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ワイルドアームズ5

チャックの壁

 ディーンたちの仲間に加わった後の、チャックが身にまとう壁。
 普通に仲間しているし、どこもおかしな所なんかないし、チャックが身にまとう壁。
 
 薄皮一枚の。見えもせず、手ごたえもない。
 
 そういうものの存在を指摘するのは、別に私だけではなくて。
 
 あのアヴリルの記憶喪失の話が出てきた時の反応が、その壁が見えた一瞬だったと思う。
 キャロルとの力関係と、空気読めないチャック、を現すあのエピソード。
 
 書くの二度目だったっけか? 
  SSのあとがきにちょこっと書いたんだったっけ?
 
  他のメンバーと違い、チャックが仲間に加わった時点では、なんとなく寄り集まった連中ではなく、世界を変えるという目的を持ち、生死を共にする運命共同体、だったわけだ。
 
  というか、その目的のために、チャックは仲間に加わった。他の何のためにでもなく。
 
  にもかかわらず、チャックは仲間たちの事情について、その話が出るまで、自分から知ろうとしなかったわけだ。
 
  もちろん、グレッグの事情については、知っている。
 
  というか、グレッグに対しては事情聴取までしているのに、と言った方がいいかもしれない。
 
  何も考えずに行動するタイプ、のような見掛けは作っている。けれど実際には、調べ、考えすぎるタイプに見える。
 
  ゴウノンに姿を現したのが、ミラパルスに来る前なのか、あるいはディーンたちと入れ違いになったのかは、わからないけれど、オルサイオス駅までグレッグを追ってくる能力はある。
 
  そんなチャックなのに、いざ仲間になると、仲間について積極的に知ろうとしない。
 
  アヴリルの記憶喪失の話が出た時に、空気読まずに質問するぐらいだから、仲間について興味がないわけじゃないんだろう。
 
  けれどあの時点まで、確かにチャックが仲間になってからバタバタしていたのも確かだけれど、自由度はむしろ高く、情報交換の時間は十分にあったはずだ。
 
  なのに、ほとんど情報交換していない。
  ナイトバーンについて聞かれても、雲の上の人だとすませている。
  確かにそうかもしれないが、同郷で、あの小さな村で、なのにギルドマスターのナイトバーンについてしか、答えていない。
  他に理由があったとしても、ディーンと同じように、ゴーレムが好きで、ゴーレムハンターに対して並ならぬ思い入れがあり、正規ハンターになるまで頑張ったチャックであるはずなのに。
  若者の誰もが憧れる、ナイトバーンであるはずなのに。
  にもかかわらず、そっけなさすぎやしないだろうか。
 
  なお、このサイト的にはペル姉死亡→ナイトバーンの変心→ポンポコ山事件でチャック父死亡として扱っているけれど、公式では確かに同し年の出来事として書かれているものの、事故はペル姉死亡より上に書かれています。
 
  ゴーレムハンターだったチャックは、ディーンたちにとって有益な情報源でもあるはずなのに。
  そうでなくても、ハニースデイ出身というのは、ナイトバーンについてだけでなく、ジョニー・アップルシードを名乗ったハーフっぽい少年についても、知っているはずなのに。
 
  もちろんそのジョニーについては、チャックは聞かれなければわからないことだし、ポンポコ山の騒動の後、すぐデュオグラマトンからの情報が入ってくるため、お酒のジョニーでもなく、ハーフっぽい少年でもないジョニー・アップルシードについて追い始めるのも、当然ではあるのだけれど。
 
  チャックは、仲間たちの言動を見て、意識して空気のように溶け込もうとしたのではないか?
  直接問わず、言動を観察するだけで、仲間たちの人間関係なんかを理解しようとしてたんじゃなかろうか?
  仲間になる前のように自分をさらけ出さないようにし、逆に仲間たちのことも必要最低限しか知ろうとしないよう注意して。
 
  その注意がしきれなかったのが、アヴリルの記憶喪失に対する質問だったのではなかっただろうか?
 
  仲間になってから、チャックは疫病神の話を、していない。
 
  まるで、あの決意によって、その思い込みから解放されたか、のように。
 
  だが、チャックがその想いから、解放されるような出来事は、何一つない。
 
  大事な人は、自分の手で護ればよかった。
 
  何から? 疫病神の自分が振りまく災厄からだ。
 
  疫病神である自分は、そのままなのだ。
 
  たった一度、ディーンを助けたというそのことだけで、長らく信じていた自分は疫病神であるという想いから、解放されるだろうか?
 
  しかもその直後に、彼の父親同様に、ナイトバーンが落石で一応死亡……ということになっている。
  小説版では、グレッグが爆弾を仕掛けた故意だが、本編では、起きるべくして起きた事故だったには違いないが、あのタイミングで起きたのは、まったくの偶然のようだ。
 
  これで、疫病神という想いから解放されるとは思えない。
 
  けれど疫病神の話を、自分のことを、口にしなくなった。
  そして仲間たちについて、知ろうとしなくなった。
 
  あれだけ、仲間である前には自分のことをぶちまけたチャックが。
  グレッグには、事情聴取までして、事実確認をしたチャックが。
 
  ハンターギルドへの想いや、ゴーレムへの想いも、バレバレだが問われるまでは口にしない。
  口にしても、そっけない。
  アースガルスを見て、ついに我慢できなくなったチャックを見たキャロルが、びっくりするほどに。
 
  そうしたものが積もり積もって……。
 
  疫病神であることなど、そう信じていることなど、話しても仲間たちにもどうしようもなく、負担になるだけだと口を閉ざし……。
 
  疫病神である自分が、仲間たちと深くかかわりすぎれば、災厄に巻き込むと信じて、距離を保ち……。
 
  それが、チャックが他に意識させぬほどに作り出している微妙な壁であり、チャックが抱え込んでいるものなのではないだろうか?