◆このごろ堂 >  ◆もの書く生活

7 編集者の仕事。

 最近、どんどん編集者は、忙しくなっているようで、電話で捕まえることすら、難しくなっています。出版界にもリストラの嵐がふきまくり、残った編集者の忙しさは、以前より何倍にもなっている、……らしいのです。
 大規模な出版社のリストラは、一般誌の経済面にも載ってますから、ご存じの方も多いと思います。
 ……って、読みましょうね。新聞の経済面と、一番下の本の広告。
 もとい。編集者がつかまんないよー、とぼやいていたら、ダンナがこう言いました。
 忙しい編集者と、ヒマな編集者、どっちがいい?
 答えはもちろん、忙しい編集者。
 いまどきヒマしてる編集者は、仕事が無いのではなく、仕事をしないからなのです。
 もっともこの話は二年前。現在では、仕事をしない編集者のかなりが、リストラされちゃったよーな……。
 以上 2001春追加

  私は編集者ではありませんが、編集者の仕事を教えて欲しいという希望にしたがい、知る範囲で書きました。もし編集者の方で、「まちがっとるぞー!」というご意見をお持ちの編集者がいらっしゃいましたら、「真・編集者のお仕事」のタイトルで、編集者の実態について、投稿をお願いいたします。
 
  また、これ以上詳しく知りたい方は、書店や図書館にて、編集者の仕事についての本が、いろいろ出ていますので、それを参考にしてください。
 
  まず、売れるものを見極め、売れる方向を打ち出します。
  企画を立てたり、あるいは持ち込まれた企画や作品を吟味したりします。
  ライターがどんな作品を持ち込んでも、それを採用するかしないかは、編集者に決定権があります。つまり、いい新人を発掘したり、他社が不採用にした作品で大当りになったりすると、編集者としての株が上がります。
 
  企画を立てる時点で、ライターや、レイアウター、イラストレター等を決め、仕事のあたりをとったりもします。
  あたりの時点では、正式に仕事が発生しているわけでは、ありません。
  ライターにしたら、たとえば仕事を出すからあけといて! とキープしてきて、そのままもうちょっともうちょっとと、半年伸ばすような編集のために、いつまでも他の仕事を断りながら、待ち続けることは、できません。
  信用されていないと、あたりを取ることができなかったり、別の仕事を入れられたり、決まってから断られたりします。
  信用できるあたりを取るには、まず信用されるしかありません。
  こうした信頼関係が、人脈となります。
  こうして作った人脈こそが、編集者最大最強の武器になります。
  逆に信用を失えば、仕事が続かなくなります。
  最初のうちは、ライターのせいにもできるでしょう。
  ですが、そんなことをしていれば、さらに信用を失います。
  仕事を受けてもらえなくなるのはまだましで、受けた後〆切を破られたり、質の悪い作品を納品されたりするのです。
  わざとやるわけではありませんが、ライターも人間ですし、作品はライターの人間性の現れです。編集者に対する不満は、実にストレートに作品に表れてくると、覚悟してください。
  もっとも、発注内容どころか、〆切だとか、原稿の量といったものを、きちんと伝えられないがゆえに、様々なミスが発生し、それだけでもライターがお冠なのに、さらに自分のミスをライターのせいにして完全に怒らせる、というパターンもあります。
  実際、編集者の発注ミスで連載が落ちたのに、紙面でライターが落としたことにしてしまった編集者がいます。
  ……いました。過去形です。
  ライターは、強力な横の情報網を持っています。時には、その編集者ですら知らない内部情報を、掴んでるヤツがいるくらいです。
  誰がそんなことをする編集者と一緒に、仕事をしたいと考えるでしょうか?
 
  さらに、現在は一つのタイトルでマルチメディア展開が普通です。
  原作がある場合、著作権が入り組んでしまっていることも、たびたびです。
  交渉を繰り返し、発行する権利を得なければなりません。
  これを怠ると、著作権侵害になります。
  著作権で食ってますから、これをやらかすと大問題になってしまうのです。
 
  会社の会議で企画を通します。
  企画が通らなかったら、あたりをつけられた人たちに、ごめんなさいをして、信用を失わないようにしなければなりません。
  通ったら、正式に仕事を発注します。
  そして打ち合わせをして、方向性をライターに伝えます。
  が、このときライターに断られることが、ないではありません。そうなると、仕事のできない編集者ということになってしまいます。
  断られないまでも、ライターが別の仕事を受けていて、無理な状況で仕事にかかるはめになる、ということは、よくあります。
  ライターの責任と言ってしまうことは簡単ですが、根回しをして、おぜんだてして、いい作品を期日通りに確保できれば、有能な編集者と呼ばれます。
  無事ライターに発注できたとしても、ただ待っていれば〆切にいい作品が納入されると思っているようでは、編集者として失格です。
  作品は大量生産の規格品ではなく、一つ一つ手作りのオーダーメイド。生産量が想定できるようなものでもなく、その質だって、客観的に点数をつけられるようなものでも、ないからです。
  いい編集者は、ライターをやる気にさせ、ライターがいい作品を作り、〆切に間に合うように、原稿をチェックしたり、アドバイスしたりします。
  ついでに言うなら、ライターは別の編集者の頼みを聞いて、無理を承知で別の仕事を入れてしまうかも、しれません。編集者は、それを止める権利を持っていません。
  さらに社内でバッティング発注となれば、編集者の側のミスでしかありません。
  ですから、発注したライターの動向を探り、信用でもって自分が担当している仕事に精力を傾けさせるのは、大切な仕事です。
  一方シビアにライターのうち何割かは、遅らせるなり落とすなりすると、わかっていなければなりません。それは緊急事態ですら、ないのです。その時、出すものがなくならないように、全体のことを考えて発注するのは、基本です。
  雑誌の場合、持ち込まれている新人の完成原稿を掲載し、新人デビューとなることも、よくあります。
 
  また、校正家、イラストレター、レイアウター、デザイナー、そして印刷所の手配もしなければなりません。(イラスト以外は、編集者が兼ねることもあります)
  イラストレターに対しては、本文ライターに対するのと、同じような手順を踏みますが、本文ライターが遅らせたりして予定が狂いがちなので、その調整や確保はより大変そうです。
  校正家は、誤字脱字や、書き間違いや、おかしな文章をチェックしたり、ルビや送り仮名を統一したりします。編集者は、それをライターの元へ戻して、チェックしてもらいます。
  編集者は、たとえあからさまな書き間違いであろうとも、無断でライターの書いた文章を、書きかえる権利はないからです。
  私が知る、それをやった人は、すでに過去形です。
  デザイナーが、タイトル文字をデザインしたりします。
  レイアウターが誌面構成を決めたりします。
  これらは絶対ではなく、誌面構成が決まってから、それに合わせて本文発注があったり、表紙が本文前に描かれたりと、いろいろです。
 
  そして全部そろい、印刷できるだけの状態にして、印刷所に入稿して、本ができます。
  できた本を関係者に送ったり、宣伝のために関連編集部や会社に送ったりします。
  また、経理に書類をまわして、仕事を頼んだ人たちに、お金が支払われるように、手続きしなければなりません。
  他が完璧でも、これを忘れると、とんでもないことになってしまいます。
 
  他にも、新人の持ち込み原稿を読んだり、将来仕事をするかもしれない会社や人と、顔をあわせて人脈生成にはげんだりと、編集者は大忙しなのです。