を惑わし、人を駆り立て、人を暴走させる。
 人を狂わせる。
 それが当人のではなく、過去の人のものであったりすると、なお悪い。

 幸い今回ヴォルスングは一人だったけど、現実はもっとたちが悪い。
 これが集団でやってくる。
 集団の中で怨み仲間が手を取り合い、狂ったことにも気づかず暴走していく。
 でもって百年単位でそれが続く。
 根が深くて解消の見込みもない宗教対立だの民族対立だのは、そんなもんだ。
 しかもきっかけは、ごく些細なことだったりする。
 きっかけらしきものがない場合さえある。
 つい先日まで、民族が違うってのは、血液型が違うってぐらいの意味しかなく意識もしなかったのに、反目が反目を呼び、過去のどうでもいい事になっていたはずの諍いが掘り出され、それに本気で腹を立て、復讐の連鎖が起き、民族虐殺にいたったりするわけだ。

 

新しい友人を作ることについて

ディーン 出会いがあれば友だちはできる。
レベッカ 出会った相手がいい人とは限らないけど、いい人だったら友だちになれるよ。

 レベッカの方が多少慎重とはいえ、あんまり変らない。

アヴリル ディーンとレベッカが友だち。
 確定しちゃってるわけだ。

グレッグ 馴れ合いは不要。
 ゴウノンを出てから、復讐しか考えてこなかった。友だちを作ろうなんて思いつきもしないし、むしろ慣れ慣れしく近づいてくるヤツ(単なるお節介でも)は鬱陶しいだけの存在。

キャロル 友だちは欲しい、けど……。
 イジメられたり嫌われたり拒絶される方が恐いという気持ちの方が先に立つ。

チャック 友だちとは気を抜いたら出来てしまうもの。
 素で友だちが出来てしまうのはディーンと同じだけれど、だからこそ自分にそれを禁じている。

 

なぜ主役であるディーンに、脇役としてのチャックが必要か?

 ディーンは強すぎて、弱い者の気持ちにうとい部分があると、誰かが言ってた。たぶん、自分を含め、多くがそれに同意するんじゃないかと思う。

 アヴリルもそうだし、艦長もそうだ。
 単純な強い弱いだけではなく、何かを怖れる気の弱さにうとい。
 たとえば艦長の場合、人間が強いベルーニを怖れる気持ちまでは、わかったとする。んな俺ら怖くねーよ、ということを体現することまではできる。
 けれど、弱いはずの人間を怖れるベルーニの気持ちまでは、わからなかったのではないか?
 その怖れが、文明程度の低い人間に対する優越感とあいまって、支配に繋がっていったのではないか?
 けれど艦長には、ベルーニがニンゲンに対して持つ優越感は見えても、当時怖れまでは見えなかった。
 何にしたってベルーニの方が、あらゆる面で圧倒的に強いのだ。
 たとえ諍いがあったとしても、強いベルーニ側が怖れるとは、思いもしない。
 ベルーニが、人間やファルガイアに感じる怖れなど、艦長にはまったくわからなかった。

 だがその怖れは、Ubによって具体化する。
 自身もUbに蝕まれ、ロクスソルスと天路歴程号暮らしというファルガイアを一歩離れて、それが少しづつ見えてくる。
 だがそれでも、ヴォルスングの処遇について後手にまわってしまう。
 艦長にしたら、まさかベルーニが、希望の子であるはずのヴォルスングをそこまで怖れるとは思わなかったのだろう。いや、なんで怖れたのかも、すぐにはわからなかったのかもしれない。
 単に、優れたベルーニの血に、劣った人間の血が混じることを嫌悪しているのだと。
 ヴォルスングがその才能を示し、優れていることを証明すれば、彼は認められると。
 実力を素直に評価する艦長は、そう考えていたのではないだろうか?
 だが、ヴォルスングが才能を示すほど、ベルーニは怖れるのだ。

 さらにヴォルスングにしてもそうだ。
 ベルーニ社会の中では、最たる弱者であったヴォルスング。
 彼が純ベルーニであれば、たぶんファリドゥーンがそうであったように、認められ賞賛されていただろう能力を持ちながら、それを示すほど、ますます怖れられていく彼は、RYGSの庇護さえ必要とした。
 本来実力主義であるベルーニ社会では、実力を示せば認められるはずだ。
 表向き、ベルーニはニンゲンを怖れていないことになっている。だからヴォルスングは、ますます認められるために、実力を伸ばし認めさせようとしたはずだ。
 ……キャロルが教授に認められるために、そうしたように。

 ついに彼は、RYGSにさえいられなくなり、ファルガイアを巡ってニンゲン社会側から変えていこうとする。つまり、受け入れられようとする。
 だが、やはりヴォルスングも、弱者の怖れを理解はしていなかった。
 各地を巡り、ニンゲンにはないその力で善行を施す。
 そして自らのアイデンティティである、希望を語る。
 感謝されることもあった。彼の好意は記憶されている。
 だがそれは、希望に背を向けたハニースデイで、はっきりと破綻する。
 希望は、いいものであったはずだ。
 人々の希望になれば、自分は受け入れられると、ヴォルスングは思っていたはずだ。
 未来を切り開く力を、ヴォルスングは持っているし、その自覚もある。
 その力を分け与えられるとも思っている。
 だがハニースデイの者たちにとっては、希望は怖れるべきものでしかない。
 そんな怖れがあることすら、ヴォルスングは理解できなかったのではなかろうか?
 その強さ故に。
 そして同じ弱さや怖れを自分が持っていることにも、気づかなかった。

 希望になり得なければ、無価値となってしまう自分への怖れ。

 そうした怖れの存在を、ディーンも知らない。
 いらゆる恐いもの知らずで、それが正義だと思えば危険も厭わず突っ走っていた。
 その行動力が、チャックに対する濡れ衣事件を、ミラパルスの人間の処刑話にまで大きくしてしまった。このときはアヴリルの介入で、なんとかなった。
 ルシルイベントでも、物事を引っかき回しただけで終わる。このときはルシルとファリの人柄に救われる。
 どうしようもなく動かし用のない現実の壁。
 それを見たって、ディーンが壁に納得することはない。壁の前で怖れる気持ちがわかるとも思えない。
 チャックも、ディーンがチャックに歩み寄る前に、ディーンに歩み寄ってしまう。

 そしてさらにハニーズデイ出身のナイトバーンは、壁のてっぺんで旗を振るのではなく、誰もが越えられるよう壁を壊せと示唆する。
 希望を掲げ、期待を受け、だが絶望し、さらなる絶望をふりまいていたナイトバーン。
 ナイトバーンも、ディーンと同じタイプの人間だった。
 テッドと同じなのだ。子どもの恐いモノ知らずの真っ直ぐな正義。
 夢と希望。

 強いがゆえに、がんばれば希望をつかめると信じている。
 実際そのための力を持っている。
 それゆえナイトバーンは、己の希望であった女の死によって絶望にうちひしがれ、その力を絶望をふりまくことに使い始める。

 チャックは、絶望の側に立っている。
 希望を持つが恐れながらであり、希望を断たれても絶望は自ら抱え込む。
 ナイトバーンのように、あるいはヴォルスングのように、他へは向かない。
 チャックがディーンに、トゥエールビットで、改造実験塔で、怖れあきらめる姿を見せていく。
 すべて望み通りにはいくものではないと。
 他人を巻き込むことは、相手の気持ちも大事なのだと。
 ディーンが、アヴリルに誘導されながらも、ルシルイベントの後ぐらいから、少しづつ意識しはじめたこと。

 自分が信じる正義や、の希望や理想を押しつけるだけでは、どうにもならない、ということ。
 強固な希望や理想は、それは一度何事かあれば、巨大な壁となって他を圧迫すること。
 ディーンが、ナイトバーンやヴォルスングにならないためには、行き過ぎた時に止める係の、チャックが必要なのだ。

 と、そんな風に想っている。

 

グレッグの知名度

 ミラパルスで、グレッグがウロウロしてるのに、みんなスルー。
 うち的には、「高額賞金首を捕まえても、ゴーレム発見の手柄と同じで、賞金もらえるどころか、消されるだけだから」ということにしてるけど、他のパターンも考えてみた。

 ミラパルスの時点では、まだグレッグの手配写真は、出回ってなかったのだ。
 だから追っ手であるチャックもミラパルスの人々もディーンたちも、グレッグの外見を知らなかった。だからグレッグは、うろうろしてても大丈夫だったのだ。

 ゴウノンの場合は、人々は当然グレッグを知ってるから、出てけ! となる。
 この頃、入れ違いでチャックがゴウノン入りしたことが、NPCのセリフでわかる。
 で、駅での合流ではチャックはグレッグを認識している。
 ということは、チャックはゴウノンで、グレッグの外見についての情報を手に入れたと考えられるのではないか?
 逆にやっぱりそれ以前は、グレッグの外見は一般には知られていなかったのだと取れる。

 で、ライラベル。グレッグが思いきりテレビで報道されている。
 なのに、チャックはどうしてグレッグの外見を知らなかったのか?
 いやあの報道のグレッグの姿は、最近のものだ。
 ずっとあの指名手配が報道されていたのではなく、最近のニュースとして報道されていたのではないか?
 あれが前からでそれをチャックが知らなかったというのは、あまりにもおかしすぎる。

 ならどうして、ミラパルスからライラベルの移動の間に、最近のグレッグの姿が報道されることになったのか?
 だれがその姿を撮影し、ライラベルに持ち込んだのか?
 この間グレッグと接触したのは……。

 チャック、お前かよ。

「えーッ! ボクじゃないよ! いくらなんでもそんなマッチポンプしないってッ!」

 ゴウノンからの通報と考えよう。
 グレッグがゴウノンにやってきたとき、住人の誰かがグレッグを盗撮していて、それがチャックの手に渡り、駅で接触する前にチャックがギルドに知らせていた、というのも考えられる。
 チャックはその写真でグレッグの姿を知ったけど、通報したのはチャックとは限らない。

 その後も賞金首であるグレッグに対するチャック以外のハンターのスルーっぷりを考えると、「高額賞金首を捕まえても、ゴーレム発見の手柄と同じで、賞金もらえるどころか、消されるだけ」「どーせベルーニの横暴や濡れ衣が原因であることはわかってるから、やぶ蛇つつきたくない」「ぐだぐだなギルドで後味悪い仕事したくない」というのも平行してアリだと思う。

 

チャックの人脈

 最初、私にとってまだチャックが特別じゃなかったとき、冷静に「あれこいつシナリオ的に変な扱いされてるな」って思った。

 人脈がすごすぎるのに、全部スルーされている。
 ナイトバーンとは小さな村で同郷だし、ヴォルにも直会っているはずだし、シナリオ的に直に絡むファリはともかく、教授ともかかわっている。
 これ、ほぼ主人公レベルじゃないか。

 いくら人との関わりを避けてるとはいえ、スルーされすぎであり、しすぎでもある。
 こんだけの人脈ができちゃったけど、それをシナリオに生かすと、話が変ってしまうから、なにげに流してるのかな? と。
 もっとマップが広くて、予算がたくさんあったら、村も増やせて、少なくともナイトバーンとヴォルスングの、明示されない関わりは、完全に絶てたはずだ。

 そっちのほうが、ありふれていて、普通の解釈なんだろう。

 まったく信仰とかされてない、アイテムでしかないはずのWA5の守護獣。
 なのにチャックのみ、セレスドゥとの繋がりを感じる。
 負と災厄、絶望、諦め。にもかかわらず、守護獣たるセレスドゥ。
 ロディのうつし身としてのヴォルスングと、
 サーフ村のトニーのうつし身としてのチャックと。
 ロディの人生を逆走するチャック。
 やっぱり、なにかの関わりを感じる。
 前向きになった直後に繰り返される、父親を亡くした事故の再現。
 けれど、明示はされない。
 一番つらい時に泣けないチャックはただへらへらと笑うばかりだ。

 どこまで計算されてつくりだされているのか?
 どこからが自分の妄想にすぎないのか?