もの書きは、フリーばかりでは、ありません。
会社と専属契約を結んだり、会社員となって月給をもらい仕事をする、会社員もの書きもいるのです。
書く内容の制限は、フリーよりも厳しくなりますが、会社員の方がフリーよりも通りがよいことも、確かです。
特にあなたの家族が、フリーが自営業であることを理解できず、フリーターと勘違いして、フリーのもの書きになることに反対している場合、会社員の肩書きなら、受け入れられやすいでしょう。
他にも利点はあります。
会社はあなたの苦手な部分、たとえば営業活動や経理を肩代わりしてくれるでしょうし、月給制なら、何の仕事もできない新入社員でも、最初の月末から給与を手にできますし、面倒な確定申告もする必要がありません。。
自分でやる場合は、仕事を得るまで、そして仕事をしてから収入が得られるまでの間、当面収入がなくなりますし、収入を得られるという保証もありませんが、会社はまだ仕事のできない新入社員にも、給料を支払わなければなりません。
会社は、営業担当者を置くことにより、個人よりも大きな営業力を持ちますし、そのノウハウを蓄積し、後輩に伝えていくこともできます。
仕事に使う道具や資料も、会社のものが使えます。
会社の名前を使うことによって、個人ではなかなかできないことも、スムーズに行くようになります。
けれど、良いことばかりではありません。
会社は、社員たちが稼いだお金によって、維持されています。
オフィスも、事務用品も、そして直接稼がない人(まだ仕事が出来ない新人や、営業や、管理職)の人件費も、誰かが稼いだお金によって、そこに存在しているのです。
会社の道具や資料も、それを購入する費用の元をたどれば、社員が稼いだお金ですが、それで購入したものは、会社の備品です。これがフリーなら、最初から揃えられるものは少なくても、自分の手元に残ります。
そんなわけで、同じ仕事をしても、手取りは大幅に目減りします。
仕事ができなくても、仕事に失敗しても、決まった給料を支払ってくれるといっても、いつまでもというわけではなく、頻繁にリストラが行われています。
会社が存在することによって、新たに直接収入には結びつかない仕事や、ロスが発生します。前述の営業活動や経理、あるいはオフィスの掃除は、あなたの仕事として割り当てられるかもしれません。
一生懸命働き、他の社員より仕事をし、稼いでも、会社はその収入を、将来への投資や規模の拡大、稼がない社員の給与にまわしますし、あなたが稼ぎ続ける保証もないからです。
契約社員の場合、契約によっては、自分で何から何までやっても、収入のすべてを会社に通し、一部を会社に納めなければならないこともあります。
自営業のもの書きでも、クライアントと自分との間に、そうした会社が入れば、収入は減ってしまいます。
会社員として、充分な給料を得られるようになるのは、会社がよほど大きくなり、順調に充分な利益を上げているか、あなたがよほど稼げる人間になって、会社がそのネームバリューや、収入をあてにするようになった時です。
けれど前者の場合、その会社には、もの書きの仕事は少ししかないでしょうし、充分な腕のあるもの書きを雇いたいと考えるか、その時の仕事に応じて書きものを発注するようになっているはずです。
後者の場合、あなたは独立し、個人で活動するか、自分のための会社を作った方が、何につけ良い状況になっているはずです。
実際、もの書きが自分のために作った会社は、いくつもあります。もっとも、そうした会社が、もの書きの社員を募集したり、読者の目にふれることは、あまりありません。
結局、会社員もの書きの状況は、自営業のもの書きより、厳しいのです。
会社員もの書きになったからといって、それで生活していける、特に家族を養っていけるとは限りませんし、就職すればなんとかなる、という考えでいると、すぐに脱落してしまいます。
そして契約社員もの書きは、自営もの書きと、社員もの書きの中間に位置し、いいとこ取りをすることも、できるかもしれませんが、ヘタをすれば仕事は自営もの書き、収入は社員もの書きということになるかもしれないと、いうわけです。
それでも、もしあなたが、ものを書くこと以外に、ものを書く仕事を知らず、人脈もないのならば、会社勤め非常に有効に働きます。
どんなに会社員もの書きの方が厳しかろうが、人脈もなく、どう仕事をしていいかわからず、結果に結びつけられない自営もの書きより、厳しいわけではありません。
会社で仕事をすることによって、さまざまなことを吸収できるはずです。
しかも会社は、あなたに月謝を求めるどころか、月給を支払ってくれるというわけです。
辞めるときまでしっかり仕事をし、よい関係を保ったまま辞めれば、独立した後も会社とよい関係を、保つことができるでしょう。
以上 2001春追加
クリエイター関係の仕事は、完全な実力競争社会。
フリーのもの書きだって、一時的な専業契約を結ぶことがあります。
また、転職を繰り返していくことによって、人脈を広め、自分に合った仕事を見つけていく人もいます。が、同時に仕事が出来なければ、フリーが食いっぱぐれるのと同様、リストラされるのです。
ええ、どんなに素晴らしい仕事環境や福利厚生をうたっている会社だって、小さな編集スタジオだって、それは変わりません。
もの書きとして就職する場合、新人として採用される場合と、即戦力として採用される場合があります。
新人として就職する場合に、絞りましょう。
誤字脱字や文法は、教えることも覚えることもできます。
いくつかのテクニックや、クリエイトに必要な道具の使い方も、そうです。
ですが学校や新人研修で教えられるのは、そこまでです。
ただし、新人に教えられる余裕がある会社は、僅かです。
自分で調べて、ものにしなきゃいけません。
自分で調べるっても、能動的に習ったり、人に尋ねたりするんでも、いいんですけどね。
でも、それらが完璧ならそれでいいかっていうと、そうじゃないんです。
一番大切なのは、自分で調べてものにできるか? ってこと。
だいたいこうしたものは、常に必要な上に、常に流動的に変化し続けてるんです。
「ら抜き言葉」が間違っているからといって、ら抜き言葉を喋りそうな登場人物のセリフを、正しい日本語にしたら、その方が間違ってるでしょ?
ワープロだって、何年か先にも同じものを使っているとは、限りません。
となれば、ものにするコツを掴んでおく方が、その内容よりも大切なわけです。
新人を雇う側にしてみれば、完璧だけれども新たなものに対応できない人物ではなく、不完全だけれども状況に応じられる人物が、いいわけですよ。
で、変化できそうかどうかっていうのは、本人の意欲次第なわけです。
この関係業界、一見時間にルーズですけど、それは勤務時間さえ守っていればいいわけではないことの裏返し。
他の人が遅刻してるからといって、新人の遅刻までが許されるわけじゃ、ありません。
それに遅刻常習犯は、〆切も破るかもしれないし、遅刻で5人を10分待たせたら、合計50分のロスを発生させるわけですよ。〆切に追われているときの50分は、大きいわけです。
そこで誰かが、「遅刻するな」と教えたとする。
でも、それだけのことでも、実行できるかどうかは、その人次第。
どの会社も、ここで変われるヤツが欲しいわけです。
雇う側は、それを見てます。
仕事への意欲があれば、変われると思うし、変われなければ意欲がないと思う。
時間を守れるかだとか、社会人としての身だしなみや言葉使いだとか、そんなものを就職ガイドブックに書いてある通りに守ったって、ダマされるような人たちじゃあありません。
なにせ、そのガイドブックを書いてる人たちの、仲間なんですから。
ですが、そういう本すら自ら読まない、読んでもものにできないんじゃあ、ダメなんです。
自分自身のものとして消化して、自分のものとして表し、自分なりのオリジナルな部分を付け加えて、自分を売り込む。
黙っていても、嬉々としてそのくらいのことをしちゃうのが、クリエイターの卵であり、就職に成功し、その後も活躍していくもの書きなんです。
さらに言うなら、その手の専門学校生の場合。
教師たちは、それなりの実績と人脈を持ったプロです。
学生にとって、教えてくれるだけの相手じゃありません。
自分を売り込む、一番手近な相手です。
そして教師にとって生徒は、就職させればおしまいの相手ではなく、その後一緒に仕事するかもしれない相手であり、そうなったら卒業後こそが、本番なわけです。
与えられた課題一つ満足に提出できない相手を、仕事相手にしたくありません。
そんなんでは、就職させても、またたくまにリストラされるのが、関の山。
そして当人は、転業しておしまいかもしれませんが、学校と教師が信用を失います。
学校が信用を失えば、その学校に求人が来なくなったり、書類選考で落とされたりしかねません。
……だからこそ学校は、その生徒をなんとか使い物になるように、頑張るんですが。
逆にいえばできる生徒は、将来一緒に仕事をしたい、教師にとって新たな人脈に育つ可能性のある、ツバをつけておきたい相手なわけです。
各社だって、学校に求人票を回すだけじゃなく、教師への人脈を使って、将来性のある人材を捜しています。
教師という売り込みの相手と見なせる頭の切り替え。そしてそのチャンスを生かせるぐらいの積極性があって、ちょうどいいでしょう。