Truth In Fantasy 事典シリーズ5
DICTIONARY OF DEMONS & DEVIILS
世界の神話・伝説・宗教・フィクションから、悪魔・悪神・邪神・魔王・悪霊などとされる456を主項目、890以上を掲載。
ユダヤ教、キリスト教、グリモア、神曲、失楽園、ファウスト、イスラム教、オリエント、アフリカ、エジプト、ギリシア・ローマ、ケルト、北欧、東欧・スラヴ、フィンランド、シベリア、欧州、インド、インドネシア、中国、朝鮮、日本、東洋、北米、マヤ、アステカ、ヴードゥー、インカ・ペルー、中南米、オセアニア、クトウルフ、フィクション、都市伝説など。
悪魔は、世界中のありとあらゆる創作物に登場している。しかし、世界で最も多く作品に悪魔を出した作家といえば星新一以外にあり得ない。
ショートショートの名手として知られる星新一だが、そのなかの少なからぬパーセンテージを占めるのが、悪魔の登場するショートショートである。星新一は死ぬまでに1,000編以上のショートショートを書き、その中の10%以上の作品には悪魔が登場する。つまり、少なくとも百人の悪魔が登場していることになる。実際には、もっと多く登場しているはずだ。
星新一の悪魔は、キリスト教の伝統的な悪魔を継承し、人間の望みをかなえる代わりに、死後その魂を手に入れる。ただし、そのためには契約を結ばねばならず、また契約書の内容を守らなければならない(もちろん多くの作品の中には、この枠組みを守らない作品も存在する)。
ここから、人間と悪魔との知恵比べが始まる。なんとか契約内容を曲解して人間を苦しめようとする悪魔と、契約の不備を突いて魂を渡すまいとする人間との、舌先三寸の攻防が始まるからだ。
悪魔の登場する小話において、星新一の果たした役割は大きく、他に類を見ないことは確実である。
ローマ神話の熱病の女神。ローマ帝国においては、マラリアの女神として恐れられ崇拝された。
ニューカレドニアの女悪魔。象皮病を引き起こす恐ろしい存在である。その姿は巨大なヤドカリで、脚はココナッツの木ほどもある。
インドネシア、スマトラ島の南に位置するニアス島で信じられている、至高神ロワラニの敵対者。疫病や死の原因であり、悪天候も引き起こす。
地下世界の支配者であり、その領土で見つけられるのは闇と蛇と月である。
パプアニューギニアで信じられている悪魔。その姿は枝編み細工で現される。男性の住むロングハウスは、カイアムヌの姿を模して作られているという。
カイアムヌは悪魔ではあるが、少年の通過儀礼において非常に重要な役割を持っている。カイアムヌは少年を飲み込んで、新たな生命として吐き戻すのだ。
メラネシア、トロブリアンド諸島で信じられている海の妖女。
目に見えない妖女で、海上をカヌーで渡る人を襲い、その舌や内臓を食らう。この妖女が近づいてくると、目には見えないものの死臭がするのでわかる。
シベリアのヤクート族の炎の悪魔。彼は、鋳鉄を作りはじめた者としても知られている。
東北シベリアのチュクチ族において広く信じられている死の悪魔。
彼は、犬を使って人間を狩りたてるのだという。
極東、アムール川流域に住むナーナイ族の悪霊。人々を病気にする。
極東、アムール川流域に住むナーナイ族の虎の霊。人々を病気にする。
ただし、ナーナイ族は虎など見たこともないので、その姿は虎とは似ても似つかないものである。
欧文名が不明でしたが、判明しました。
アフガニスタンの悪魔的側面を多く持つ神。
伝説では、イマトは毎年20人の処女を生贄として殺すことを命じた。
イマトの祭りでは、この生贄が殺されるとともに、20人の女司祭たちが舞い踊る。
インドの日食・月食の悪魔。
神々が不死の霊水アムリタを飲もうとした時、神々に化けて席に連なり、アムリタを飲んだ。だが、太陽神スーリヤと月神ソーマがその正体を見破ったため、ヴィシュヌ神に首と両手を切り落とされた。
だが、既にアムリタを飲んでいたラーフは不死であり、首だけで大空に跳ね上がって喚き散らした。こうして、太陽神・月神とラーフとの因縁の戦いが始まった。
ラーフが太陽や月を呑み込むと、日食・月食が起こる。また、ラーフの尻尾(息子という説もある)は彗星となって凶兆を示すようになった。
仏教における、九曜における目に見えない暗黒の羅ゴ星(ラゴセイと読む。ゴは「目」へんに「候」と書く)のことである。
インドの病気の悪魔。ラーフの尻尾が彗星となったもの。
南インド、タミール地方の悪魔。屍肉喰いだと言われる。その姿は、毛を逆立てた野生動物のようで、死体や負傷した戦士の血を好んで飲む。そして、生者には不幸をもたらすという。
東インド、ビハール州に住むサンタル族の、出産時に死んだ女性がなる悪霊。一人でいると、キュリンに血を吸われるという。
このため、出産時に死んだ女性の霊を封じ込めるために、死体の足の裏に鉄の針を刺し、深く埋めて、出てこられないようにする。
東インド、ビハール州に住むサンタル族の悪霊。出産前に死んだ胎児、もしくは、生まれたもののジャナム・チャティア(部族に加わる儀式)を行わずに死んだ者、もしくは、葬式をしてもらえなかった者が、ブートになる。
村の外の広野・川・井戸・木などに住んでいて、人を驚かせる。ただし、実害は与えない。
東インド、ビハール州に住むサンタル族のさ迷える悪霊。一本足で、馬頭である。
インカの悪魔。その言葉の意味は、「女の乳房をつかむもの」である。
インカ帝国が勃興する前、人々が外地から移住してきた時代に住んでいた。彼らは、人間を見つければ、老若男女を問わず引っつかんでさらっていく。だが、人間が増えるにつれて、悪魔たちは敗北し、この地から逃げ去った。
アンデス高地のインディオが信じている悪霊。これに対して、善霊はエケッコという。
アンチャンチョは、人間の魂(ユックイ・アヤヨ)が眠っていたり、茫然自失状態になっていたり(このとき、魂は体外に飛び出していると考える)するときに、体内に入り込み、心臓の血を吸って病気にし、さらには死をもたらす。
特に、黄昏時はアンチャンチョの活動が活発になるので注意しなければならない。