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1 誰でも、簡単に、今すぐプロのもの書きになれる

 プロのもの書きになるのは、簡単です。
 ただ、決心すればいいのです。
 けれども、何になるのかわかっていないと、決心したつもりにしかなりません。
 ただ書くのが好きで、内側から沸き立つものを文章にして、他人に伝えたいだけならば、仕事にする必要はありません。他の仕事で稼いだお金で、インターネットで発表したり、自費出版して配れば、いいのです。
 アマチュアからプロへと踏み出すなら、仕事にする、ということを心に刻む必要があります。けれど、わからないまま決心したつもりになり、四苦八苦している「なれない人」は、少なくありません。
 そこで、普段見落とされがちで、なおかつもの書きを仕事にするために必要なことをいくつか、ここに書き記しておくことにしました。

 プロを目指していると自称しながら、金のために書くのではないと、言う人がいます。しかし、お金のために書くのでなければ、自分のために書いているのです。自分のために書いたものを、他人のリスクと手間で本にし販売してもらい、読者にお金を支払ってもらって読んでもらい、反響を得る。
 それはちょっと、虫がよすぎる考え方です。
 自己満足だけの世界です。
 もの書きを仕事にするということは、読者がお金を支払って読むものを、書くということです。一人一人のためには書けませんが、読者が支払うお金の分の価値のあるものを、提供するのがプロのもの書きの仕事です。

 そして、プロのもの書きにとっては、書くことだけが仕事ではありません。
 また、書くのが好きで、よいものを書くことを目標にするだけでは、プロのもの書きにはなれません。
 喫茶店を例にしましょう。
 コーヒーが好きで、美味しいコーヒーを入れることができ、日々最高のコーヒーを追い求め、それを人々に提供したいと望んでいれば、喫茶店の店主が出来るでしょうか?

 喫茶店を経営するには、資金を貯め、場所を選び、店を開き、仕入れをし、価格を決め、宣伝し、接客し、コーヒーを出し、お代を頂き、様々な支払いをし、収支の計算をして、バランスを取らなければなりません。
 コーヒーを入れることは、仕事の一部にすぎないのです。
 そして、支出よりも多くの収入を得られなければ、生活することも、店を続けることも、遠からずできなくなるでしょう。
 その稼ぎで生活する家族や従業員がいるなら、自らの趣味やこだわりを押し通すあまり、経営を、そして家族や従業員の生活を、破綻させることは、避けねばなりません。
 かといって、儲けるためにズルや嘘で固めた商売をすることは、商倫理にもとります。また自らに背く仕事をしていては、今度は自分が破綻してしまいます。これもまた、避けねばなりません。
 仕事にする、主たる収入源とする、ということは、そういうことです。
 もの書きの仕事も、基本的には同じなのです。
以上 2001春追加

 もの書きを職業にするには、何が必要でしょう?
 構成力や文章力。
 そりゃ当然です。
 計画性や自己管理能力、さらに営業力。
 これがないと、仕事として書きつづけたり、自分の書きモノを売ることができません。
 名刺、コネ、電話、FAX、パソコンとプリンター、インターネットのメールアドレス、そして資本金。
 こうした道具も、できるかぎりそろえておきたいものです。喫茶店の開店資金をためるより、ずっと少なくてすみそうです。
 今や原稿を、原稿用紙で入稿することはまれになりましたし、プロになってもすぐ収入を得られるわけではないからです。
 ですが、何よりもやらなければならないことが、一つあります。
 モノを書くことです。
 ……あきれましたか?
 ところがぎっちょん。プロになれない人の「いっぱい書いている」は、なれる人の「あんまり書いてない」よりも、少なかったりするのです。
 とくに、超大作超長編を延々書きなおしている場合などは、『未完成品はないも同じ』ですから、書いてないと同じなのです。
 極端な話、一つも読ませられるものを書き上げていないのに、いきなりもの書きを職業にしようと決心してしまう人もいます。
 もの書きを職業にしたいなら、まず決心するまえに、それがどんな感じなのか掴むために、作品を完成させてみましょう。
 たとえば原稿用紙三十枚。
 テーマから、句読点の入れ方まで全ての点について、常に読み手のことを考えながら書いたものを、完成させてください。
 最初、三十枚の作品を完成させるのに、半年かかるかもしれません。
 ですが二本目は三ヶ月で完成させましょう。
 三本目は1ヶ月で。
 四本目は1週間。
 五本目から十本目までは、各3日で完成させてください。
 最初は「三十枚も」だった人でも、最後には「たった三十枚」になっているはずです。
 最初から「たった三十枚」だった人でも、規定の枚数で完成させることができるようになっているはずです。
 それぞれの作品は、その期間内に完成させましょう。
 それが〆切というものです。
 期間内に、何度でも読み直し、書き直しましょう。誤字脱字をチェックしましょう。
 しかし締め切りが過ぎたら、手を加えてはいけません。手を加えるなら、完成しなかったということです。
 それは完璧ではありません。そもそも完璧などありえません。完璧でなかろうが、いったん作品が世に出たら、読者にとってそれが全てです。ネットへの発表でいつでも作品を差し替えられるとしても、それはアマチュアの話。読者は同じ作品を何度も読みはしないのです。
 恥ずかしいミスを「なし」にしてしまうより、恥を忘れず気にしつつ、次の作品に取り組みましょう。
 完成品が十本たまったら、それを読み比べてみてください。時間をかけていない最新の三本の出来が、もっともいいはずです。
 こんだけやれば、売り込みをするのに手ごろなストックと、もの書き業に耐えうるもの書きスピード、そして自分に可能な仕事量が、なんとなくても把握できたはずです。
・原稿用紙三十枚 というのは、売り込みするとき読んでもらうのに、ちょうどいい分量です。
・仕事で三十枚という注文のとこに、六十枚や十枚を入稿することは、できませんから、三十枚なら三十枚でまとめられるように、なっておきましょう。
・三日で三十枚ぐらい書けないと、もの書き業は成り立ちません。
 なにせ一月で三十枚書こうが、三日で三十枚書こうが、原稿料は同じですし、もちろん、仕事に時間をかけたからといって、残業代だってありはしないのですから。
 それに、筆が早いということは、常にもの書きにとって強い武器になります。
 筆が早ければ、締め切りまでに見直す時間も稼げるということです。